【楽譜予約受付開始】ショパンの練習曲による「幻のエチュード」(レオポルド・ゴドフスキー)

本日はレオポルド・ゴドフスキーの命日です。

ピアノの仏陀(The Buddha of the Piano)とまで称されたゴドフスキーはピアニストとしても世界中で大活躍、作曲家としては主にピアノの作品を残しています。その中でも特筆される「ショパンの練習曲によるエチュード」ですが、この曲集について彼は「未来のピアニストに向けて書いている」と語ったという逸話も残っています。演奏するには相当なテクニックを要します。挑戦する者も多く現れましたが作品がもつ本来の持ち味を発揮できず、また「ショパンのエチュードをより難しく編曲しただけ」という誤解がなされ、故に長い間正当な評価を得ることができませんでした。

近年では、カルロ・グランテ、フランチェスコ・リベッタ、マルク=アンドレ・アムラン、ヴァディム・ホロデンコといった名ピアニストが取り上げ、録音も行っており、この曲集を評価する声が一層強くなっています。

西村英士によると、ある時、ゴドフスキーがウィーンの自宅を離れ、夏季休暇でベルギーに滞在している際に第一次世界大戦が勃発してしまいました。ゴドフスキーは自宅に戻ることができなくなり、やむなくイギリス経由でアメリカへ避難。持っていたのは旅行用の荷物だけで、4台のピアノ、膨大な楽譜コレクション、執筆中作品の自筆譜などはすべて自宅に置き去りとなりました。そして、ゴドフスキーの秘書を務めたJohn George Hindererは

第1次世界大戦勃発時、ウィーンのゴドフスキー家に10曲の「ショパンのエチュードによる練習曲」の楽譜が残されていた。

と記しています。大変嘆かわしいことに、現在もそれらの自筆譜の所在地はわかっていません。ゴドフスキーファンにとって肩を落とすような出来事ではありますが、そんな中、今回お届けする新刊は「ショパンのエチュードによる練習曲」から紛失していたと考えられていた幻の2作品です!

行方不明と考えられていたNo.30Aの自筆譜(未完成)

2作品とも未完成ではありますが、ゴドフスキーがどのように作品を展開していくつもりだったのか、その後の流れは十分に妄想を膨らませることも可能です。No.30AはショパンのOp.25-3を行進曲風に編曲(僅か12小節のみ…)、No.50はOp.10-2とOp.25-4とOp.10-11(有名な「木枯らし」)をなんと同時に鳴らすという驚異的なことをやってのけています。ちなみにNo.50Aは「木枯らし」で例えると再現部まで完成しています。補筆完成も夢ではないかもしれません。また、西村英士による充実した解説も必読です。

今回、これらの自筆譜の複写を快く提供してくださったピアニストのマルク=アンドレ・アムランも「今回のこれらの作品の出版はピアノ愛好家にとって大変喜ばしい出来事になるでしょう」と語っています。

行方不明と考えられていたNo.50の自筆譜(未完成)

2020年11月21日から予約受付を開始します。なお、予約限定付録としてNo.44A(未完成)の楽譜が付属します!

ご予約はこちらのページから可能です。

レオポルド・ゴドフスキー:ショパンのエチュードによる練習曲(未完成)
No. 30A & No. 50
解説:西村英士
価格:2000円(税込)
ISMN:979-0-707804-05-6


西村英士
 東京大学、京都大学大学院卒業(医学博士)。東大ピアノの会OB。ピアノを田中智子、高須久子の両氏に師事。安田正昭氏、高須博氏の指導も受ける。国際アマチュアピアノコンクール2016 A部門第1位、同コンクール2015 B部門第1位、第18回大阪国際音楽コンクール ピアノ・アウトスタンディング・アマチュア部門第1位、第36回PTNAピアノコンペティション グランミューズ部門B2カテゴリー第1位、第1回東京ピアノコンクール アマチュア部門第1位。1994年、メシアン「みどり児イエスに注ぐ20のまなざし」全曲演奏。日本初演作品はメシアン「前奏曲(遺作)」「シャロットの妖姫」「視奏講義用小品」、ソラブジ「3つのパステーシュ」(KSS 31-1, 3)、ハーバーマン「ソラブジ様式で『月の光に』」、アムラン「全ての短調による12の練習曲第3番『パガニーニ=リストによる』」、グリエール/ルーウェンサール「バレエ『赤いけしの花』より『ロシア水夫の踊り』」、レイトン「5つの練習曲」(Op. 22-1, 3, 5)など多岐にわたる。ゴドフスキー「ショパンのエチュードによる練習曲集」の楽譜で解説をアムランと共同執筆(ヤマハミュージックメディアより出版)。ゴドフスキー「ジャワ組曲」、E. シュルホフ作品集の楽譜でも校訂、解説執筆を手がけたほか、ゴドフスキーに関する雑誌記事やCD解説を多数執筆している。2017年、初CD「コンポーザー=ピアニストを称えて」をリリースした。
http://www.nanasakov.com/1019.html