シャルル・ケクランフランス音楜黄金期の知られざる巚匠1

文䜐藀銚

 1950幎12月31日、地䞭海を望む南仏のカナデルにお、䞀人の音楜家がその生涯に幕を䞋ろした。同地に建おられたこの人物の墓には、「私の䜜品の粟神ず私の生涯を党うする粟神は、䜕よりも自由の粟神である」[1]ずいう蚀葉の埌に、「シャルル・ケクラン――䜜曲家」ず墓碑銘が刻たれおいる。この「䜜曲家」ずいう肩曞は、圌自身が生前にそう呌ばれるこずを望んだものだった。しかし、83幎にわたる長い生涯の䞭で、その望みが十分に果たされたずは蚀い難い。

Continue Reading →

吉池拓男の名盀・珍盀癟遞(34) 絶滅危惧の眵詈雑蚀芞

クラシック名曲「酷評」事兞䞊・䞋 ニコラス・スロニムスキヌ線 YAMAHA曞籍 
d‘Indy Orchestral Works 2  Symphony No.2 etc.  Rumon Gamba/Iceland so.  CHANDOS CHAN10514

 ミュヌズプレスの现谷代衚から本が送られおきたした。『クラシック名曲「酷評」事兞』。この本に぀いお奜きに曞いおほしいずのこず。どうやら私の事を黒豹組良い倉換だの䞀員だず思っおいるらしいのです。無瀌千䞇雚霰、私には「人ず違う䜕かをやろうずしたアヌティストぞの愛」がありたす。ただその愛情衚珟がちょっずゆがんで䞋手なだけです。この本の酷評矀にはそのような「愛」がほずんど感じられたせん。䜕のためにこれほどの「酷評」を曞いたのか䞍思議なほどです。お前には蚀われたくはないずいうツッコミは謝絶

 もっずも酷いのは、線者のスロニムスキヌも前曞きで特筆しおいたすが、1903幎にニュヌペヌク・サン玙に茉ったドビュッシヌの䜜品に関しおの評で芁玄するず

「この前ドビュッシヌ本人に䌚ったけど、東掋のお化けのようなチョヌキモむ顔した奎で、着おるもんもチョヌダサ。こんな顔した奎の曲だもんでチョヌヒデェ。」

ずいうものでしょう。曞いたのはJames Gibbons Haneker (1857-1921) ずいう人物でWikipediaにも長々ず経歎があるように、あらゆる芞術ゞャンルの評論家ずしお倧倉に高名だった人です。おそらく圓時のアメリカで有数の文化人でした。倧正13幎に日本で刊行された「ショパンの藝術党䜜品解説」の著者ゞェヌムス・ハネカヌもこの人ではないかず思われたす。これほどの人物が公衚したドビュッシヌ評が先ほどのもの。元の文章には顔のディテヌルの悪口がもっず现かく曞かれおいたす。今の時代なら、倧炎䞊䞀発レッド。ネット䞊の匿名の曞き蟌みでもこんなレベルのものは少ないでしょう。時代的にロンブロヌゟの圱響でもあったのでしょうか。た、ファッションのダサい奎の䜜品はアカンずいうのは、なんずなく銖肯できたすが  。マヌラヌに関する1909幎の批評も酷いもんです。芁玄するず「こんなナダダ人蚛りのドむツ語を話しおいるような音楜は意味なしで空っぜ」です。曞いたのはRudolf Louis1870-1914ずいう指揮者兌評論家。たぁ、今の時代ならモサドに抹殺されそうですよね。

 本に収録されおいる倚くの「酷評」は眵詈雑蚀ではありたすがさすがにこれらほど酷いのはあたりありたせん。真面目に音楜解析的に曞いおいるものも少ないですがありたす。しかし、正盎、倧倚数の酷評は、その音楜がどういうものだったのかもよくわからないようなひたすらの酷評。酷評そのものを䞀぀の文孊ゞャンルずしお切磋琢磚しおいるずしか思えないクリ゚むティブな眵詈雑蚀のオンパレヌド。たさに “酷評芞”ずでもいうべき䞖界です。そこに「他人の䞍幞は蜜の味」ずいう人類共通のニヌズがマッチし、酷評芞合戊ずいうべき醜態が繰り広げられおいたす。もう、サむコパス映画のように悪意の゚ンタヌテむンメントずしお楜しむしかありたせん。た、残念ながら勧善懲悪はありたせんが。

Vincent d’Indy: Orchestral Works, Volume 2

 この本の眵詈雑蚀がどの皋床正鵠を射おいるか、詊せる曲が1぀ありたす。䞊巻のp.1489にダンディの亀響曲第番の酷評がずらっず䞊んでいたす。ダンディの亀響曲第2番ず聞いお音楜がすぐ思い浮かぶ人はおそらく日本では特殊な数人しかいないでしょうから、かなりコアなクラシックファンでもCもしくは配信で聎けば、圓時の評論家の気持ちで「初挔」を䜓隓するこずができたす。どうですか そこに曞いおある酷評の数々、玍埗できたしたか 確かに圓時よりは䞍協和音だらけの䞖界に慣れた私たちの耳ですが、虚心坊懐、ダンディの亀響曲第2番をどうお感じになったか、お聞きしたいものです。

 さお、この本を読み進めおいくず、少し残念な情報の欠萜に気付きたす。それは酷評が曞かれた経枈的な背景です。評論家もしくは文化郚系蚘者ずいえどもお仕事です。お仕事で眵詈雑蚀を曞く堎合はかなりの芚悟が芁りたす。狭い業界で眵詈雑蚀をたくしたおおいおは、次のお仕事が来なくなっお、あっずいう間に倱業しおしたいたす。雑誌や新聞は広告や情報が頂けなくなるでしょう。挔奏䌚にご招埅ではなく自費で行き続けるのも結構な負担になりたす。眵詈雑蚀を公蚀するからには、必ず経枈的保蚌があるはずなのです。䟋えば䞖を二分するような芞術運動のどちらかの流掟に寄皿先が属しおいお、どんなに他掟の眵詈雑蚀を曞いおも自分の属する流掟からはお仕事が玄束されおいるハンスリックはこれかなずか、音楜家本人のいる地域瀟䌚から物凄く遠いので䜕蚀っおもたぶん報埩は来ないアメリカの新聞瀟はこれかずか、音楜ずは無瞁の本業があっお原皿䟝頌が来なくなっおもなんずでもなるずか、某新聞や某週刊誌のように蚘事の正しさなんおどうでもよくっお滅茶滅茶なこずをりケ狙いで曞いお売るのが営業方針ずか。いずれにしろそのあたりの情報が党くないのがなんずも残念です。人間の行動には倚くの堎合経枈的事情がありたす。その経枈的事情にたで螏み蟌んだ考察が欲しかったですね。䟋えばリヒャルト・シュトラりスの「ドン・ファン」をボロク゜に酷評した評論家が11幎埌に䞀転しお絶賛しおいる䟋が取り䞊げられおいたす。これは評論家の耳が新しい音楜に慣れたからだず線者は語っおいたすが、本圓にそんな単玔な理由でしょうか 前蚀撀回もほどがある堎合、なんかりラがありそうに思えたす。た、評論家なんおもずもず節操がないもんよ、ず切り捚おるこずもありでしょうがね。この本はあくたでも「事兞」なので列蚘衚蚘に留たらせおいるず思いたす。が、どなたかさらに䞀歩螏み蟌んで、音楜評論業界の歎史的な業を抉り出しおいただけないでしょうか。

 今の時代、ここたでの酷評はなくなりたした。䞋手に酷評なんぞしたら蚎蚟に巻き蟌たれる䞖になったのかもしれたせん。たしおや人の生たれ持った容姿や人皮などをネタにしお嘲るなどもっおのほか。ネットの炎䞊は䞀歩間違うず瀟䌚的生呜時には本圓の生呜を倱うこずになりかねたせん。なによりも業界がたすたす狭くなっお、評論家やラむタヌの経枈的背景が濃密になり、音楜雑誌ぞの寄皿やCDや挔奏䌚の解説曞きのお仕事をいただくためには、滅倚なこずでは酷評なんおできないずいうシガラミ地獄が䞀局顕著になっおいるのかもしれたせん。少し前の話ですが、某評論家氏は時折匿名で音楜業界や挔奏ぞの匷烈な批刀蚘事を非音楜系雑誌に曞いおいたした。圌にはそういう道しかなかったのだず思いたす。た、その蚘事は非垞に面癜かったですがね。

 絶賛も酷評も心の汚れた私はみなりラがあるず思っおいたすので䞀抂に信じるこずはできたせん。しかし、絶賛や酷評そのものを䞀぀の゚ンタヌテむンメントずしお受け止めれば、それはそれで成立する  あ、だからこの本で取り䞊げられるような「酷評芞」が華開いたのかな。しかし、本曞で取り䞊げおいるような酷評はもう絶滅危惧皮です。最も䜿われおいる非難語は「䞍協和音」ず思われたすが、すでに「䞍協和音」の䜿甚は䜕の非難の察象でもなくなっおいたす。「旋埋がない」も倚甚されおいたすが、これだっお今どきは珍しくもない。「䞍道埳」だっお様々な芞術ゞャンルで人類亀尟くらい描かれるのは圓たり前。本曞で「なじみなきものぞの拒吊反応」線者の前曞きより匕甚ずしお眵詈雑蚀の原動力ずなった芁玠が珟代では批刀の察象になりたせん。ポリコレずかコンプラむアンスずかSDGsずかの埡旗が高らかに振られおいる珟代においお、新たなるクリ゚むティブな眵詈雑蚀ちょっず口の悪い建蚭的進蚀の道はどこにあるのか、人ずしおあたり矎しくはないですが、探し求めるのも珟代文化ラむタヌの課題なのかもしれたせん。

【玹介者略歎】
吉池拓男
元クラシックピアノ系ヲタク。聎きたいものがあたり発売されなくなった事ず酒におがれおCD代がなくなった事で、十数幎前に積極的マニアを終了。珟圚、終掻呑み代皌ぎで昔買い蟌んだCDをどんどん攟出䞭。

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(13) ベケット䞉郚䜜ずオペラ「Neither」-2

文高橋智子

2. オペラ「Neither」

 1976幎7月に「ベケット䞉郚䜜」による䞀通りの詊䜜を終えたフェルドマンは1976幎9月18日に行われた「Orchestra」初挔のためグラスゎヌに滞圚しおいた。[1]グラスゎヌでの初挔の埌フェルドマンはベルリンに赎き、9月20日の昌頃シラヌ劇堎で「あしあず Footfalls」ず「あのずき That Time」のリハヌサルをしおいたベケットず初めお䌚う。[2]劇堎の䞭は照明が暗転しお真っ暗だった。暗闇の䞭でベケットはフェルドマンの芪指に握手した。[3]これが圌らの初察面の瞬間だ。フェルドマンはベケットを劇堎近くのレストランにランチに誘い、ここで圌は自身のオペラに぀いお話した。[4]「自分の考えだけでなく圌蚳泚ベケットの考えにひれ䌏したかった I wanted slavishly to adhere to his feelings as well as mine.」[5]ず語り、ベケットを信奉しおいたフェルドマンはベルリンで亀わした䌚話を次のように回想しおいる。

Continue Reading →

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(13) ベケット䞉郚䜜ずオペラ「Neither」-1

文高橋智子

 前回は1975幎の楜曲「Piano and Orchestra」を䞭心に、フェルドマンのオヌケストレヌションず協奏曲に぀いお考察した。今回は圌の1970幎代の楜曲のハむラむトずもいえるオペラ「Neither」ず、このオペラのための習䜜ずしお䜍眮付けられおいるベケット䞉郚䜜をずりあげる。

Continue Reading →

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(12) フェルドマンずオヌケストラ-2

文高橋智子

2 反協奏曲 Piano and Orchestra

 その曲を構成する音たたは音笊に楜噚の遞択、音域、ダむナミクス、タむミングずいったあらゆる芁玠の必然性を求めたフェルドマンの態床は、1970幎代に集䞭的に曞かれたオヌケストラ曲にどのように反映されおいるのだろうか。このセクションでは独奏楜噚ずオヌケストラによる協奏曲線成の楜曲を䞭心に、フェルドマンのオヌケストラ曲ずオヌケストレヌションの特城を考察する。

Continue Reading →

吉池拓男の名盀・珍盀癟遞(33) 寞劇「迷走・CD䌁画䌚議」黒人ピアニストたちの肖像

George Walker in Recital George Walker(p) Albany TROY 117  (1994幎)
JOHANN STRAUSS by LEOPOLD GODOWKY  Antony Rollé(p) FINNADAR RECORDS 90298-1 1985幎、LP
A LONG WAY FROM NORMAL Awadagin Pratt(p)  EMI CLASSICS  CDC 5 55025 2 0 1994幎

○匱小クラシックCDレヌベル 魔煮悪classics 本瀟䌚議宀

郚長50代男性  幎々䞋がる売り䞊げに悩み続ける䞭間管理職
瀟員A25歳男性 クラシックが䜕ずなく奜きなニヌトっぜい兄ちゃん
瀟員B36歳女性 入瀟10幎を超えた䞭堅瀟員

郚長それでは䌁画䌚議を始める。皆もわかっおいるず思うが、クラシック音楜産業は衰退の䞀途にある。その倧きな芁因はやはりスタヌの䞍圚だ。昭和の頃は道端のオッサンでもクラシックの指揮者はず聞かれれば「カラダン」くらいの名前は出おきた。新入瀟員のA君、今のベルリンフィルの垞任は誰かな

瀟員Aえ、、、、、えっず、えっず  ぺ  プ  ペトルヌシュカ、じゃないし  

郚長たぁ、そんなもんだ。私も先日、クラシック音楜酒堎に行ったが即答できた奎はいなかった筆者実話。それほど今はスタヌ䞍圚なのだ。しかぁし、そんなこずは蚀っおいられない。䜕ずしおでもリスナヌの財垃のひもを緩めるスタヌを探し出すのだ。

瀟員Bよろしいでしょうか、郚長。

郚長おお、Bくん、逞材に心圓たりがあるかい

瀟員Bクラシックずいえど、叀よりスタヌは矎男矎女もしくは倭折の倩才ず盞堎は決たっおいたす。昔よりは挔奏の腕はハむレベルになったず思いたすが、正盎、みな䌌たり寄ったり。さっそく音倧に行っお虚匱な矎男矎女プレむダヌを探しおきたす。

郚長いやいや、そのコンセプトはちょっずルむ颚※かなぁ。確かにみおくれは倧事だが、もう少し新しいコンセプトはないかね。

瀟員Bでは、困難ず闘う感動のストヌリヌ性ずいう点で、独裁的な囜家から政治的迫害を受けおいる芞術闘士はいかがでしょうか

郚長タコ・ロストロ路線だね。しかし、今、それほどに顕著な政治的迫害はピヌヌッ囜でもない限りいないんじゃないか ピヌヌッは挔奏家ぞのコンタクトも倧倉だろう。それに芞術的自由だずか政治思想路線の闘争系はもう流行らないのではないかね。

瀟員Bでは、感動のストヌリヌずいう点ではピヌヌッでしょう。既にピヌヌッやピヌヌッずいう先䟋がありたすから、垂堎は安定しおいたす。

郚長こらこら、䌁画䌚議での発蚀は気を付けたたえ。最近オリンピックの挔出で内郚のブレスト的なやり取りが挏れお倧倉な事態になったこずを忘れたか。間違っおもピヌヌッずかピヌヌッずかピヌヌッずか蚀っおはいかんぞ。

瀟員Bではピヌヌッずの闘いはどうですかそれを前面に出したセヌルスは過去に䟋はありたせんから、斬新なのでは

郚長ぶぁっかもんうちを朰す気か。ピヌヌッはなし、なし、なし。

瀟員Aあのぉ  最近のネットの流行りで「ポリコレ」っおいうのがあるみたいなんですけどぉ  

瀟員Bポリコレ、いいわね、それ。郚長、最近の流行りでは人皮問題やゞェンダヌ問題などが䞖界的にもホットなムヌノメントね。

郚長確かに。批刀する奎がいたらポリコレ攻撃をかたせばよいしな。

瀟員Bなんか党䜓的にポリコレの捉え方が間違っおいるようには思いたすが  たぁ、音楜的䟡倀以䞊の有無を蚀わせない䟡倀が付加されるこずにはなりたすね。

瀟員Aそれっおピヌヌッず同じですね

郚長だから、ピヌヌッずか口にするなっお。お願いしたすよ、ほんずにもう。

瀟員Bたずはより䞀般的な所から人皮問題を取り扱うのはどうでしょう。

郚長ゞェンダヌ問題はダメなのかね

瀟員Bそれも重芁ですが、音楜業界はもずもずピヌヌッですし、今曎殊曎ピヌヌッを䞻匵しおも割ずスルヌされおしたうのではないかず。

郚長確かに。では人皮問題で行くか。

瀟員A少し前、ネットニュヌスでよく芋たのは「Black Lives Matter」ですね。やっぱ黒人の人たちぞの問題が䞖界のトレンドかな。そういえば、黒人のピアニストっおクラシックではほずんど芋ないですね。

瀟員B私もほずんど知らない。郚長は

郚長ゞャズなら山ほど知っおいるが、確かにクラシックはあたり聞かないなぁ。その蟺を調べおみる必芁があるな。きっず知られざる玠晎らしい挔奏家が沢山いるに違いない。よし、今日は解散だ。次回のmtgたでに二人は色々調べおきおくれ。

瀟員A・B了解したした。

a few days later

郚長では䌁画䌚議を始める。クラシックの黒人ピアニストに぀いお調べおきたかね

George Walker in Recital George Walker()

瀟員Aはい、郚長。僕はGeorge Walkerっおいう人を芋぀けたした。めちゃクヌルなキャリアの人です。圌のホヌムペヌゞに経歎が曞いおあっお、そこらじゅうに「黒人で初めお first black」ずいう蚀葉があふれおいたす。音楜孊校を出た最初の黒人ピアニストずか、倧手の亀響楜団や挔奏䌚堎に出挔した最初の黒人ずか、ピュヌリッツァヌ賞を取った最初の黒人ずか、たさに黒人クラシック音楜家のパむオニアです。

郚長CDは出おいるのかね

瀟員Aamazonで怜玢したんですけど56皮類はありたした。ここにあるのは「George Walker in recital」です。1曲目のスカルラッティの゜ナタL.S.39、びっくりしたすよ。

瀟員Bこの曲っお、こんなスむング感のあるリズムなの

クリックで拡倧

瀟員Aいやいや、もずもずはかっちりずした2分の2拍子譜䟋ですよ。Walkerの挔奏はたるで8分の6拍子譜䟋。さすがのリズム感っおいう感じでしょ

郚長ほかにもショパンや、ベヌトヌノェンを匟いおるようだが、スむングするのかね

瀟員Aこの曲だけです。

郚長・瀟員Bえっ

瀟員Aこんな䞍思議なリズムアプロヌチはこの曲だけです。あずは極めおたずもです。同じスカルラッティももう5曲匟いおたすが、極めおたずもです。

瀟員Bなんで これだけ  でも、面癜いわ。これ。

郚長確かにこの1曲目は衝撃的に面癜いが、むンパクトが続かないなぁ。B君の方は誰か芋぀けたかい

瀟員B幻のピアニスト芋぀けたした。

郚長なに、幻。そりゃよい宣䌝文句だ。

瀟員名前はAntony Rollé。匟いおいるのはゎドフスキのシュトラりス線曲もの党4曲です。

JOHANN STRAUSS by LEOPOLD GODOWKY  Antony Rollé(p)

郚長シュトラりスゎドフスキのあの超難曲を、しかも党曲だずぉ。良く芋぀けた、偉い

瀟員Bしかもこの録音、1985幎にLPで出たきりでCD化されおいたせん。

郚長たすたすレア感upだねぇ。で、幻ずいうのは

瀟員Bこの人、その埌消息䞍明なんです。ネットでいくら怜玢しおも出おきたせん。ピアノはアヌル・ワむルドに垫事したらしいです。そしおデビュヌアルバムは1980幎のメットネル䜜品集。2枚目がこのゎドフスキです。このアルバムを最埌に消息䞍明です。

郚長消息䞍明か  亀枉が倧倉そうだが、面癜い。で、出来は

瀟員Bいたっお普通です。䞋手ではないですが、特に際立ったものはありたせん。

郚長あの難曲を普通に匟くだけでも倧したもんだが、「いたっお普通」かぁ  

瀟員Bで、そんなこずもあろうかず、もう䞀人芋぀けおきたした。どうですこのゞャケット。

A LONG WAY FROM NORMAL Awadagin Pratt(p)

瀟員AWOW 、Cooooool

郚長むンパクト特倧だねぇ。しかもアルバムタむトルが「A Long Way from Normal」、正垞からの遠い道のり。むむね、むむね、むむね。そそられるねぇ。

瀟員B郚長、違いたす。正垞から遠いのではありたせん。

郚長はぁ このゞャケ写なんだから、どう芋おもそうだろう。

瀟員BこのAwadagin Prattずいうピアニストは、むリノむ州のNormalずいう町の出身なんです。だからその故郷を遠く離れお随分ず来たもんだずいう意味です。

郚長なんだ、それ。半分サギじゃないか。で、挔奏はこの颚䜓だけのこずはあるだろうね

瀟員B極めおたずもです。正統掟の極みです。コンクヌルで優勝もしおいたすが、そりゃ優勝するだろうなずいう芋事なNormal仕䞊がりです。技巧的にも安定しおいたす。

郚長リストもバッハもフランクもブラヌムスも、みな真っ圓か

瀟員Bひたすらに真っ圓です。これはこれで玠晎らしいこずです。

郚長みおくれで過床な期埅をしおはいけないずいうこずか  他にはいないかね

瀟員Aすみたせん、今回は芋぀かりたせんでした。

瀟員Bクラシック音楜が盛んな欧米ではもずもず黒人人口は比率的にそれほど倚くはありたせん。おそらくは歎史的・経枈的問題も絡んでクラシックミュヌゞシャンは絶察数が意倖ず少ないのだず思いたす。

郚長そうか。うヌヌヌん、黒人ピアニストならではのリズム感ずかノリずかを期埅したのだが、Walkerの1曲を陀いお真っ圓路線か  

瀟員Aあのぉ  これっお結局、人皮ずかに関係なく、真っ圓に勉匷した人は真っ圓な結果を出すこずができるずいうこずではないですか

瀟員Bたずは䞭心倀的な郚分がきちんずできるずいうこずね。倉な思い蟌みは犁物ね。

郚長なんか少しいい話でたずたったねぇ。けど、うちの䌁画ずしおはどうしたらよいのかたすたすわからなくなった。困った。

瀟員Bうちもたずは真っ圓な路線を倧事にしたしょう、郚長。

瀟員Aですよ、郚長。

郚長いや、真っ圓路線は埀幎の巚匠たちが極䞊の結果を残しおしたっおいるから、もう今曎なんだよなぁ。やはり生き残りを賭けお過去にない斬新な䌁画を考えねばならないず思うんだよ。

瀟員Aじゃあ、やっぱピヌヌッずかピヌヌッで行きたしょうよ。

郚長ぶぁかもんっだから、そういうこずは蚀っおはいかんっお。

補蚘 
※ルむ颚  「叀い」の実圚した業界甚語。ふるい ⇒ るいふ ⇒ るいふヌ。ルむ颚は筆者による圓お字。

【玹介者略歎】
吉池拓男
元クラシックピアノ系ヲタク。聎きたいものがあたり発売されなくなった事ず酒におがれおCD代がなくなった事で、十数幎前に積極的マニアを終了。珟圚、終掻呑み代皌ぎで昔買い蟌んだCDをどんどん攟出䞭。

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(12) フェルドマンずオヌケストラ-1

文高橋智子

1 1970幎代の楜曲の線成ずオヌケストレヌション

 前回は、バッファロヌ倧孊の教授就任をきっかけにバッファロヌぞ転居したフェルドマンの環境が倉わり、それに䌎ういく぀かの芁因から曲の長さが次第に長くなっおいったこずず、楜曲の線成も倧きくなっおきた様子を抂芳した。1950幎代、60幎代のフェルドマンの楜曲は長くずも12分前埌の宀内楜や独奏曲が䞻流だったが、1970幎代は管匊楜オヌケストラ曲が増える。オヌケストラやオヌケストレヌションに察するフェルドマンの考えを参照しながら、1970幎代の管匊楜曲のなかでも独奏楜噚ず組み合わさった協奏曲線成の楜曲に焊点を圓おお考察する。

Continue Reading →

吉池拓男の名盀・珍盀癟遞(32) 䞀人芝居「さびれた音楜工務店の情景」 むタリアのぞんなや぀2

COMPOSIZIONI OSSESSIVE  Marco Falossi(p)  VELUT LUNA  CVLD 184 2009幎
romantic pieces for piano Igor Roma(p)  Challenge classics CC72154  2006幎
ENCORES  Igor Roma(p)  STEMRA IR2 2009幎

○どこの町にもありそうな小さな工務店
 ただし、机の䞊には蚭蚈図ではなく楜譜や五線玙が散乱しおいる
 どうやら“音楜工事”を請け負う特殊な工務店のようだ
 ヲタクっぜい営業担圓のおっさん吉池䞻任がお客さんの電話に察応しおいる

♬電話着信音

『はいはい、こちらはサクサク改䜜、貎方のミュヌゞックラむフを斬新リノベヌションの䌊倪利音楜工務店でございたす。はぁ いやいや、カ・む・ザ・ンではなく、カ・む・サ・ク、改䜜を承っおおりたす。私、改䜜掚進郚営業の吉池ず申したす。移調、短瞮、巊手甚、連匟化などなどお客様のご垌望の工事を瞊暪無尜に承っおおりたす。本日はどういった改䜜工事のご芁望でございたしょうか はい  はい  えっ、それは難題ですなぁ。ショパンず映画音楜が倧奜きで倚忙なリスナヌに超効率的に楜しめる音楜を提䟛したいず。ほぉほぉ、なるほど  うん、お任せください 匊瀟にはそんじょそこらの工事業者を超えた発想ず力量を有する遞りすぐりの職人が圚籍しおおりたす。このお仕事ですず  適任がいたすよ。名前はMarco Falossiず蚀いたす。え、聞いたこずない。いやいや、圌は楜譜絵垫ずしお知る人ぞ知る存圚、倧䜜「モヌツァルト」をはじめ、最近では「ピアノ」ずか「フォヌク」などを仕䞊げおおりたすよ。その楜譜絵で培った匠の技でご芁望にお応えいたしたしょう。で、映画音楜はどのような曲をご垌望で はい  はい  シンドラヌのリスト、チャップリンのラむムラむト、そういったあたりですね。で、ショパンは あ、おたかせですね。わかりたした。早速、Falossiに取り掛からせたすので、どうぞご安心ください。では完成したしたらご連絡いたしたす。䌊倪利音楜工務店、吉池が承りたした。』

  a few days later

COMPOSIZIONI OSSESSIVE  Marco Falossi(p) 

『お客様、お埅たせいたしたた。匊瀟ならではの合䜓工事で最高の効率化を実珟いたしたした。タむトルは「ショパンの倉装」。「倉奏」ではないですよ、「倉装」です。ショパンは緎習曲op.10-6をセレクトさせおいただきたした。どうです。ご垌望の映画音楜たちずショパンを同時に挔奏しおしたうずいう最高床の効率化合䜓工法をご提瀺させおいただきたした。劂䜕ですか  えっ  はぁ  ただ同時に匟いおるだけで、いたいち調和しおいない どこが楜譜絵で培った実力なのかわからない しかも匟くのが難しすぎる いやいやいやいや、お奜きな音楜をいっぺんにお楜しみいただける匊瀟自慢の仕䞊がりですよ。たさに職人Falossiの真骚頂。ん、そうだ、職人Falossiの別の䜜品「匷迫的な䜜品」をサヌビスでお付けしたしょう。いやいやそうおっしゃらず、お受け取り䞋さい。ええいっ、「情緒䞍安定な䜜品」「雄匁な䜜品」「修蟞的な䜜品」「䞍確実な䜜品」「退行した䜜品」「無意味な䜜品」などもドドンずたずめお曲お付けしたしょう。ニクいね旊那、もっおけドロボヌ。テレフォンショッピングでも滅倚にお目にかかれない倧盀振る舞いですよ。どうですか。え、そんな面倒くさいタむトルのゲンダむオンガクはなんがあっおも疲れるだけ いやいやお客さた、お客さた、そうおっしゃらずに、ぜひぜひご笑玍をっ、毎床のご莔屓をっ  』

○どこの町にもありそうな小さな工務店
 前回の受泚からしばらくたったある日の午埌
 ニッチ過ぎる業皮のせいか、ヒマで眠そうな営業担圓。
 そのずき、久々の電話が鳎り響く。

♬電話着信音

『ふぁいふぁい、こちらはサクサク改䜜、貎方のミュヌゞックラむフを斬新リノベヌションの䌊倪利音楜工務店でございたす。ほぁ あのですね、カ・む・ザ・ンではなく、カ・む・サ・ク、改䜜ですっおば。私、改䜜掚進郚営業の吉池ず申したす。移調、短瞮、巊手甚、連匟化などなどお客様のご垌望の工事を瞊暪無尜に承っおおりたす。本日はどういった改䜜工事のご芁望でございたしょうか はい  はい  えっ、それは超難題でございたすな。かの魔神Hお埗意のモシュコフスキ䜜品に魔神がビビるくらいの難化工事を斜しおほしいず。うううむ、難化による魔神超えですか  これは、お高く぀きたすよ。え、音の量には糞目を぀けないず。これは頌もしいお蚀葉。わかりたした。匊瀟にはうっお぀けの職人がおりたす。名前はIgor Romaず申したす。え、聞いたこずがない。た、そうでしょうね。これたで50幎以䞊の人生で䜜品集は2回しか発衚しおおりたせん。ずにかく指さばきずキレ味ならば圓代随䞀の匠でございたす。モシュコフスキはどれを 火花op.36 no.6ず緎習曲ヘ長調op.72 no.6ですね。お客さん、攻めたすねぇ。魔神Hの十八番䞭の十八番じゃないですか。ようございたしょう。早速仕事に取り掛からせおいただきたすので、どうぞご安心ください。では完成したしたらご連絡いたしたす。䌊倪利音楜工務店、吉池が承りたした。』

 a few days later

ENCORES 
Igor Roma(p) 

『お客様、お埅たせいたしたた。匊瀟枟身の難化工事で前人未到の䞖界を構築いたしたした。たずは火花 op.36 no.6。最初の32小節ずそれの繰り返しは玠晎らしく快速なだけで特に斜工はしおおりたせん。そこ過ぎたあたりから巊右にナむスなアタックを入れ始め、36秒目くらいからは右手の原曲にある8分音笊を消し、職人Romaお埗意の急速な16分音笊もしくはそれ以䞊の暎走乱発぀むじ颚状態ずいたしたした。これぞ匊瀟が自信もっおお届けする難化工事の極み。お客様のご芁望通り右手の音数はトンデモなく増幅され、魔神H越えを実珟しおおりたす。で、ラストはゞャズコヌドを䜿ったなかなかオトナの仕䞊がりにさせおいただきたした。続きたしおは緎習曲ヘ長調 op.72 no.6。どうです、この音増量。お客様の創造をはるかに超えた䞖界を実珟させおいただきたした。ほが音数倍増の特皮難化工事ず自負しおおりたす。もちろん火花のラストで装食いたしたしたゞャズテむストは今回は䞭ほどで披露させおいただいおいたす。  え  はぁ  いくらなんでもやりすぎだず。これではずおも垞人では匟くこずができないず。いやぁ。そうは申されたしおも、垌代の指さばき職人Romaの技ですのでこれくらいはご勘匁いただかないず。玍品に際しおは火花のラむブ動画ず仕様曞、緎習曲のラむブ動画ず仕様曞はお付けしたしたので再床ご確認ください。

romantic pieces for piano
Igor Roma(p)

そうだ、サヌビスでRomaの若いころの䜜品集「romantic pieces for piano」から難化工事を斜したアルカンのサルタレッロop.23をお付けしたすよ。もちろんアルカンですから原曲は急速な䞊に同音連打が倚くおかなり難しい8分の6拍子の舞曲です。冒頭から20秒間はアルカンの原曲のたたにしおありたすが、それが繰り返される所から音を分厚く加え、なんじゃこれの䞖界を開陳させおいただいおいたす。しかも急速なテンポはひるたず保ち、アルカンの狂気を孕んだむタリア舞曲をキレ良く快走。曲の進行はほが原曲通りで、ラストはノォロドスのトルコ行進曲ずほが同じ和音連打瀑垃。芋事な斜工でしょうどうです  え  原曲が無名すぎお「これが難化です」ず蚀われおもピンず来ない 誰も知らない曲ですごいでしょず蚀われおも困るっお いやいやそうおっしゃらずに、ひず぀よろしくお願いしたすよ。そうだ、Romaの新䜜、ラテンナンバヌ工法を倧胆に䜿甚した超拡倧版バッハシロティ前奏曲ロ短調もお付けしたしょう。Romaが䞀人二圹で斜工したくったダブル難化工事の名䜜ですよ。さあ、ぜひお受け取りを。お客さんお客さん もしもヌし、もしもヌヌし。ではでは、むタリアン・ポルカの連匟難化工事もオマケしちゃおうかな。もしもヌし、もしもヌヌヌし、お客さんっ  』 

○吹きすさぶ寒颚、飛び散る五線玙、そこはかずなく挂う倒産の予感

【玹介者略歎】
吉池拓男
元クラシックピアノ系ヲタク。聎きたいものがあたり発売されなくなった事ず酒におがれおCD代がなくなった事で、十数幎前に積極的マニアを終了。珟圚、終掻呑み代皌ぎで昔買い蟌んだCDをどんどん攟出䞭。

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(11) 1970幎代前半の出来事ず楜曲-3

文高橋智子

3 フェルドマンの新たな境地 The Viola in My Life 1-4

 1970幎から1971幎にかけお䜜曲された4曲からなる「The Viola in My Life」は1970幎代の楜曲の䞭だけでなく、フェルドマンの楜曲党䜓を芋枡しおみおも特殊な䜍眮にある䜜品だ。この圓時のフェルドマンの楜曲には珍しく、「The Viola in My Life」では明確に認識できる旋埋が登堎する。フェルドマンはこれたでに1947幎に䜜曲した独唱曲「Only」や、1950幎代、60幎代に手がけたいく぀かの映画や映像の音楜でも旋埋のある曲を曞いおきたが、旋埋ずもパタヌンずもいえない抂しお抜象的な䜜颚が圌の本分ずみなされおきた。だが、1970幎に入るずフェルドマンは五線譜の蚘譜に戻り、「The Viola in My Life」1-4を曞いお叙情的な旋埋を惜しげもなく披露する。前のセクションで解説した1970幎代の楜曲のおおよその傟向を思い出しながら「The Viola in My Life」1-4がフェルドマンの䜜品倉遷の䞭でどのような䜍眮にあるのかを芋おいこう。

Continue Reading →

あれでもなくこれでもなく〜モヌトン・フェルドマンの音楜を知る(11) 1970幎代前半の出来事ず楜曲-2

文高橋智子

2 1970幎代の楜曲の䞻な特城

 同じニュヌペヌク州内ずはいえ、人口密床の高い倧郜垂ニュヌペヌク垂から、ナむアガラの滝に接するバッファロヌ垂ぞの匕越しはフェルドマンの人生に劇的な倉化をもたらしたず想像できる。この環境の倉化は圌の音楜にも倧きく圱響し、ずりわけ曲の長さや線成に反映されおいる。1972幎にバッファロヌに拠点を移したフェルドマンの音楜の新たな境地はどのように受け止められたのだろうか。ニュヌペヌク時代のフェルドマンのか぀おの教え子で䜜曲家のトム・ゞョン゜ンは、1973幎2月14日にカヌネギヌ・ホヌルで行われたバッファロヌ倧孊のThe Center of the Creative and Performing Artsの挔奏䌚評を『Village Voice』に寄皿しおいる。この挔奏䌚ではフェルドマンの「Voices and Instruments 2」が挔奏された。

Continue Reading →