デ・ファリャ/赤松林太郎:火祭りの踊り(ピアノ独奏版)

¥1,650

税込|菊倍|12頁
序文:赤松林太郎(日本語・英語)
楽譜サンプル

説明

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赤松林太郎による序文
 《恋は魔術師》は言わずと知れたマヌエル・デ・ファリャ[Manuel de Falla, 1876-1946]の代表作で、ジプシー娘の恋をめぐる艶めかしい音楽による組曲となっています。《火祭りの踊り》はその中の一曲で、アンダルシアの情緒が特徴的。このリチュアルダンスは、亡霊となって現れるかつての恋人に対する悪魔祓いで、4分の2拍子で刻まれる激しいリズムと燃え盛っていく炎のトリルが呪術的に響き渡ります。
 ファリャは第一次世界大戦が始まるまでパリに滞在して、多くの芸術家と親交を結びました。1916年にセルゲイ・ディアギレフ[Sergei Diaghilev, 1872-1929]の主宰するバレエ・リュスから《三角帽子》の音楽を依頼され、振付にレオニード・マシーン[Léonide Massine, 1896-1979]、舞台・衣裳デザインにパブロ・ピカソ[Pablo Picasso, 1881-1973]を起用したのは、まさに時代を先導するパリならではのエピソードで、ファリャも新しい時代を彩る重要な一人であったことを物語っています。パリのピカソ美術館を訪れると、ピカソが手掛けた舞台デザインの数々を通して、天才たちの活気がみなぎる往時を階層することができます。  パリを経験することで、多くの芸術家は自らの民族主義を奮い立たせるだけでなく、印象主義的な要素を吸収して、独自のバランスを持ってそれぞれの新しい語法を身につけるようになりました。ファリャの場合、1915年に《ヒタネリア》として初演した後、バレエ音楽として《恋の魔術師》が完成を向開けるまでに10年の歳月を要しましたが、その熟成があったからこその名曲だと言えるでしょう。
 今日ではピアノ独奏編も親しまれており、アリシア・デ・ラローチャ[Alicia de Larrocha, 1923-2009]の編曲はよく知られています。またアルトゥール・ルービンシュタイン[Arthur Rubinstein, 1887-1982]の全身全霊をかけた情熱的な演奏も非常に有名です。このような先人の影響を受けながら私も即興的なアレンジメントを加えた演奏をしていますが、ファリャの魅惑的な管弦楽法をピアノに移植する際、新たな魅力を生み出す秘訣はペダルのはたらきにあると考えています。
この編曲譜ではダンパーペダル(右ペダル)とシフトペダル(左ペダル)の両方を詳細に記したので、〈ペダルのためのエチュード〉という一面もあります。「良いピアニストの足元をよく見てみましょう。ピアニストは細かなペダル操作を行っており、決して足を止めることがないのがわかるでしょう。まさしく奏者は常に音をコントロールしているからです」と書いたのは、偉大なるピアニスト アレクサンドル・ゴリデンヴェイゼルです。ペダリングを追求するほど、鍵盤のタッチングにも意識が及ぶようになりますので、譜読みの段階からこのことをしっかり心に留めて、作品の魅力に迫っていただけましたら幸いです。


赤松林太郎(あかまつ りんたろう)
世界的音楽評論家ヨアヒム・カイザーにドイツ国営第2テレビにて「聡明かつ才能がある」と評された2000年のクララ・シューマン国際ピアノコンクール受賞からまもなく20年。神戸大学を卒業後、パリ・エコール・ノルマル音楽院にてピアノ・室内楽共に 高等演奏家課程ディプロムを審査員満場一致で取得(室内楽 は全審査員満点による)、国際コンクールでの受賞は10以上に及ぶ。

1978年大分に生まれ、2歳よりピアノとヴァイオリンを、6歳よりチェロを始める。幼少より活動を始め、5歳の時に小曽根実氏や芥川也寸志氏の進行でテレビ出演。10歳の時には自作カデンツァでモーツァルトの協奏曲を演奏。1990年全日本学生音楽コンクールで優勝して以来、国内の主要なコンクールで優勝を重ねる。ピアノを熊谷玲子、ミハイル・ヴォスクレセンスキー、フランス・クリダ、ジャン・ミコー、ジョルジュ・ナードル、ゾルターン・コチシュ、室内楽をニーナ・パタルチェツ、クリスチャン・イヴァルディ、音楽学を岡田暁生の各氏に師事。

国内各地の主要ホールはもとより、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストリア、ハンガリー、ポーランド、台湾、コロンビアを公演で回る一方で、2016年よりハンガリーのダヌビア・タレンツ国際音楽コンクールの審査員長を歴任しており、今日ではヨーロッパ各地で音楽祭のみならず、国際コンクールやマスタークラスにも多数招聘されている。

これまでに新田ユリ、手塚幸紀、堤俊作、西本智実、山下一史、デアーク・アンドラーシュの指揮のもと、東京交響楽団やロイヤルメトロポリタンオーケストラ、ロイヤルチェンバーオーケストラ、ドナウ交響楽団などと共演。キングインターナショナルから《ふたりのドメニコ》《ピアソラの天使》《そして鐘は鳴る》《インヴェンションへのオマージュ》《ブルクミュラー 25&18の練習曲》をリリース。新聞や雑誌への執筆も多く、エッセイ『赤松林太郎 虹のように』(道和書院)を出版。

現職は(社)全日本ピアノ指導者協会評議員、ブダペスト国際ピアノマスタークラス教授、洗足学園音楽大学客員教授、大阪音楽大学特任准教授、宇都宮短期大学客員教授、カシオ計算機株式会社アンバサダー。門下から国内外の主要なコンクールで多くの受賞者を輩出している(PTNA特級グランプリ・銀賞・銅賞、東京音楽コンクール優勝、多数の国際コンクール他)。

追加情報

重さ150 g
サイズ30 × 23 × 0.1 mm