説明
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1837年、アルカンはピアニスト・コンポーザーとして栄光の頂点を極めていた。この年に出版された作品は、これまで殆ど演奏されていないが、リスト、ショパン、ベルリオーズら同時代のロマンティックたちの影響のもとで、アルカンの個性が初めて開花した傑作であり、ここに収録された全ての曲は、驚くべき独創性、そして悪魔的な超絶技巧にあふれている。収録された12曲は、名高い「長調エチュード」「短調エチュード」にも匹敵する巨大なグループを形成しており、アルカンのArtistic Developmentを理解する上で、極めて重要な作品群である。(1844年の「騎士」作品17も合わせて収録)
アルカンについて
パリ音楽院に当時最年少で入学したと言う天才少年は、やがてピアノのヴィルトゥオーゾとしてショパンやリストと親交を結ぶ。その途方も無いスケール感と、執拗なメカニカルへの要求、独創的すぎるその作品は、アルカンの厭世生活のせいもあり、当時においてはほとんど評価されなかった。しかし、ハンス・フォン・ビューローが「ピアノのベルリオーズ」と述べ、ブゾーニが「最も重要なピアノ作曲家の一人」と評した作品は、20世紀において復権を果たす。「全ての短調による練習曲」作品39はアルカンの最高傑作にして、最大規模の作品である。第4曲~7曲は交響曲、第8曲~10曲は協奏曲、第11曲は序曲と称され、ピアノの響きを極限まで追求している。
ミヒャエル・ナナサコフについて
楽譜通りの演奏が困難だったり、演奏される機会が少なく録音も稀である作品を取り上げる世界初のヴァーチャル・ピアニスト。1955年リトアニアのヴィトリニュス生まれ、という設定であるが、実際にはプロデューサーである七澤順一が、コンピュータと自動演奏ピアノを用いて行っている録音プロジェクトである。90年に発売されたゴドフスキーの「ショパンのエチュードによる練習曲」でデビュー。当時満足な録音が無かった中で、超人的な演奏を実現して見せたことで大きな注目を集めた。