2022年10月の新刊情報(ニコライ・ホジャイノフ、グリンカ/佐伯涼真、平野義久、山田耕筰)

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2022年10月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。また、近日中にPDFの予約販売も開始予定です。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年10月25日です。

ジャコモ・プッチーニ – ニコライ・ホジャイノフ:蝶々夫人 ハミング・コーラス(ピアノ独奏のために)
プッチーニの代表作のひとつである歌劇「蝶々夫人」から「ハミング・コーラス」が世界中で活躍するピアニスト、ニコライ・ホジャイノフによってピアノ独奏用作品として生まれ変わりました。この作品はオーケストラをバックにコーラスがハミングで歌う半ば合唱曲のような作品です。ホジャイノフは、トレモロを用いることでハミングの持つ独特で魅惑的な雰囲気を表現しました。なお、この編曲は日本でのピアノリサイタルでも演奏され、人気を博しています。

Photo: Marie Staggat

ニコライ・ホジャイノフ(Nikolay Khozyainov)
ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフの音楽性と恐るべきテクニックは、全世界の聴衆を魅了している。これまで、ニューヨークのカーネギーホールやリンカーン・センター、ワシントンのケネディ・センター、ロンドンのウィグモアホール、パリのシャンゼリゼ劇場やサル・ガヴォー、モスクワのチャイコフスキーホール、東京のサントリーホール、シドニー・オペラハウス、チューリッヒのトーンハレ、ローマのクイリナーレ宮殿、マドリード国立音楽堂、国連など、世界の主要なコンサートホールで演奏。リサイタルやコンチェルトで多くの会場を満席にしている。また多くの大統領や首相、文化界、政治界の要人から称賛を受けている。2018年1月の東京サントリーホール公演には、上皇明仁陛下、上皇后美智子陛下(当時の天皇皇后陛下)が臨席された。また 2022年には、スペインの王家から騎士の称号と勲章を授けられた。 ホジャイノフはこれまで、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団、東京交響楽 団、シドニー交響楽団、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、チェコ・ナショナル交響楽団、ロシア国立交響楽団、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、アイルランド RTEナショナル交響楽団などを含む多数のオーケストラと共演。
https://www.nikolaykhozyainov.com/


グリンカ/佐伯涼真:序曲 歌劇『ルスランとリュドミラ』(演奏会用ピアノ独奏編曲)
ムラヴィンスキーの指揮(録音)で広く知られているグリンカ作曲の歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲。意外にもこの作品の演奏会向けのピアノ独奏編曲版は存在するようで存在していませんでしたが今回、ピアニストの佐伯涼真が原曲に敬意を払いつつ非常にピアニスティックな作品に仕立て上げました。演奏にはかなりの技術が要求されますが、”演奏会用編曲”と謳っただけに華やかで特にアンコールピースには持って来いの作品です。

佐伯 涼真(さえき りょうま)
2000年さいたま市生まれ。7歳よりピアノを始める。第32回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門高校生の部第1位。第3回K Pianoコンクール高校生部門第1位。2019年、桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻に入学。第26回フッペル鳥栖ピアノコンクール2020フッペル部門第2位。2021年桐朋ピアノコンペティションファイナリスト。2022年桐朋ピアノコンチェルト・コンペティション第1位。これまでにピアノを山上有紀子、武田美和子、中井恒仁、チェンバロを有田千代子、室内楽を村上寿昭、落合美和子、作曲を森山智宏の各氏に師事。


平野義久:Pickled Plum Rag & Rag Simulation(ピアノのために)
オーケストラ作品から劇伴作品まで幅広い作品を生み出している作曲家・平野義久のピアノ作品の楽譜が出版です。平野によれば「タラコ・スパゲティ」ないしは「抹茶アイス」を目指したという、通常のラグタイムとは一味違う彼ならではの強烈な作品です。

10代の頃ジャズに傾倒していたこともあり、ラグタイムは私にとって親しみある音楽ジャンルだ。 実際、スコット・ジョプリンの呑気さからアート・テイタムの桁違いな猛者っぷりまで、私は折に触れてこのユニークな音楽に魅了され、心踊らせてきた。劇伴の仕事においても、ジョプリンのいくつかの作品を様々な楽器編成でアレンジしたサウンドトラックを制作したことがあったし、もちろんオリジナルだって何度となく書いている。 思うにラグタイムとは、純然たる楽しみであり、眉間にシワよりも口角を上げることに寄与する、ハッピーかつアンチエイジングな音楽である。
だが、純音楽作品としてのラグを書いたのは、この2曲が初めてだ。かなりキテレツで冗談音楽めいたセクションも含まれるが、それは僕にとっての、そして願わくば聴衆にとっての「口角の上がる」純粋な楽しさとして響いてくれればと思う。言わずもがな、演奏家にとっては、「眉間にシワ」を深々と刻まずにはいられないエイジング促進必至のフレーズ群となる。ごめん。
平野義久による楽曲解説より

平野義久(ひらの よしひさ)
1971年12月7日和歌山県新宮市生まれ。5歳よりヴァイオリンを始める。バロック音楽に魅了され、小学生の頃から独学で作曲を始める。高校時代にジャズと邂逅、また、ジョン・ゾーンへの心酔を契機に現代音楽に心惹かれるようになる。一方で、ショスタコーヴィチの交響曲に強い感銘を受け、本格的な作曲の修行を決意する。高校卒業後紆余曲折を経て渡米、イーストマン音楽院で作曲をクリストファー・ラウス、ジョセフ・シュワントナー両氏に師事する。バタイユ、クロソウスキー、マンディアルグ、ジュネら20世紀フランスの作家・思想家に傾倒し、授業もそっちのけで多くの時間を読書、そして作曲に費やす。紆余曲折を経て同院中退、その後帰国。さらなる紆余曲折を経て2001年に劇伴作曲家としてデビュー。以来今日に至るまで数多くのサウンドトラックを世に送り出している。文学・哲学から落語・モードファッション、さらには動物・昆虫・素粒子までこよなく愛する好奇心旺盛な作曲家。ただし幼少時のトラウマ体験により芋虫恐怖症。


山田耕筰 ピアノ曲拾遺 全3巻

クラシック専門レーベルのVacances Musicalesとの共同プロジェクトにより「赤とんぼ」や「この道」などの歌曲でも広く知られた国民的作曲家・山田耕筰の埋もれた傑作ピアノ作品の楽譜を出版します。解説は音楽学者の高久暁、校訂・校閲はピアニストの杉浦菜々子によるものです。拾遺(しゅうい)とは、余ったり見落とされたものを集めたもののこと。存在は知られていたものの、これまでなぜか出版されたことのなかった作品や、未完作品の補筆完成版を収録しています。

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第一集《古典様式による初期作品》
ガヴォット、ロンド、変奏曲といった未だかつて出版されたことのないベルリン時代の作品群の出版、及び、かつて旧第一法規からその一部が出版されたもののその後絶版状態となっているソナタ、シャコンヌといった古典様式の作品群の復刻。これらの作品は日本クラシック音楽黎明期の貴重な記録であり、日本人が最初にヨーロッパでクラシック音楽を本格的に学んだ際の瑞々しい喜びが反映された佳曲です。

収録曲目:メヌエット 変ホ長調 / 2つのソナチネ / ソナタ ホ長調 / アレグロ・モデラート / ソナタ ト長調 / ガヴォット ト長調 / マーチ ト長調 / 秋の日のメロディ / 無言歌 / 変奏曲 ト短調 / 変奏曲 イ長調 / 主題と変奏曲 ハ長調 / シャコンヌ ハ短調 / シャコンヌ ハ長調 / オリムピック行進曲 輝く朝日

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第二集《山田耕筰歌曲によるピアノ編曲》(平野真奈、永井みなみ、青木聡汰による)
山田耕筰の名を不朽にしているのは何といっても「赤とんぼ」や「この道」といった日本人なら誰でも知る名曲歌曲ですが、「からたちの花」については山田自身の編曲が存在し、現在でも演奏されています。その山田の例に倣い、若手作曲家の青木聡汰 、平野真奈、永井みなみが山田の名曲の数々をピアノ作品として生まれ変わらせました。

収録作品:山田耕筰:からたちの花 / 平野真奈編曲:赤とんぼ、あわて床屋、ペチカ / 永井みなみ編曲:この道 / 青木聡汰編曲:鐘が鳴ります、城ヶ島の雨、砂山、六騎

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第三集《未完成作品の補筆完成》
山田が遂には完成させることがなかった「ソナタ・エクスタジエ」「アンプロンプチュ」「神戸の想い出」「セレナード」といった大作を、気鋭の作曲家・即興演奏化の榎 政則が補筆完成。いずれも現在知られている山田のピアノ作品にはない大規模な作品であり、スクリャービンやショパンの影響を受けつつ山田独自のピアニズムに昇華された日本ピアノ音楽黎明期の精華と言える充実した内容です。

収録曲目:アンプロンプチュ* / ソナタ・エクスタジエ* / セレナード* / わが神戸時代の思い出* / 《付録》源氏楽帖 (い)「桐壺」の巻より (ろ)「若紫」の巻より (は)「末摘花」の巻より (に)「紅葉の賀」の巻より (ほ)「花の宴」の巻より (へ)「花散里」の巻より (と)「須磨」の巻より

髙久 暁(たかく さとる)
音楽学・音楽評論。日本大学芸術学部教授(芸術学[音楽学]・美学)。主な研究分野として20世紀の亡命ロシア人音楽家の生涯と創作(ニコライ・メトネル、アレクサンドル・チェレプニンほか)、アジア諸国のピアノ文化史、日本人及び台湾人作曲家の創作史(篠原眞、郭芝苑、許常惠ほか)、近現代ギリシャを中心とするバルカン半島諸国の芸術音楽史など。共著・論文・翻訳等多数。校訂・編集楽譜として世界初出版の初期稿を含むニコライ・メトネル《忘れられた調べ 第1集》作品38(全音楽譜出版社)、マルク=アンドレ・アムラン《コン・インティミッシモ・センティメント》(音楽之友社/Edition Peters)、ワルター・ギーゼキング《シャコンヌ》(ミューズ・プレス)ほか。

杉浦 菜々子(すぎうら ななこ)
ピアニスト。武蔵野音楽大学大学院博士前期課程修了。 日本人作品の演奏をライフワークとし、出版における調査や資料収集、校正、校閲に当たっている。近年は委嘱や新作の初演にも積極的に取り組んでいる。2016年よりピティナ公開録音コンサートで「日本人作品の夕べ」シリーズとし、数多くの日本人作品を演奏、録音している。ピティナピアノ曲辞典には演奏動画多数と曲解説が登録されている。 2018年11月に1stアルバム「山田耕筰ピアノ作品集」をリリース(『レコード芸術』誌【特選盤】)。2021年11月2ndアルバム「休暇の日々~フランスバロックからセヴラック、タイユフェールまで」を、2022年3月3rdアルバム「J.S.バッハ&S.L.ヴァイス リュート作品の鍵盤用トランスクリプション集」(『レコード芸術』誌【準特選盤】)を、2022年6月「近藤浩平&山田耕筰ピアノ作品集『麦草峠のギター』」を、2022年9月「知られざる山田耕筰のピアノ音楽」(『レコード芸術』誌【準特選盤】)をリリース。