2023年6月の新刊情報(服部百音、ニコライ・ホジャイノフ、アルフォンソ・ソルダーノ)

2023年6月の新刊情報をお届けします。

服部百音:L.v.ベートーヴェン 《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調》作品61へのカデンツァ

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若手ヴァイオリニストの中でも随一の人気と実力を誇る服部百音。21歳の時に初めてベートーヴェンのヴァイオリンコンチェルトの実演に挑む際、当時の桐朋学園大学学長だった梅津時比古氏の助言で書き下ろし、見事サントリーホールで演奏をした自作のカデンツァが登場です。この曲へのカデンツァは多くの作曲家やヴァイオリニストによって書かれていますが、服部は良く知られたクライスラーのカデンツァを導入に引用してオマージュを捧げています。

服部百音(はっとり もね)
1999年9月14日生まれ。 5歳よりヴァイオリンを始め、幼少期より辰巳明子、ザハール・ ブロンに師事。 8歳でオーケストラと初共演し、2009年にポーランドでのリピンスキ・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで史上最年少第1位並びに特別賞を受賞。10歳より演奏活動を始め11歳でミラノのヴェルディホールでリサイタルを行いグランドデビュー。ロシア、ヨーロッパに於いても演奏活動を始める。 2013年にはヤング・ヴィルトゥオーゾ国際コンクールでグランプリ、新曲賞を受賞。 また同年開催のノヴォシビルスク国際ヴァイオリンコンクールでは13歳でシニア部門に飛び級エントリーし、史上最年少グランプリを受賞。 2015年にはボリス・ゴールドシュタイン国際コンクールでグランプリを受賞。 2016年10月「ショスタコーヴ ィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ワックスマン:カルメン 幻想曲」でCDデビューし、レコード芸術の特選盤に選出される。 2017年新日鉄住金音楽賞、岩谷時子賞、 2018年アリオン桐朋音楽賞、服部真二音楽賞、2020年ホテルオークラ音楽賞、出光音楽賞を受賞し 2021年1月にはブルガリ アウローラ アワードを受賞した。 現在はN響、読響、東フィル、東響、日フィルをはじめとする数々の著名オーケストラ、指揮者と共演を重ね海外でもマリインスキー劇場をはじめ様々な演奏活動を行っている。 21年10月より桐朋学園大学音楽学部大学院に進学。使用楽器は日本ヴァイオリンより特別貸与のグァルネリ・デル・ジェス。


ニコライ・ホジャイノフ:平和の花びら – ピアノのために

楽譜表紙(MP-08803)

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ニコライ・ホジャイノフは、2022年11月にジュネーブの国連事務局の「人権と文明の同名の間」で行われたコンサートのために、《平和の花びら》という名のピアノ作品を作曲しました。ホジャイノフはこれまでに数曲の編曲作品を生み出し、これまでに2曲出版されていますが、自作の作品の出版は初めてです。

最近は誰もが戦争のことを気にかけている状況なので驚くことでなくなったかもしれませんが、国連によると現在、世界で25もの国々が戦争状態にあるそうです。そのことを思い、この演奏会のために特別にこの曲を作り、国連で初演しました。 私はこの作品を「Petals of Peace(Pétales de la Paix、平和の花びら)」と名付けました。 平和とは蜃気楼のようなもの、美しい幻影のようなものです。時には目にすることができるし、触れることもできるけれど、同時に、私たちみんなが求め、何よりも必要とするものでもあります。 この作品は、美が支配し、私たちが一つでいられる、別の世界を表すものです。それは、私たちが永遠に望み続ける夢といえるでしょう。
―ニコライ・ホジャイノフの解説より

ニコライ・ホジャイノフ
ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフの音楽性と恐るべきテクニックは、全世界の聴衆を魅了している。これまで、ニューヨークのカーネギーホールやリンカーン・センター、ワシントンのケネディ・センター、ロンドンのウィグモアホール、パリのシャンゼリゼ劇場やサル・ガヴォー、モスクワのチャイコフスキーホール、東京のサントリーホール、シドニー・オペラハウス、チューリッヒのトーンハレ、ローマのクイリナーレ宮殿、マドリード国立音楽堂、国連など、世界の主要なコンサートホールで演奏。リサイタルやコンチェルトで多くの会場を満席にしている。

Photo: Marie Staggat

アルフォンソ・ソルダーノ:ラフマニノフの作品に基づく2つのピアノ編曲

楽譜表紙(MP-02904)

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ラフマニノフやボルトキエヴィチ等のロシア音楽を得意とするアルフォンソ・ソルダーノによる新たなラフマニノフのピアノ編曲作品を出版します。今回、ラフマニノフの代表作として語られる「アダージョ」(交響曲第2番より)、そして、元々は2台ピアノのために作曲された「愛…夜」(組曲第1番より)がピアノ独奏版として生まれ変わります。ピアノが本来持つ特性を活かしつつも、さまざまな楽器の役割をピアノ一台で表現しています。

トランスクリプションやパラフレーズは、知的な引用や単なる移調ではなく、最も文化的な意味で、独自の生命を持つ作品としてとらえることができる。ピアノ演奏は、本来、さまざまな楽器の担い手(オーケストラ、室内楽、声楽、オペラ)のために考えられたもので、これは白黒写真の発明に匹敵するほどの重要な発明である。実際、この最新技術の出現以前には、美術館にある芸術作品のようなものを深化させ、遠くに届ける手段は存在しなかった。白黒写真は、オリジナルの色彩の復元することができないが、作品の特徴を忠実に再現することができる。トランスクリプションも、高度な技術を用いることで、楽曲のイメージや感覚、様式、楽器の知識に関する情報を同じように提供しており、稀に原曲よりも詳細な情報をもたらすこともある。(ラヴェルの《ラ・ヴァルス》の2台ピアノ版など)
―アルフォンソ・ソルダーノの解説より

アルフォンソ・ソルダーノ
生来の技巧派、洗練された音楽解釈で高い評価を受けているアルフォンソ・ソルダーノ(1986・イタリア、トラ―ニ在住)はニコロ・ピッチンニ音楽院にてアルド・チッコリーニやピエルイージ・カミーチャに師事し、若くして優秀な成績“Distinguished Degree with Honor”で卒業した。またサンタ・チェチーリア国立音楽院においてもベネデット・ルポに師事しディプロマを取得。数々のコンクールにおいて優勝し、現在はイタリア各地でのマスタークラスをはじめ、ヨーロッパ各地に招待されている。2013年4月には“International Gold Medal Prize for Best Italian Artist (ベスト・イタリアン・アーティストに贈られる賞)”を受賞し、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の式典に出席。17歳のころよりバカウ・フィルハーモニー管弦楽団のラフマニノフ作品の公演に出演している他、イタリア国内外のオーケストラにてO.Balan、 D. Frandes、 M. Cormio、V. Zhadkoといった指揮者と共演している。

2023年4月の新刊情報(フランチェスコ・リベッタ、ベアトリス・ベリュ、アダム・ゴルカ & レイモンド・ルーウェンサール)

2023年4月の新刊情報をお届けします。本日より印刷版、ダウンロード版のご予約の受付を開始いたします。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2023年4月25日です。

フランチェスコ・リベッタ:ピアノ編曲集 第1巻(ボーイト、アルファーノ、ジェズアルド&トラバーチ)

楽譜表紙(MP-05902)

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イタリアを拠点に世界で活躍するコンポーザー=ピアニスト、フランチェスコ・リベッタの編曲作品集を出版します。第1巻は、ボーイト、レオ、アルファーノ、トラバーチやジェズアルドといったイタリア人作曲家によって生み出された作品のピアノ独奏用編曲が収められています。それらの編曲は、ピアニストに委嘱されコンサート用に書き下ろされたという華麗なものから、クラヴィコードの作法にならって装飾を施す程度に留められたものまで多彩なスタイルを持ち合わせています。

収録楽曲
アッリーゴ・ボーイト/リベッタ編曲:選ばれた悪魔 – 歌劇《メフィストフェーレ》の主題によるパラフレーズ
レオナルド・レオ/リベッタ編曲:喧嘩の歌 – 喜歌劇《愛は苦しみを望む》より レチタティーヴとアリア
フランコ・アルファーノ/リベッタ編曲:もしあなたが沈黙するなら – 《タゴールの抒情詩》
ヴェノーザ公カルロ・ジェズアルド/リベッタ編曲:3つのマドリガル
ヴェノーザ公カルロ・ジェズアルド/リベッタ編曲:ガリアルダ
ジョヴァンニ・マリア・トラバーチ/リベッタ編曲:トッカータ II

どんな世代も、過去の時代から受け継がれてきた音楽作品に、独自の関係性や観点をもっている。何世紀もの間、一般大衆は基本的に過去の音楽には興味を示さず、また過去の時代の音楽が特殊な名声を帯びているケースも存在したが、主として目新しいものを評価してきた。いずれの場合も、新しい楽器が発明されると、その楽器のために新旧様々な作品を転用し、現代的なものへと改作する傾向があることにも気づかされる。オーケストラや声楽の曲を鍵盤楽器に書き写すことは、リュートやチェンバロなど非常に古くから行われているが、ピアノの場合は新たな意味を持つようになった。
―フランチェスコ・リベッタの解説より

フランチェスコ・リベッタ
リベッタはローマでG.マリヌッツィに、パリでJ.カステレードに作曲を学ぶ。演劇や映画のための音楽、アコースティック、室内楽、オーケストラのための音楽を作曲している。ピアノソナタ、交響曲、バレエ(マイアミのヴィーナス)、電子音楽、室内楽(ティンパニ協奏曲、チェロソナタ、バイオリンソナタ、トリオなど)、映画音楽、舞台劇のための音楽など、その作品目録は多岐にわたる。オトラント、ローマ、レッチェで上演されたオペラ《L’Assedio di Otranto》がCDでリリースされている。A.M.ジウリとG.ザンピエーリに師事し、交響曲、オペラ(ドン・ジョヴァンニ)、バレエ(くるみ割り人形、眠れる森の美女、カルメン)のレパートリーを指揮している。M.メッシニスはリベッタを「ブラヴィッシモ」(Classic Voice誌)、「彼の身のこなしは透明感に溢れている」(G.バルビエリ、Repubblica誌)、「指揮者とピアニストのフランチェスコ・リベッタによってすべてが完璧にコントロールされていた」、「驚異の名人芸」(M.ヴァローラ、La Stampa紙)と評している。


マーラー/ベアトリス・ベリュ:アダージェット – 交響曲第5番より(ピアノ独奏版)

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ピアニストのベアトリス・ベリュは、マーラーの作品の中でも有名な「アダージエェト」(交響曲第5番より)をピアノ独奏用に編曲しました。2018年11月にベアトリス・ベリュが自身のYouTubeチャンネルに、この編曲の演奏動画を投稿したところ、数の多くの方々から楽譜の出版を望む声が上がりました。
マーラーの交響曲は複雑であるかつ大変美しい音楽でありますが、ピアニストたちにとって彼の作品を演奏する機会は限られていました。今回、ベアトリス・ベリュは新しい文脈でマーラーの作品を体験するために、独自の視点を持ちながら編曲に取り組みました。マーラーの作品の精神に忠実でありながら、ピアノ独奏用に調整された編曲は、ピアノでマーラーの音楽を蘇らせたい方々にとってはマストアイテムになることでしょう。


ロベルト・シューマン/アダム・ゴルカ:夕べの歌 作品85 第12番(ピアノ独奏版)

楽譜表紙(MP-05902)

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ロベルト・シューマンが作曲した4手のためのピアノ作品集《小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品》の第12番にあたる「夕べの歌」をアダム・ゴルカが一人でも演奏できるようにピアノ独奏用に編曲しました。

10年ほど前、友人と一緒にシューマンの4手ピアノ曲を読んだとき、すぐに《夕べの歌》に惚れ込みました。この曲は、《小さな子供と大きな子供のための12の連弾小品》という、魅力的だがあまり演奏されない作品群の最後を飾るものですが、その演奏効果は他の作品とは別格です。バッハのサラバンドやショパンのチェロソナタの《ラルゴ》と並んで、30小節足らずでこれほどまでに世界を表現できる曲は多くありません。この曲は、リサイタルの最後に観客に終わりを告げるのが最適であるだけでなく、自分と自分のピアノに「おはよう」「こんにちは」と話しかけるのにもぴったりです。
―アダム・ゴルカの解説より

アダム・ゴルカ
1987年生まれのポーランド系アメリカ人ピアニスト、アダム・ゴルカは、ベートーヴェン生誕250周年を記念して、アメリカの3都市で「ピアノ・ソナタ全32曲」の演奏と配信を行った。その舞台裏は「32@32」というプロジェクトとしてYouTubeで公開されている。ソリストとしては、サンフランシスコ交響楽団、ヒューストン交響楽団、アトランタ交響楽団、ダラス交響楽団、ミルウォーキー交響楽団、インディアナポリス交響楽団、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、上海フィルハーモニー管弦楽団、国立芸術センター管弦楽団(オタワ)、テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ(カラカス)と共演している。また、アンドラーシュ・シフ卿の“Building Bridges”プロジェクトの一環として、ルール・ピアノ音楽祭やチューリッヒ・トーンハレでリサイタルを行ったほか、武蔵野市民会館(東京)、コンセルトヘボウ(アムステルダム)、アリス・タリー・ホール(ニューヨーク)でもリサイタルを行っている。ジョゼ・フェガリ、レオン・フライシャーに師事したほか、アルフレート・ブレンデル、アンドラーシュ・シフ、リチャード・グード、マレイ・ペライア、フェレンツ・ラドシュ、リタ・ワーグナーからも指導を受けている。


ラフマニノフ/レイモンド・ルーウェンサール:ここは素晴らしい場所(ピアノ独奏版)

楽譜表紙(MP-03503)

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レイモンド・ルーウェンサール(1923-1988)はアメリカ生まれのピアニストで、アルカンやシャルヴェンカ、ヘンゼルト、ルビンシテインなどの知られざる作曲家の作品を探究、再評価に貢献したことで知られる。そんな彼が演奏会のアンコールとして好んで弾いたルーウェンサール自身による編曲である「ここは素晴らしい場所(How Fair This Spot)」(作曲:セルゲイ・ラフマニノフ)の楽譜が今泉響平の採譜によって甦ります。また、大英博物館のクラシック部門担当のキュレーターを務めるジョナサン・サマーズが解説を執筆しました。

RAYMOND LEWENTHAL (1923-1988)
Provided by International Piano Archives at Maryland

レイモンド・ルーウェンサール
テキサス州サンアントニオに生まれたレイモンド・ルーウェンサールは、カリフォルニア州ハリウッドで育った。1943年に高校を卒業した後、シューラ・チェルカスキーの母であるリディア・チェルカスキーの下でピアノを学んだ。地元のピアノコンクールで優勝すると、助成金を得てニューヨークのジュリアード音楽院でオルガ・サマロフに師事。サマロフは、1948年、当時25歳であったルーウェンサールをディミトリ・ミトロプーロスが指揮するフィラデルフィア管弦楽団にデビューさせ、最も有力な代理人であったアーサー・ジャドソンとの契約にも大きく貢献した。ルーウェンサールは全米でツアーを行い、1951年にはニューヨークのタウンホールとカーネギーホールでリサイタルを開催した。

シャルル・ケクラン~フランス音楽黄金期の知られざる巨匠(6)

 1902年3月、ケクランの私生活には変化の兆しが見えていた。彼はそれまで8年ほど住んでいたパリ16区のプラス・ディエナ(Place d’Iéna)を後にして、同じ区内のオートゥイユにあるヴィラ・モンモランシー(Villa Montmorency)へと居を移す。16区といえば、現在でも富裕層が多く集まる高級住宅地として知られているが、アルザス地方のブルジョワ家系を出自とするシャルル・ケクランが生まれたのもこの地区だった。豊かな家庭環境に生まれ育った彼にしてみれば、この高級な地域の雰囲気は居心地の良いものだったのか、何度かこれ以後も同じ区内で引っ越しを繰り返している。

 まさに同じ頃、隣接する17区のカルディネ通り58番地では、歌劇《ペレアスとメリザンド》の初演を約1カ月後に控えて、ドビュッシーが最終段階の作業を行っていた。この時にはまだ力ある多くの作曲家の一人でしかなかった彼も、フランスを代表する作曲家としての名声が確立されてからの1905年には、16区のブローニュの森にほど近い一軒家へと移り住んでいる。

 まさかもうすぐ、たった一つの歌劇が楽壇を震撼させフランス音楽の歴史を塗り替えることになろうとはつゆ知らず、ヴィラ・モンモランシーに引っ越したケクランは、ここで一人の女性と出会う。

エッフェル塔から見下ろした16区の風景。奥の森がブローニュの森。
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2023年1月の新刊情報(ウラディミール・レイチキス、フランツ・リスト、ユリアン・スクリャービン)

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。2023年1月の新刊情報をお届けします。本日より印刷版のご予約の受付を開始いたします。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2023年1月25日です。

モーリス・ラヴェル/ウラディーミル・レイチキス:ボレロ(独奏編曲)
ピアノの巨匠 ゲンリフ・ネイガウスの晩年の弟子のひとりであるウラディミール・レイチキス。彼はアメリカを中心に教育家及び演奏家として活動していましたが、編曲家としても名が知られ、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のピアノ独奏版(シャーマー社)はこれまでに多くのピアニストによって取り上げられています。

レイチキスの編曲作品は演奏効果が非常に高く、他にも数曲の編曲が存在します。「春の祭典」以外の編曲作品の楽譜は絶版ないし未出版、数多くのピアニストが探し求めていましたが様々な事情により入手には困難を極めました。また、レイチキスが2016年にこの世を去ったことにより、彼の編曲作品の楽譜の出版は絶望的に難しいかと思われていました。しかし、ピアニストのサンドロ・ルッソの協力により、レイチキスの遺族の許諾のもとレイチキスの編曲作品の出版プロジェクトが始動しました。

第1弾として、ラヴェル作曲/レイチキス編曲の「ボレロ」の楽譜を出版します。この編曲は、ピアニストの大瀧拓哉氏によって2021年6月20日に日本初演が行われたことで出版を望む声が多方からあがっていました。
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サンドロ・ルッソの解説より
このピアノ独奏版のモデルは、ほぼ間違いなくラヴェルの2台ピアノ版《ボレロ》であるように思われますが、曲が激しくなり、楽器の質量が増すにつれて、レイチキスはよりオーケストラ・スコアに忠実なアプローチを選択しています。例えば、リズムのオスティナートに関して、2台ピアノ版ではラヴェルがオクターブやトレモロを用いて巧みに単純化していたものを、レイチキスはオクターブの高速反復やアルカン風の和音を惜しみなく用いています。いずれも、ヴィルトゥオーゾのテクニックに耐えうる手首の強さが必要となります。

ウラディミール・レイチキス(Vladimir Leyetchkiss)
1934年8月8日、ロシア生まれ。アントン・ルビンシタインの孫であるジョルジュ・シャロエフのもとでピアノの学び、その後、モスクワ音楽院にてゲンリフ・ネイガウスに師事する。1974年、アメリカ合衆国に亡命。シカゴのデポール大学で教鞭を執る。レイチキスは、編曲家としても知られ、これまでにイゴール・ストラヴィンスキーの《春の祭典》(シャーマー社)やポール・デュカの《魔法使いの弟子》(ムジカ社)、セルゲイ・ラフマニノフの《組曲 第2番》(ミューズ・プレス社より刊行予定)などのピアノ独奏編曲を生み出した。ピアニストとしては、CDアルバムをCentaur Recordsより《Great Piano Transcriptions》をリリースしている。2016年10月11日、イリノイ州エヴァンストンで亡くなる。


ユリアン・スクリャービン:4つの前奏曲(解説:山本明尚)
ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンには、作曲家を志した息子がいました。彼の名は、ユリアン(ユリアーン)・スクリャービン。1908年に生まれ、1919年に11歳という幼さでこの世を去りましたが、彼は4つのピアノ曲を残したとされています。彼の作品は、父スクリャービンの中期から晩年の作品を彷彿とさせるもので、夭逝が悔やまれます。この度、楽譜を出版するにあたって息子ユリアン及び作品に関する解説を音楽学者である山本明尚が執筆しました。
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ユリアン・スクリャービン
1908年生まれ。父は、ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンである。 幼い頃から専門的な教育を受け、ピアノ演奏と作曲において頭角を現し、レインゴリト・グリエールに師事した。しかし、1919年6月下旬、ユリアンの溺死体がドニエプル川で発見されその生涯を閉じる。溺死体となってしまった詳細、正確な死亡日はいまだ不明である。

山本 明尚(やまもと あきひさ)
音楽学者。専門領域は19世紀後半〜20世紀初頭のロシア芸術音楽。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。在学中に安宅賞、卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。同大学院音楽研究科修士課程修了、大学院アカンサス賞を受賞。また、2016年にはモスクワ音楽院ロシア音楽史学科研究実習を修了。現在、東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程およびロシア国立芸術学研究所音楽史専攻に在籍。2017〜2020年まで、日本学術振興会特別研究員(DC1)。2020・2021年度公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション奨学生。近著に「プロレトクリトの『音楽教化』:イデオロギー的プログラムと日常的実践」(2022年)。訳書にチャイコフスキー『実践的和声学習の手引』(2022年、音楽之友社)。


フランツ・リスト:ショパンによるピアノソナタ第3番の 終楽章(207-253小節)のための変奏 S. 701w(校訂・解説:トマシュ・カミェニャク )
リストによる自作、編曲や校訂集などには様々なタイプの変奏が見られます。特にCotta社刊行のリスト校訂のウェーバーやシューベルトの作品集、スメタナ、タウジッヒ、ラフ、ルービンシュタインなどの作品の冒頭や終盤、弟子のために書かれた自作に添えられた変奏やオッシアなどは非常に注目に値します。今回、ミューズ・プレスから出版される楽譜は、フレデリック・ショパンのピアノソナタ第3番の終楽章のために書かれた変奏です。この変奏は、一説にはリストの弟子であるオルガ・ジャニナのために書かれたと言われています。
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フィナーレ全体を見ると、リストは実に賢明かつ論理的にこの変奏を書き上げています。この楽章はロンド形式であり、6/8拍子で始まります。主題は左手が4分音符(ポリリズム)、その後16分音符で、規則正しく再現され、その後16分音符の代わりに5分音符が導入されると、ポリリズムのパターンを生み出します。その後、左手の跳躍による規則的な3連符が現れ、フィナーレの表情と力強さを自然に高めています。

― トマシュ・カミェニャクの解説より

トマシュ・カミェニャク(Tomasz Kamieniak)
トマシュ・カミェニャクはピアニストであり作曲家である。フランツ・リストやシャルル=ヴァランタン・アルカンの曲はもとより、知名度の低い作曲家の曲も好んで演奏している。 カトヴィツェのポーランド国立カロル・シマノフスキ音楽アカデミーのピアノ科にて、ヨアンナ・ドマンスカに師事。卒業後は、ドイツのフランツ・リスト・ヴァイマル音楽大学のロルフ=ディーター・アレンスに師事した他、コンスタンチン・シェルバコフ(マスタークラス)、ズビグニエフ・ラウボ教授(カトヴィツェの大学院)、ロンドンのレスリー・ハワードの下でさらに演奏技術に磨きをかけた。 第4回ワイマール国際フランツ・リストコンクールにて特別賞受賞。 出版社Acte Préalable主催の第4回録音プロジェクト「忘れられたポーランドの音楽」コンクールでグランプリを受賞し、ヨゼフ・ヴィニアフスキのピアノ作品を録音。カトヴィツェの政府機関であるマーシャル・オフィスとバイロイトのワーグナー協会から奨学金を授与されたほか、タルノフスキー・ゴーリー市長から文化的功績を称えて賞を授与されている。

【新刊情報】福間洸太朗「聞かせてよ愛の言葉を」&「シャンソンメドレー」

世界各地で活躍するピアニスト・福間洸太朗が編曲した『聞かせてよ愛の言葉を』と『シャンソンメドレー』の楽譜が遂に出版されます!親しみやすい楽曲が並んでおり幅広い方にお楽しみいただけることでしょう。

この楽譜は2022年12月11日(日)に東京都練馬区・光が丘IMAホールで開催される「福間洸太朗ピアノリサイタル スクリャービンVSラフマニノフ ~輝きを求めて~」と2022年12月23日(金)に埼玉県所沢市・所沢市民文化センターのアークホールにて開催される「所沢ミューズ×音まちコンサート特別公演 福間洸太朗 ~クリスマスに聴く 珠玉のピアノ名曲集~」の2つの会場にて先行販売予定です。

なお、一般販売及び発送開始日は12月26日(月)の予定です。本日よりこちらのページにてご予約が可能です。

『聞かせてよ愛の言葉を』(ルノワール作曲)は、武満徹が終戦間近に陸軍食糧基地の見習士官に聴かせてもらい感銘を受けたという作品で2007年の冬に開催された武満徹の人生と作品を紹介するレクチャーコンサートを機会に福間洸太朗が華やかなピアノ独奏のための編曲に仕立て上げました。また、2016年にフランスプログラムのリサイタルのために福間洸太朗が作曲した『シャンソンメドレー』の楽譜も収録されました。このメドレーは全10曲で構成され、中には「海」(トレネ作曲)、「バラ色の人生」や「愛の讃歌」(ピアフ作曲)、「枯葉」(コスマ作曲))などの有名曲が含まれています。この『シャンソンメドレー』を福間洸太朗は各地で演奏していますが、フランスのみならず世界各国で好評を得ています。

楽譜表紙

福間洸太朗について

20歳でクリーヴランド国際コンクール日本人初の優勝およびショパン賞受賞。
パリ国立高等音楽院、ベルリン芸術大学、コモ湖国際ピアノアカデミーにて学ぶ。20歳でクリーヴランド国際コンクール優勝(日本人初)およびショパン賞受賞。
これまでにカーネギーホール、リンカーン・センター、ウィグモア・ホール、ベルリン・コンツェルトハウス、サル・ガヴォー、サントリーホールなどでリサイタルを開催する他、クリーヴランド管弦楽団、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団、フィンランド放送交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、トーンキュンストラー管弦楽団、NHK交響楽団など国内外の著名オーケストラと多数共演、50曲以上のピアノ協奏曲を演奏してきた。2016年7月には故ネルソン・フレイレの代役として急遽、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団定期演奏会において、トゥガン・ソヒエフの指揮でブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏し喝采を浴びた。また、フィギュア・スケートのステファン・ランビエルなどの一流スケーターとのコラボレーションや、パリにてパリ・オペラ座バレエ団のエトワール、マチュー・ガニオとも共演するなど幅広い活躍を展開。
CDは「バッハ・ピアノ・トランスクリプションズ」、「France Romance」、「ベートーヴェン・ソナタアルバム」(ナクソス)など、これまでに18枚をリリース。
そのほか、珍しいピアノ作品を取り上げる演奏会シリーズ『レア・ピアノミュージック』のプロデュースや、OTTAVA、ぶらあぼweb stationでの番組パーソナリティを務め、自身のYouTubeチャンネルでも、演奏動画、解説動画、ライブ配信などで幅広い世代から注目されている。多彩なレパートリーと表現力、コンセプチュアルなプログラム、また5か国語を操り国内外で活躍中。テレビ朝日系「徹子の部屋」や「題名のない音楽会」、NHK テレビ「クラシック音楽館」や「クラシック倶楽部」などメディア出演も多数。第39回日本ショパン協会賞受賞。
公式サイト https://kotarofukuma.com/
公式ファンクラブ https://shimmeringwater.net/

福間洸太朗(ふくま こうたろう)

2022年11月の新刊情報(ホジャイノフ、イェディディア、カミェニャク、クラフリーク、石月一匡)

2022年11月の新刊情報をお届けします。本日より印刷版及び紙版のご予約の受付を開始いたします。これらの楽譜の販売・発送開始予定日、ダウンロード可能日は2022年11月30日です。

ニコライ・ホジャイノフ:「さくら・さくら」に基づく即興曲(ピアノ独奏のために)
桜に魅せられたニコライ・ホジャイノフが日本民謡「さくらさくら」に基づく即興曲を書き上げました。桜が持つ不思議な明暗や美、儚さがホジャイノフのイマジネーションと見事な融合を果たしています。日本で始めて桜を見たニコライ・ホジャイノフの衝撃がこの曲から伝わってくることでしょう。
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ニコライ・ホジャイノフの解説より
今あなたが⼿にしているのは、私が⽇本の有名な歌曲「さくらさくら」にもとづいて書いた、即興曲です。⽇本を訪れるようになってから、その花が伝説ともいえるような桜を⾒ることは、私にとってずっと夢でした。それはどんなものだろうかと思いを馳せる美的な楽しみだけでも、私の⼼は躍り、その姿を⾒られる⽇が待ち遠しくなりました。

Photo: Marie Staggat

ニコライ・ホジャイノフ(Nikolay Khozyainov)
ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフの音楽性と恐るべきテクニックは、全世界の聴衆を魅了している。これまで、ニューヨークのカーネギーホールやリンカーン・センター、ワシントンのケネディ・センター、ロンドンのウィグモアホール、パリのシャンゼリゼ劇場やサル・ガヴォー、モスクワのチャイコフスキーホール、東京のサントリーホール、シドニー・オペラハウス、チューリッヒのトーンハレ、ローマのクイリナーレ宮殿、マドリード国立音楽堂、国連など、世界の主要なコンサートホールで演奏。リサイタルやコンチェルトで多くの会場を満席にしている。また多くの大統領や首相、文化界、政治界の要人から称賛を受けている。2018年1月の東京サントリーホール公演には、上皇明仁陛下、上皇后美智子陛下(当時の天皇皇后陛下)が臨席された。また 2022年には、スペインの王家から騎士の称号と勲章を授けられた。 ホジャイノフはこれまで、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団、東京交響楽 団、シドニー交響楽団、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、チェコ・ナショナル交響楽団、ロシア国立交響楽団、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、アイルランド RTEナショナル交響楽団などを含む多数のオーケストラと共演。
https://www.nikolaykhozyainov.com/


ロン・イェディディア:ピアノソナタ第5番
ロン・イェディディアの数多くのピアノ作品の中でも最長の作品かつ彼の作曲人生の中で記念碑的存在となっているピアノソナタ第5番。この作品は1991年から1992年にかけて作曲され、マルク=アンドレ・アムランに献呈されました。単一楽章ではありますが、全5部構成で演奏には1時間ほど要します。2018年、約26年の時を経てピアニストの江崎昭汰によって日本で世界初演が行われ大きな話題となりました。
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ロン・イェディディア(Ronn Yedidia)
彼の作品は過去20年間に国際的な注目を浴びるようになりました。彼の作品は世界の主要なコンサートホールで取り上げられている他、映画、ラジオ、テレビ番組にも登場し、彼の作曲家兼ピアニストとしての地位を確かなものにしています。彼は現在まで、独奏から大編成オーケストラ作品、宗教音楽やフォークソングなども生み出しています。2007年5月にはオーケストラ作品「ステップ・イン・ザ・ワンダーランド」の世界初演がイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団によって行われました。主な作曲委嘱元には サン・アントニオ国際ピアノコンクール(ラプソディー、2006年)、 シアトル室内楽協会(ピアノとクラリネットとチェロのためのトリオ、2007年)、 ニューヨークのZamir Choraleがあり、2009年には、マンハッタンのBaruch Performing Arts Centerで開催されたThe Concert Meister Seriesのレジデントコンポーザーを務め、数々の作品がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団等の著名なオーケストラによって演奏されました。1994年にはワンダ・トスカニーニ=ホロヴィッツの依頼によりウラディミール・ホロヴィッツの未出版ピアノ作品の校訂と録音にも携わっています。


トマシュ・カミェニャク:忘却のワルツ 作品69 & 舟歌 作品56
ヨーロッパを中心に活躍するコンポーザー=ピアニストのトマシュ・カミェニャクによるピアノ作品が初の出版です。「忘却のワルツ 作品69」はカミェニャクが最も敬愛する作曲家であるフランツ・リストの影響を受け作曲されました。全5曲で構成され、悲しげなワルツが並びます。なお、演奏の難易度は中級者から上級者向けとなっています。「舟歌 作品56」は、ショパンの代表曲である「舟歌」の”影”の部分を描いた作品であり、薄暗く憂鬱な雰囲気が立ち込めます。
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カミェニャクの解説より
忘却のワルツ 作品69
ワルツの構想は、ガブリエラ・ツェンツェロルツ・ユンギエヴィッチ(Gabriela Szendzelorz-Jungiewicz)から得たものです。2004年、私がまだ学生だった頃、彼女からワルツを作曲してほしいと頼まれ、それがきっかけで『3つのワルツ』作品33を作曲し、彼女は今も弾き続けています。 2018年に、《忘却のワルツ(Die Walzer der Vergessenheit)》 作品69を完成させました。原案を与えてくれたガブリエラに感謝したいと思っています。これらのワルツはリストの忘れられたワルツ(Valses Oubliées)に倣ったものです。 これらは別々に存在し、必ずしも一連の作品として演奏される必要はありません。

舟唄 作品56
2013年10月、私はヴェネチアにいました。舟歌のインスピレーションを得るのにふさわしい場所でしたが、《舟歌》 作品56は故郷のTarnowskie Góry(タルノフスキェ・グルィ)で作曲しました。ピアニストは舟歌といえば、まずショパンを連想するのではないでしょうか。しかし、ヴェネチアはショパンが魅力豊かに描写したような、美しい観光都市であるとは限りません。時には霧が立ちこめ、すべてが薄暗く不明瞭になることがあるので、それを舟歌で伝えられたらと思っています。

トマシュ・カミェニャク(Tomasz Kamieniak)
トマシュ・カミェニャクはピアニストであり作曲家である。フランツ・リストやシャルル=ヴァランタン・アルカンの曲はもとより、知名度の低い作曲家の曲も好んで演奏している。 カトヴィツェのポーランド国立カロル・シマノフスキ音楽アカデミーのピアノ科にて、ヨアンナ・ドマンスカに師事。卒業後は、ドイツのフランツ・リスト・ヴァイマル音楽大学のロルフ=ディーター・アレンスに師事した他、コンスタンチン・シェルバコフ(マスタークラス)、ズビグニエフ・ラウボ教授(カトヴィツェの大学院)、ロンドンのレスリー・ハワードの下でさらに演奏技術に磨きをかけた。 第4回ワイマール国際フランツ・リストコンクールにて特別賞受賞。 出版社Acte Préalable主催の第4回録音プロジェクト「忘れられたポーランドの音楽」コンクールでグランプリを受賞し、ヨゼフ・ヴィニアフスキのピアノ作品を録音。カトヴィツェの政府機関であるマーシャル・オフィスとバイロイトのワーグナー協会から奨学金を授与されたほか、タルノフスキー・ゴーリー市長から文化的功績を称えて賞を授与されている。


ヴァーツラフ・クラフリーク:ジャズの様式による練習曲 – ピアノのために 第2巻(第6番-第10番)
チェコ共和国のピアニストであるヴァーツラフ・クラフリーク作曲による《ジャズの様式による練習曲》(全15曲・全3巻予定)の第2巻の楽譜が第1巻に続いて出版されます。クラフリークは幼い頃から父の影響でジャズやクラシック音楽を親しみ、プラハ音楽院ではヨゼフ・スークのピアノ作品の演奏で知られるパヴェル・シュチェパーンのもとでピアノを学びました。彼は「自分自身を作曲家と意識したことない」と語っており、今回出版される曲集《ジャズの様式による練習曲》は、時間の経過と共に決まった形をとるようになったクラフリークの即興演奏が投影されたものであり、この”即興演奏”には、ジャズやクラシック音楽の語法に基づいたものです。1曲あたり3~4分と演奏会のアンコールピース、発表会で披露する曲としても大変ピッタリです。
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ヴァーツラフ・クラフリーク(Václav Krahulík)
1966年、チェコスロバキアのウースチー・ナド・ラベム(現在のチェコ共和国)に生まれる。テプリツェ音楽院、そしてプラハ音楽院のパヴェル・シュチェパーンのクラスでピアノを学ぶ。若い頃は、ピアノのヴィルトゥオーゾとして、自作の«ソナタ 嬰ヘ調»の演奏で現代作品の最優秀解釈賞などいくつかの賞を受賞している。ソリスト、室内楽奏者、伴奏者として演奏活動を行っている。ソロCDを数枚録音しているほか、数多くのレコーディングに参加している。また、ウースチー・ナド・ラベムのヤン・エヴァンゲリスタ・プルキニェ大学などで音楽教師も務めている。フランツ・リストの後期作品や、音楽的ロマン主義からモダニズムへの転換に関する著作など、音楽学的な著作もある。クラシック音楽のピアニストのキャリアとしてだけでなく、時にはポピュラー音楽や音楽劇のプロジェクトにも参画し、ホルン奏者で指揮者であるラデク・バボラークがアストル・ピアソラの作品に捧げたオルケストリーナ・アンサンブルのCD2枚に参加している。


石月一匡:チェロとギターのための編曲集
昭和のギター界を牽引した名ギタリスト石月一匡による『チェロとギターのための編曲集』が再版。バロック時代から古典派時代の数々の名曲が1冊に収まっており、ギター奏者及びチェロ奏者にとって重要なレパートリーとなること間違いないでしょう。
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収録楽曲
F. クープラン:5つの演奏会用小品
A. ヴィヴァルディ:ソナタ ホ短調 作品14-1 RV40
G. Ph. テレマン:ソナタ ホ短調 TWV 41:e5
G. B. サマルティーニ:ソナタ ト短調
F. J. ハイドン:アダージョ(チェロ協奏曲 ニ長調 第2番 Hob.VIIb:2)
L. ボッケリーニ :ソナタ イ長調 G. 4
J.-B. ブレヴァル:ソナタ ト長調 作品12-5
W. A. モーツァルト:ソナタ 変ロ長調 K 292/196c
L. V. ベートーヴェン:アンダンテと変奏曲 ニ長調 WoO 44b
F. メンデルスゾーン=バルトルディ:無言歌 作品109
C. サン=サーンス:白鳥(「動物の謝肉祭」より)
P. チャイコフスキー:感傷的なワルツ 作品51-6
G. フォーレ:夢のあとに 作品7-1

序文より
チェロの独奏は普通はピアノまたはチェンバロを伴うが、ギターとの二重奏に適した作品も少なくない。バロック時代及び古典派時代のものがそれである。ギターの音域とチェロの音域が、ほぼ同じであること、してピアノやチェンバロと異なり、ギターにはスラーやポルタメントという弦楽器特有の奏法があること、音色が類似していることなどから、音量のバランスさえ考慮して演奏すれば好ましい二重奏になり得る。曲集中、テレマン、モーツァルト、ベートーヴェンの作品は各々ヴィオラ・ダ・ガンバ、ファゴット、マンドリンからチェロに移したものであり、ギターのパートは、チェンバロ、ピアノまたはチェロから編曲したものである。

石月一匡(いしづき かずまさ)
1933年、長野市生まれ。ギタリスト、ガンビスト、作曲家、編曲家。16歳より、ギターと作曲を独学で始める。1969年、オスカー・ギリアによるマスタークラスのコンクール最優秀賞を受賞。ギター演奏を溝渕浩五郎、阿部保夫、オスカー・ギリアに師事。生涯を通じて、クラシック音楽におけるギターの地位向上に尽力した。ギターはヘルマン・ハウザー3世を愛用。
演奏活動では、ソロ以外にもギター室内楽を重点的に演奏し、数多くの作品を初演した。それらには、ギター五重奏曲(M. カステルヌーヴォ=テデスコ作曲)、ギターオブリガード付き交響曲(ボッケリーニ作曲)、ギター協奏曲(ボッケリーニ作曲、カサド編曲)などが含まれる。
1961年に「ギター室内楽協会」を設立・主催、当時は世界的にもギターを用いた室内楽を演奏する楽団は珍しかった。1983年には、ロココ音楽・古典派音楽の演奏を中心とする合奏団「ボーテン・デル・カンマムジーク」を組織した。出版物は、自作・編曲以外にも「ギター室内楽選集」(全音楽譜出版社)を始めとした室内楽譜が数多く、他にも好評を博した「ジュリアーニ・ギター名曲選」(全音)などがある。

2022年10月の新刊情報(ニコライ・ホジャイノフ、グリンカ/佐伯涼真、平野義久、山田耕筰)

2022年10月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。また、近日中にPDFの予約販売も開始予定です。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年10月25日です。

ジャコモ・プッチーニ – ニコライ・ホジャイノフ:蝶々夫人 ハミング・コーラス(ピアノ独奏のために)
プッチーニの代表作のひとつである歌劇「蝶々夫人」から「ハミング・コーラス」が世界中で活躍するピアニスト、ニコライ・ホジャイノフによってピアノ独奏用作品として生まれ変わりました。この作品はオーケストラをバックにコーラスがハミングで歌う半ば合唱曲のような作品です。ホジャイノフは、トレモロを用いることでハミングの持つ独特で魅惑的な雰囲気を表現しました。なお、この編曲は日本でのピアノリサイタルでも演奏され、人気を博しています。

Photo: Marie Staggat

ニコライ・ホジャイノフ(Nikolay Khozyainov)
ピアニスト、ニコライ・ホジャイノフの音楽性と恐るべきテクニックは、全世界の聴衆を魅了している。これまで、ニューヨークのカーネギーホールやリンカーン・センター、ワシントンのケネディ・センター、ロンドンのウィグモアホール、パリのシャンゼリゼ劇場やサル・ガヴォー、モスクワのチャイコフスキーホール、東京のサントリーホール、シドニー・オペラハウス、チューリッヒのトーンハレ、ローマのクイリナーレ宮殿、マドリード国立音楽堂、国連など、世界の主要なコンサートホールで演奏。リサイタルやコンチェルトで多くの会場を満席にしている。また多くの大統領や首相、文化界、政治界の要人から称賛を受けている。2018年1月の東京サントリーホール公演には、上皇明仁陛下、上皇后美智子陛下(当時の天皇皇后陛下)が臨席された。また 2022年には、スペインの王家から騎士の称号と勲章を授けられた。 ホジャイノフはこれまで、ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団、東京交響楽 団、シドニー交響楽団、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、チェコ・ナショナル交響楽団、ロシア国立交響楽団、ロシア・フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団、アイルランド RTEナショナル交響楽団などを含む多数のオーケストラと共演。
https://www.nikolaykhozyainov.com/


グリンカ/佐伯涼真:序曲 歌劇『ルスランとリュドミラ』(演奏会用ピアノ独奏編曲)
ムラヴィンスキーの指揮(録音)で広く知られているグリンカ作曲の歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲。意外にもこの作品の演奏会向けのピアノ独奏編曲版は存在するようで存在していませんでしたが今回、ピアニストの佐伯涼真が原曲に敬意を払いつつ非常にピアニスティックな作品に仕立て上げました。演奏にはかなりの技術が要求されますが、”演奏会用編曲”と謳っただけに華やかで特にアンコールピースには持って来いの作品です。

佐伯 涼真(さえき りょうま)
2000年さいたま市生まれ。7歳よりピアノを始める。第32回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門高校生の部第1位。第3回K Pianoコンクール高校生部門第1位。2019年、桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻に入学。第26回フッペル鳥栖ピアノコンクール2020フッペル部門第2位。2021年桐朋ピアノコンペティションファイナリスト。2022年桐朋ピアノコンチェルト・コンペティション第1位。これまでにピアノを山上有紀子、武田美和子、中井恒仁、チェンバロを有田千代子、室内楽を村上寿昭、落合美和子、作曲を森山智宏の各氏に師事。


平野義久:Pickled Plum Rag & Rag Simulation(ピアノのために)
オーケストラ作品から劇伴作品まで幅広い作品を生み出している作曲家・平野義久のピアノ作品の楽譜が出版です。平野によれば「タラコ・スパゲティ」ないしは「抹茶アイス」を目指したという、通常のラグタイムとは一味違う彼ならではの強烈な作品です。

10代の頃ジャズに傾倒していたこともあり、ラグタイムは私にとって親しみある音楽ジャンルだ。 実際、スコット・ジョプリンの呑気さからアート・テイタムの桁違いな猛者っぷりまで、私は折に触れてこのユニークな音楽に魅了され、心踊らせてきた。劇伴の仕事においても、ジョプリンのいくつかの作品を様々な楽器編成でアレンジしたサウンドトラックを制作したことがあったし、もちろんオリジナルだって何度となく書いている。 思うにラグタイムとは、純然たる楽しみであり、眉間にシワよりも口角を上げることに寄与する、ハッピーかつアンチエイジングな音楽である。
だが、純音楽作品としてのラグを書いたのは、この2曲が初めてだ。かなりキテレツで冗談音楽めいたセクションも含まれるが、それは僕にとっての、そして願わくば聴衆にとっての「口角の上がる」純粋な楽しさとして響いてくれればと思う。言わずもがな、演奏家にとっては、「眉間にシワ」を深々と刻まずにはいられないエイジング促進必至のフレーズ群となる。ごめん。
平野義久による楽曲解説より

平野義久(ひらの よしひさ)
1971年12月7日和歌山県新宮市生まれ。5歳よりヴァイオリンを始める。バロック音楽に魅了され、小学生の頃から独学で作曲を始める。高校時代にジャズと邂逅、また、ジョン・ゾーンへの心酔を契機に現代音楽に心惹かれるようになる。一方で、ショスタコーヴィチの交響曲に強い感銘を受け、本格的な作曲の修行を決意する。高校卒業後紆余曲折を経て渡米、イーストマン音楽院で作曲をクリストファー・ラウス、ジョセフ・シュワントナー両氏に師事する。バタイユ、クロソウスキー、マンディアルグ、ジュネら20世紀フランスの作家・思想家に傾倒し、授業もそっちのけで多くの時間を読書、そして作曲に費やす。紆余曲折を経て同院中退、その後帰国。さらなる紆余曲折を経て2001年に劇伴作曲家としてデビュー。以来今日に至るまで数多くのサウンドトラックを世に送り出している。文学・哲学から落語・モードファッション、さらには動物・昆虫・素粒子までこよなく愛する好奇心旺盛な作曲家。ただし幼少時のトラウマ体験により芋虫恐怖症。


山田耕筰 ピアノ曲拾遺 全3巻

クラシック専門レーベルのVacances Musicalesとの共同プロジェクトにより「赤とんぼ」や「この道」などの歌曲でも広く知られた国民的作曲家・山田耕筰の埋もれた傑作ピアノ作品の楽譜を出版します。解説は音楽学者の高久暁、校訂・校閲はピアニストの杉浦菜々子によるものです。拾遺(しゅうい)とは、余ったり見落とされたものを集めたもののこと。存在は知られていたものの、これまでなぜか出版されたことのなかった作品や、未完作品の補筆完成版を収録しています。

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第一集《古典様式による初期作品》
ガヴォット、ロンド、変奏曲といった未だかつて出版されたことのないベルリン時代の作品群の出版、及び、かつて旧第一法規からその一部が出版されたもののその後絶版状態となっているソナタ、シャコンヌといった古典様式の作品群の復刻。これらの作品は日本クラシック音楽黎明期の貴重な記録であり、日本人が最初にヨーロッパでクラシック音楽を本格的に学んだ際の瑞々しい喜びが反映された佳曲です。

収録曲目:メヌエット 変ホ長調 / 2つのソナチネ / ソナタ ホ長調 / アレグロ・モデラート / ソナタ ト長調 / ガヴォット ト長調 / マーチ ト長調 / 秋の日のメロディ / 無言歌 / 変奏曲 ト短調 / 変奏曲 イ長調 / 主題と変奏曲 ハ長調 / シャコンヌ ハ短調 / シャコンヌ ハ長調 / オリムピック行進曲 輝く朝日

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第二集《山田耕筰歌曲によるピアノ編曲》(平野真奈、永井みなみ、青木聡汰による)
山田耕筰の名を不朽にしているのは何といっても「赤とんぼ」や「この道」といった日本人なら誰でも知る名曲歌曲ですが、「からたちの花」については山田自身の編曲が存在し、現在でも演奏されています。その山田の例に倣い、若手作曲家の青木聡汰 、平野真奈、永井みなみが山田の名曲の数々をピアノ作品として生まれ変わらせました。

収録作品:山田耕筰:からたちの花 / 平野真奈編曲:赤とんぼ、あわて床屋、ペチカ / 永井みなみ編曲:この道 / 青木聡汰編曲:鐘が鳴ります、城ヶ島の雨、砂山、六騎

山田耕筰:ピアノ曲拾遺 第三集《未完成作品の補筆完成》
山田が遂には完成させることがなかった「ソナタ・エクスタジエ」「アンプロンプチュ」「神戸の想い出」「セレナード」といった大作を、気鋭の作曲家・即興演奏化の榎 政則が補筆完成。いずれも現在知られている山田のピアノ作品にはない大規模な作品であり、スクリャービンやショパンの影響を受けつつ山田独自のピアニズムに昇華された日本ピアノ音楽黎明期の精華と言える充実した内容です。

収録曲目:アンプロンプチュ* / ソナタ・エクスタジエ* / セレナード* / わが神戸時代の思い出* / 《付録》源氏楽帖 (い)「桐壺」の巻より (ろ)「若紫」の巻より (は)「末摘花」の巻より (に)「紅葉の賀」の巻より (ほ)「花の宴」の巻より (へ)「花散里」の巻より (と)「須磨」の巻より

髙久 暁(たかく さとる)
音楽学・音楽評論。日本大学芸術学部教授(芸術学[音楽学]・美学)。主な研究分野として20世紀の亡命ロシア人音楽家の生涯と創作(ニコライ・メトネル、アレクサンドル・チェレプニンほか)、アジア諸国のピアノ文化史、日本人及び台湾人作曲家の創作史(篠原眞、郭芝苑、許常惠ほか)、近現代ギリシャを中心とするバルカン半島諸国の芸術音楽史など。共著・論文・翻訳等多数。校訂・編集楽譜として世界初出版の初期稿を含むニコライ・メトネル《忘れられた調べ 第1集》作品38(全音楽譜出版社)、マルク=アンドレ・アムラン《コン・インティミッシモ・センティメント》(音楽之友社/Edition Peters)、ワルター・ギーゼキング《シャコンヌ》(ミューズ・プレス)ほか。

杉浦 菜々子(すぎうら ななこ)
ピアニスト。武蔵野音楽大学大学院博士前期課程修了。 日本人作品の演奏をライフワークとし、出版における調査や資料収集、校正、校閲に当たっている。近年は委嘱や新作の初演にも積極的に取り組んでいる。2016年よりピティナ公開録音コンサートで「日本人作品の夕べ」シリーズとし、数多くの日本人作品を演奏、録音している。ピティナピアノ曲辞典には演奏動画多数と曲解説が登録されている。 2018年11月に1stアルバム「山田耕筰ピアノ作品集」をリリース(『レコード芸術』誌【特選盤】)。2021年11月2ndアルバム「休暇の日々~フランスバロックからセヴラック、タイユフェールまで」を、2022年3月3rdアルバム「J.S.バッハ&S.L.ヴァイス リュート作品の鍵盤用トランスクリプション集」(『レコード芸術』誌【準特選盤】)を、2022年6月「近藤浩平&山田耕筰ピアノ作品集『麦草峠のギター』」を、2022年9月「知られざる山田耕筰のピアノ音楽」(『レコード芸術』誌【準特選盤】)をリリース。


2022年9月の新刊情報(ニコラス・ナモラーゼ、ロン・イェディディア)

2022年9月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。また、近日中にPDFの予約販売も開始予定です。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年9月25日です。

ラフマニノフ/ニコラス・ナモラーゼ:アダージョ(交響曲第2番 作品27より)ピアノ独奏版
世界で活躍するコンポーザー=ピアニストであるニコラス・ナモラーゼの初の編曲作品が遂に出版です。ラフマニノフのオーケストラ作品で最も有名な曲のひとつ、アダージョ(交響曲第2番 作品27より)は、作曲から約100年経ても多くの人々を魅了し続けています。これまで数多くのピアノ独奏編曲が生み出されてきましたが、作曲家の顔も持つナモラーゼによってピアノ曲として完成度の高い編曲に仕上がりました。原曲のハーモニーを尊重しつつ、オーケストラのもつ重厚感をピアノで表現することに見事成功し、作品の後半ではピアニスティックなパッセージも登場し演奏者はもちろん、聴衆も飽きさせません。演奏には高度な技術が求められますが、非常に演奏効果の高い編曲です。

冒頭部分
後半部分

Pianists will delight in this exciting transcription by Nicolas Namoradze of a symphonic masterpiece.

—— Norma Fisher (Pianist)

ニコラス・ナモラーゼ(Nicolas Namoradze)
コンポーザー=ピアニストのニコラス・ナモラーゼは、クラシック音楽最高峰のコンクールの1つでもあるカナダのカルガリーで開催されたホーネンス国際ピアノコンペティションで2018年に優勝し、国際的な注目を浴びるようになりました。批評家からは「輝かしく…繊細で色彩豊かである」(ニューヨーク・タイムズ)、「実に豪華である」(ウォール・ストリート・ジャーナル)などと高い評価を受けている他、WQXRの「20 for 20:Artists to Watch/クラシック音楽を再定義する今注目すべきアーティスト」の1人として選ばれました。作曲家としてはケン=デイヴィッド・マズア、テッサ・ラーク、メトロポリス・アンサンブル、モメンタ、ヴェローナ、バルカーダ四重奏団などの主要アーティストやアンサンブルによって作品が演奏されています。また、チェルシー音楽祭、ホーネンスフェスティバル、サンタフェなどの音楽祭からの委嘱で昨比を書いています。他にも、ファビエンヌ・ヴェルディエ監督の映像作品「Walking painting」やフランスのエクサン・プロヴァンス音楽祭に関連して制作されたショートフィルム「Nuit d’opera a Aix」にも参加しています。


ロン・イェディディア:12の大練習曲 第1集 第2巻(第5番-第8番)
2021年11月から出版が始まったロン・イェディディアによるピアノ独奏のための作品、その名も「大練習曲(Grand Etudes)」。全24曲作曲され、完結までに約30年近くを要しました。これらの作品の一部は、イェディディア自身によって演奏・録音され、多くのピアノファンの中を魅了しています。今回は、1994年と1995年に作曲された第5番から第8番までの作品を出版します。この作品が書かれた時期は、まるで異世界の源からミューズが降りてきたかのように、「宇宙的なインスピレーション」が高まった時期であったと作曲者は語っています。

■収録楽曲
大練習曲第5番 / 大練習曲第6番「日の出」/ 大練習曲第7番「洋上の飛行」/ 大練習曲第8番「夜の砂漠の呼び声」

ロン・イェディディア(Ronn Yedidia)
彼の作品は過去20年間に国際的な注目を浴びるようになりました。作品は世界の主要なコンサートホールで取り上げられている他、映画、ラジオ、テレビ番組にも登場し、彼の作曲家兼ピアニストとしての地位を確かなものにしています。1960年、イスラエルのテルアビブに生まれ、アルフレッド・コルトーの弟子であったプニーナ・ザルツマンのもとで幼い頃からピアノを学びました。
現在までにイェディディアの作品は、EMIやナクソス、ソニーBMGなどの大手レーベルにも収録されました。アメリカのレーベル・Altarusによってリリースされた自作自演アルバム『Yedidia Plays Yedidia』は世界中の作曲家やピアニストから注目を浴び話題となりました。また、ニューヨーク・ピアノ・アカデミーの創設者でもあり、後進の育成に努めています。


これまでにミューズ・プレスから出版されたロン・イェディディア&ニコラス・ナモラーゼのピアノ作品

2022年8月の新刊情報(ダニエル・クラーメル、ロベルト・ピアーナ、アントニオ・ポンパ=バルディ、ユーニー・ハン、ヴァーツラフ・クラフリーク)

2022年8月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。
なお、これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年8月25日です。

ダニエル・クラーメル:6つの演奏会用練習曲 & クレド
ウクライナ出身のジャズピアニストであるダニエル・クラ―メルのピアノ作品がミューズプレスから出版です。今回出版する《6つの演奏会用練習曲》は1987年、ロシア(旧ソ連)の出版社からニコライ・カプースチンの《8つの演奏会用練習曲》と合本で9930部ほど発行されたにも関わらず大変入手困難な楽譜でありました。しかし、今回の再出版にあたって、クラ―メルによって運指の追加、テンポの見直しなど楽譜が改訂されることになりました。また、演奏会用練習曲と併せて、これまでは第三者による非公式の採譜版しか出回っていなかった彼の代表作である《クレド》のロングバージョンもクラーメルによって監修され、この楽譜に正式版として収録されました。


V.クラフリーク:ジャズの様式による練習曲 – ピアノのために 第1巻(第1番-第5番)
チェコ共和国のピアニストであるヴァーツラフ・クラフリーク作曲による《ジャズの様式による練習曲》(全15曲・全3巻予定)の楽譜が遂に刊行開始します。クラフリークは幼い頃から父の影響でジャズやクラシック音楽を親しみ、プラハ音楽院ではヨゼフ・スークのピアノ作品の演奏で知られるパヴェル・シュチェパーンのもとでピアノを学びました。彼は「自分自身を作曲家と意識したことない」と語っており、今回出版される《ジャズの様式による練習曲》は、時間の経過と共に決まった形をとるようになったクラフリークの即興演奏が投影されたものであり、この”即興演奏”は、ジャズやクラシック音楽の語法に基づいたものです。1曲あたり3~4分と演奏会のアンコールピース、発表会で披露する曲としても大変ピッタリです。


ラフマニノフ/ユーニー・ハン:アンダンデ・カンタービレ《パガニーニの主題による狂詩曲》より(ピアノ独奏版)
数々のピアノコンクールに入賞し、現在は香港バプティスト大学ピアノ科助教授を務めるユーニー・ハン。彼女がセルゲイ・ラフマニノフ作曲《パガニーニの主題による狂詩曲》の最も有名な第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」をピアノ独奏用に編曲をしました。この編曲は、2020年にリリースしたピアノアルバム「Hollywood Romance」(Universal Classics)に収録されています。この「アンダンテ・カンタービレ」は、1980年公開の恋愛映画『ある日どこかで』の愛のテーマとして使われているほか、CMなどでもよく使用されていることから、ラフマニノフの書いたメロディの中でももっとも有名なものでしょう。


レスピーギ/アントニオ・ポンパ=バルディ:ヴァイオリン・ソナタ(ピアノ独奏版)
「ローマ三部作」で知られるイタリアの作曲家であるオットリーノ・レスピーギの作品の中でも傑作と言われれている《ヴァイオリンソナタ》がアントニオ・ポンパ=バルディの手によって“ピアノソナタ”として生まれ変わりました。この編曲はコロナウィルスが大流行した時期に数ヵ月ほどで書き上げられ、ポンパ=バルディの自奏動画がYouTubeに投稿されました。演奏動画は大好評で楽譜の出版を望む声が多くありました。曲中では、より効果的な音響空間を作り出すためにソステヌート・ペダルを多用する必要があり、必然的に難易度の高い作品に仕上がっています。なお、演奏動画ではポンパ=バルディの高度なペダルテクニックを垣間見ることができます。


ロベルト・ピアーナ:プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲(ピアノのために)
イタリアを代表するコンポーザー=ピアニストであるロベルト・ピアーナはピアノのためのオペラ・パラフレーズ(幻想曲)を書く行為を「楽曲を洗練する上での研究所」と語り、この創作行為を通して、ピアノの可能性を追求しました。今回、ピアーナによって作られた「プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲」は、演奏に約30分かかり、演奏には技術的にも音楽的にも大変な労力を要します。曲中、私たちが一度はどこかで聞いたことがある「私の名前はミミ(Sì, mi chiamano Mimì)」や「私が街を歩けば(Quando men vo)」、 「年老いた外套よ、きいておくれ(Vecchia zimarra, senti)」などのアリアも登場し、どこか親しみを感じることでしょう。

シャルル・ケクラン~フランス音楽黄金期の知られざる巨匠(5)

 パリ音楽院のフォーレ・クラスの仲間たちについてはすでに述べた。若き才能のるつぼの中で切磋琢磨する日々が、作曲家としての形成期にあったケクランに与えた影響は計り知れない。彼がフォーレの門下生となってから2年後の1898年、新たな仲間がこのクラスに加わった。若者の名はモーリス・ラヴェルであった。

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