2022年9月の新刊情報(ニコラス・ナモラーゼ、ロン・イェディディア)

2022年9月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。また、近日中にPDFの予約販売も開始予定です。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年9月25日です。

ラフマニノフ/ニコラス・ナモラーゼ:アダージョ(交響曲第2番 作品27より)ピアノ独奏版
世界で活躍するコンポーザー=ピアニストであるニコラス・ナモラーゼの初の編曲作品が遂に出版です。ラフマニノフのオーケストラ作品で最も有名な曲のひとつ、アダージョ(交響曲第2番 作品27より)は、作曲から約100年経ても多くの人々を魅了し続けています。これまで数多くのピアノ独奏編曲が生み出されてきましたが、作曲家の顔も持つナモラーゼによってピアノ曲として完成度の高い編曲に仕上がりました。原曲のハーモニーを尊重しつつ、オーケストラのもつ重厚感をピアノで表現することに見事成功し、作品の後半ではピアニスティックなパッセージも登場し演奏者はもちろん、聴衆も飽きさせません。演奏には高度な技術が求められますが、非常に演奏効果の高い編曲です。

冒頭部分
後半部分

Pianists will delight in this exciting transcription by Nicolas Namoradze of a symphonic masterpiece.

—— Norma Fisher (Pianist)

ニコラス・ナモラーゼ(Nicolas Namoradze)
コンポーザー=ピアニストのニコラス・ナモラーゼは、クラシック音楽最高峰のコンクールの1つでもあるカナダのカルガリーで開催されたホーネンス国際ピアノコンペティションで2018年に優勝し、国際的な注目を浴びるようになりました。批評家からは「輝かしく…繊細で色彩豊かである」(ニューヨーク・タイムズ)、「実に豪華である」(ウォール・ストリート・ジャーナル)などと高い評価を受けている他、WQXRの「20 for 20:Artists to Watch/クラシック音楽を再定義する今注目すべきアーティスト」の1人として選ばれました。作曲家としてはケン=デイヴィッド・マズア、テッサ・ラーク、メトロポリス・アンサンブル、モメンタ、ヴェローナ、バルカーダ四重奏団などの主要アーティストやアンサンブルによって作品が演奏されています。また、チェルシー音楽祭、ホーネンスフェスティバル、サンタフェなどの音楽祭からの委嘱で昨比を書いています。他にも、ファビエンヌ・ヴェルディエ監督の映像作品「Walking painting」やフランスのエクサン・プロヴァンス音楽祭に関連して制作されたショートフィルム「Nuit d’opera a Aix」にも参加しています。


ロン・イェディディア:12の大練習曲 第1集 第2巻(第5番-第8番)
2021年11月から出版が始まったロン・イェディディアによるピアノ独奏のための作品、その名も「大練習曲(Grand Etudes)」。全24曲作曲され、完結までに約30年近くを要しました。これらの作品の一部は、イェディディア自身によって演奏・録音され、多くのピアノファンの中を魅了しています。今回は、1994年と1995年に作曲された第5番から第8番までの作品を出版します。この作品が書かれた時期は、まるで異世界の源からミューズが降りてきたかのように、「宇宙的なインスピレーション」が高まった時期であったと作曲者は語っています。

■収録楽曲
大練習曲第5番 / 大練習曲第6番「日の出」/ 大練習曲第7番「洋上の飛行」/ 大練習曲第8番「夜の砂漠の呼び声」

ロン・イェディディア(Ronn Yedidia)
彼の作品は過去20年間に国際的な注目を浴びるようになりました。作品は世界の主要なコンサートホールで取り上げられている他、映画、ラジオ、テレビ番組にも登場し、彼の作曲家兼ピアニストとしての地位を確かなものにしています。1960年、イスラエルのテルアビブに生まれ、アルフレッド・コルトーの弟子であったプニーナ・ザルツマンのもとで幼い頃からピアノを学びました。
現在までにイェディディアの作品は、EMIやナクソス、ソニーBMGなどの大手レーベルにも収録されました。アメリカのレーベル・Altarusによってリリースされた自作自演アルバム『Yedidia Plays Yedidia』は世界中の作曲家やピアニストから注目を浴び話題となりました。また、ニューヨーク・ピアノ・アカデミーの創設者でもあり、後進の育成に努めています。


これまでにミューズ・プレスから出版されたロン・イェディディア&ニコラス・ナモラーゼのピアノ作品

2022年8月の新刊情報(ダニエル・クラーメル、ロベルト・ピアーナ、アントニオ・ポンパ=バルディ、ユーニー・ハン、ヴァーツラフ・クラフリーク)

2022年8月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。
なお、これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年8月25日です。

ダニエル・クラーメル:6つの演奏会用練習曲 & クレド
ウクライナ出身のジャズピアニストであるダニエル・クラ―メルのピアノ作品がミューズプレスから出版です。今回出版する《6つの演奏会用練習曲》は1987年、ロシア(旧ソ連)の出版社からニコライ・カプースチンの《8つの演奏会用練習曲》と合本で9930部ほど発行されたにも関わらず大変入手困難な楽譜でありました。しかし、今回の再出版にあたって、クラ―メルによって運指の追加、テンポの見直しなど楽譜が改訂されることになりました。また、演奏会用練習曲と併せて、これまでは第三者による非公式の採譜版しか出回っていなかった彼の代表作である《クレド》のロングバージョンもクラーメルによって監修され、この楽譜に正式版として収録されました。


V.クラフリーク:ジャズの様式による練習曲 – ピアノのために 第1巻(第1番-第5番)
チェコ共和国のピアニストであるヴァーツラフ・クラフリーク作曲による《ジャズの様式による練習曲》(全15曲・全3巻予定)の楽譜が遂に刊行開始します。クラフリークは幼い頃から父の影響でジャズやクラシック音楽を親しみ、プラハ音楽院ではヨゼフ・スークのピアノ作品の演奏で知られるパヴェル・シュチェパーンのもとでピアノを学びました。彼は「自分自身を作曲家と意識したことない」と語っており、今回出版される《ジャズの様式による練習曲》は、時間の経過と共に決まった形をとるようになったクラフリークの即興演奏が投影されたものであり、この”即興演奏”は、ジャズやクラシック音楽の語法に基づいたものです。1曲あたり3~4分と演奏会のアンコールピース、発表会で披露する曲としても大変ピッタリです。


ラフマニノフ/ユーニー・ハン:アンダンデ・カンタービレ《パガニーニの主題による狂詩曲》より(ピアノ独奏版)
数々のピアノコンクールに入賞し、現在は香港バプティスト大学ピアノ科助教授を務めるユーニー・ハン。彼女がセルゲイ・ラフマニノフ作曲《パガニーニの主題による狂詩曲》の最も有名な第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」をピアノ独奏用に編曲をしました。この編曲は、2020年にリリースしたピアノアルバム「Hollywood Romance」(Universal Classics)に収録されています。この「アンダンテ・カンタービレ」は、1980年公開の恋愛映画『ある日どこかで』の愛のテーマとして使われているほか、CMなどでもよく使用されていることから、ラフマニノフの書いたメロディの中でももっとも有名なものでしょう。


レスピーギ/アントニオ・ポンパ=バルディ:ヴァイオリン・ソナタ(ピアノ独奏版)
「ローマ三部作」で知られるイタリアの作曲家であるオットリーノ・レスピーギの作品の中でも傑作と言われれている《ヴァイオリンソナタ》がアントニオ・ポンパ=バルディの手によって“ピアノソナタ”として生まれ変わりました。この編曲はコロナウィルスが大流行した時期に数ヵ月ほどで書き上げられ、ポンパ=バルディの自奏動画がYouTubeに投稿されました。演奏動画は大好評で楽譜の出版を望む声が多くありました。曲中では、より効果的な音響空間を作り出すためにソステヌート・ペダルを多用する必要があり、必然的に難易度の高い作品に仕上がっています。なお、演奏動画ではポンパ=バルディの高度なペダルテクニックを垣間見ることができます。


ロベルト・ピアーナ:プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲(ピアノのために)
イタリアを代表するコンポーザー=ピアニストであるロベルト・ピアーナはピアノのためのオペラ・パラフレーズ(幻想曲)を書く行為を「楽曲を洗練する上での研究所」と語り、この創作行為を通して、ピアノの可能性を追求しました。今回、ピアーナによって作られた「プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲」は、演奏に約30分かかり、演奏には技術的にも音楽的にも大変な労力を要します。曲中、私たちが一度はどこかで聞いたことがある「私の名前はミミ(Sì, mi chiamano Mimì)」や「私が街を歩けば(Quando men vo)」、 「年老いた外套よ、きいておくれ(Vecchia zimarra, senti)」などのアリアも登場し、どこか親しみを感じることでしょう。

シャルル・ケクラン~フランス音楽黄金期の知られざる巨匠(5)

 パリ音楽院のフォーレ・クラスの仲間たちについてはすでに述べた。若き才能のるつぼの中で切磋琢磨する日々が、作曲家としての形成期にあったケクランに与えた影響は計り知れない。彼がフォーレの門下生となってから2年後の1898年、新たな仲間がこのクラスに加わった。若者の名はモーリス・ラヴェルであった。

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【新刊情報】山中惇史:翡翠の時 (2021) – ピアノソロ —

この度、作曲家・ピアニストとして活躍する山中惇史のピアノ作品「翡翠の時」を出版いたします。

「翡翠の時」の楽譜表紙

本作品は、2021年に開催されたピティナ・ピアノコンペティションの特級セミファイナルの課題曲として委嘱されたことにより誕生しました。コンクールという極限の状態にいる音楽への愛を携えた演奏者たちと作曲者が幼少期に出会った凛とした翡翠の姿が重なった奇跡的な作品です。こちらのページからご購入いただけます。

「翡翠の時」作品に寄せて
小学校からの帰り道、生茂る木々を分け入った先に小さなほとりがあり、枝の先に翡翠が。息を飲むように、そっと覗き見たエメラルドグリーンの美しさは今でも脳裏に鮮烈に焼き付いています。

コンクールという極限状態にさらされる場に音楽への愛を携え挑もうとする皆さんを思った時、何故かその翡翠の凛とした姿が頭によぎりました。この上なく純で、一瞬で過ぎ去る幻の時。

ファンタジーを持って演奏していただければ幸いです。

商品情報
作品名:「翡翠の時」(2021)
序文(英語・日本語):山中 惇史
ページ数:16ページ
ISBN978-4-90966-88-2
表紙イラスト:Rachel Toll
表紙デザイン&コンセプト:泉 美菜子

今泉響平による演奏

【お知らせ】
なお、こちらの「翡翠の時」は、作曲者である山中惇史によって下記の演奏会にて取り上げられます。
チケットをご希望の方は、①お名前 ②枚数 ③ご連絡先 を明記の上、以下のメールまでお問い合わせください。
山中惇史ピアノ・リサイタル実行委員会:atsushiyamanakapianorecital@gmail.com


山中惇史
東京藝術大学音楽学部作曲科を経て同大学音楽研究科修士課程作曲専攻修了。後に同大学器楽専攻ピアノ科卒業。第26回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門第1位受賞。器楽、室内楽、合唱など多数がヤマハミュージックメディア、カワイ出版などから出版されている。
またピアニストとしては2018年にリサイタル・デビュー。共演者としても絶大なる信頼を置かれ、国内外の著名なアーティストに指名を受け共演を重ねる。ピアニスト、作曲家、アレンジャーとして参加した各CDはレコード芸術誌にて特選盤、 準特選盤に選出されている。東京交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、群馬交響楽団など多数のオーケストラとの共演、作品が演奏されている。2020年にピアニスト・作曲家の高橋優介とのピアノデュオ『176』(アン・セット・シス)を結成。自らの編曲によりオーケストラ作品の演奏に挑み、第1弾として『レスピーギ/ローマ三部作』をメインに演奏会を開催、同時にカワイ出版より楽譜出版、ライブレコーディングもされた。
最新アルバム『ジョン・ウィリアムズ・ピアノコレクション』がエイベックス・クラシックスより2021年10月に発売。今シーズン(2021)では、ピティナ・ピアノコンペティション特級新曲課題曲、朗読音楽劇「シャーロックホームズ」(主演・山寺宏一、脚本/演出/構成・野坂実)の作曲を担当、セントラル愛知交響楽団定期公演に招かれリスト/ピアノ協奏曲第1番を演奏など、活動は多岐にわたる。東京藝術大学非常勤講師。

Twitter: @ginyamagin Instagram: @yamanaka.atsushi

山中惇史
photo ©Imura Shigeto

2022年5月の新刊情報(平野弦、山本純ノ介、レスリー・ハワード、ローガン・スケルトン、ゴドフスキー、カミェニャク、ブランシェ)

2022年5月の新刊情報をお届けします。


平野弦:ピアノ作品集
彼の名前をYouTubeで見かけたことがある方も多いかもしれません。恐らくは、人間離れした驚異的なテクニックで超難曲である一柳慧の「タイム・シークエンス」や「ピアノ・メディア」を演奏している姿をYouTubeでご覧になった方が多いでしょう。これまで、彼の自作曲である「前奏曲とフーガ」や平野弦による「弦楽のためのアダージョ」(作曲:バーバー)のピアノ独奏編曲は、楽譜出版を要望する声が多数上がっていました。今回それらの作品も含め、一部のピアノ愛好家で存在が囁かれていた平野弦によるオリジナルピアノ作品も数曲、そして平野弦による楽曲解説も加えピアノ作品集として登場します。

収録楽曲
練習曲 ヘ短調(第1稿)/ 練習曲 ヘ短調(第2稿) / 前奏曲とフーガ / フーガ ヘ短調 / 夜想曲「壊れた籠」- 左手のために / フーガ 変ホ短調 – 左手のために(或いは両手のために) / 「荒城の月」の主題によるフーガ / サミュエル・バーバー:弦楽のためのアダージョ(ピアノ独奏編曲:平野弦)


山本純ノ介:梅花月下の舞(二十五絃筝のために)
日本を代表する箏曲家の野坂操壽の委嘱によって作曲家の山本純ノ介は二十絃筝の魅力に憑りつかれ約1年半の歳月をかけ、2016年に「梅花月下の舞」を完成させました。この作品は、二十五絃筝による私小説のような交響詩的抒情組曲として生まれ、現代人としての感覚を活かした浪漫的でより抒情的な時間と空間に想いを馳せた作品にしたいという考えが根底にあります。

山本純ノ介の解説より
一曲目「蕾膨らむ」は厳しい寒さの中で新しい芽、命が「存(ある)」場所や意義、主張を感じさせる。その瞬間、喜びや不安が交錯し対峙しはじめる。鼓動その息吹。
二曲目「花見ゆる」は実際の花芯が花神によって何層にも織りなす花弁に変様、変貌する様。成長の喜び、期待であるが「待つこと」への試練、我慢が同時にある。最後の三曲目「散華」は多くの困難なパッセージ群を完奏し最後に短歌を吟じることで、新しい事象に到達したとする。散華は感謝、救い、希望に昇華した音楽に変貌する。吟唱後の結尾では第一曲目冒頭の音列を活かしたフレーズが変容され再現。続いて第三曲冒頭の律動による異なる音律が現れ、新たな息吹の存在を予見して曲は閉じる。

サン=サーンス/ゴドフスキー編曲:白鳥(ピアノ独奏版)
本作品は、ゴドフスキーの数多くの編曲作品の中でも最も演奏の機会に恵まれている編曲作品です。今回、出版にあたってアメリカ議会図書館に所蔵されている自筆譜の情報も取り入れています。新版となって登場です。解説は、日本を代表するゴドフスキーの研究家・演奏家でもある西村英士によるもので、サン=サーンスとゴドフスキーの関係にフォーカスした充実の解説となっています。

西村英士の解説より
...ゴドフスキーはフランス、トルヴィルの港で船を降り、リストの住むワイマールを目指した。しかし汽車が出発して間もなく、彼の目に飛び込んできたのは、何とリストの訃報を知らせる新聞記事だった。ちょうどこの直前、7月31日にリストは74歳でこの世を去ったのだった。あてを失ったゴドフスキーは途方に暮れたに違いない。しばらく彼はパリに滞在し、今後の身の振り方を考えた。フランス語を話せず、お金もなく、生活に苦労する中、アメリカへ戻ることも頭をよぎったが、結局、彼はヨーロッパに残って別の音楽家に師事することを模索した。リスト亡き後、ゴドフスキーが欧州最高の音楽家と考えたのはサン=サーンスだった。...

エミール=ロベール・ブランシェ:エチュード・ポリトナル 作品94
作曲家として、また登山家としても知られるスイス出身のエミール=ローベル・ブランシェの未出版ピアノ作品のひとつであった作品が初の出版となります。「エチュード・ポリトナル」というタイトルの通り”多調”の個性的な作品です。


エミール=ロベール・ブランシェ
スイス生まれのコンポーザー=ピアニスト。音楽の手ほどきをイグナツ・モシュレスの弟子でもあり、教会オルガニストでもあった父シャルル・ブランシェから受ける。また、ドイツに渡り、グスタフ・イェンセンとフリードリヒ・ヴィルヘルム・フランケ、フェルッチョ・ブゾーニの下で学んだ。ドイツから帰国後は、ローザンヌ音楽院でピアノ科の教授を務めるが、1908年以降は、教育活動、作曲活動、コンサート活動や登山に専心した。彼の作品は作品番号が付くものだけで100曲以上、その中で相当の数がピアノ独奏のために書かれている。


レスリー・ハワード:カタラーニのオペラ「ラ・ワリー」の回想 – ピアノのための演奏会用幻想曲
「もしもリストがカタラーニ作曲のオペラ《ラ・ワリー》に基づきパラフレーズを作曲していたなら?」そのような構想のもと、フランツ・リストの作品のスペシャリストであるレスリー・ハワードが幻想曲に仕立て上げました。「ラ・ワリー」の中のアリアである「Ebben’ ne andrô lontano(さようなら、故郷の家よ)」は、この幻想曲の大部分を占めます。ちなみに、このアリアは数年前に人気を博した映画「ディーバ」でも取り上げられたことにより非常に多くの方に知られることになりました。レスリー・ハワード自身の演奏によって英国の音楽レーベルであるHyperionから録音もリリースされています。


チャイコフスキー:ソナタ ヘ短調 第1番 – 遺作(校訂:補筆完成:レスリー・ハワード)
ロシアで出版されたチャイコフスキーのピアノ作品集の中に掲載されたピアノソナタ(作品集の中では”Allegro”と名付けられています)の断片をレスリー・ハワードが補筆・完成させました。このピアノソナタが作曲された経緯や作曲が途中で破棄された理由などは謎に包まれたままです。しかし、レスリー・ハワードは「このソナタは、《ピアノソナタ ハ短調 作品80》とも引けを取らない程の力強さを持った作品」と語っています。なお、ハワード自身の演奏によって英国の音楽レーベルであるHyperionから録音もリリースされています。

レスリー・ハワードの解説より
今回の補筆完成版では、主題回帰の導入、第2主題への移行の導入と第2主題の若干の変更、自筆譜で削除された旋律から続く短いコーダの導入を行いました。コーダについては、チャイコフスキーの初期作品「ロシア風スケルツォ(Scherzo à la russe)」 作品1 第1番を参考にしています。編曲にあたっては、言うまでもなく可能な限り少ない改編を念頭におきました。完成した編曲は338小節から成る約10分のソナタで、自信に満ちた若きチャイコフスキーの修辞的なジェスチャーと旋律的な抒情味が後に成熟した彼の個性を予期させます。(チャイコフスキーはこの作品の第2主題を「スケルツォ」 作品2 第2番のトリオに導入しています)。

レスリー・ハワード:アルバムリーフ & ピアノソナタ 第1番
レスリー・ハワードによるオリジナルのピアノ作品が初出版です。アルバムリーフは、イギリスに永住をした後の1973年にロンドンで作曲され、1曲目は「ドムラとピアノフォルテのためのロシアの主題による小品」(レスリー・ハワード作曲)の旋律を用いた復調の作品。2曲目は、パーシー・グレインジャーの音楽の「未知」の部分に焦点を当てた作品です。ピアノソナタは、21歳の時に作曲された十二音技法的作品です。


W.A. モーツァルト:組曲(補筆:ローガン・スケルトン&ヒョン・ジョン・ウォン)
数々の名曲を生み出してきたW.A. モーツァルトは、意外なことに序曲、アルマンド、クーラントやジーグ、そしてサラバンドの断片といった組曲の様式に模倣した、または組曲の断片と考えることができる鍵盤楽器作品を作曲していました。モーツァルトの死後、妻のコンスタンツェによって彼のスケッチの9割ほどが破棄されたと言われており、これらの組曲の断片は破棄を免れた作品の一部かもしれません。この楽譜は、モーツァルトの未完のバロック組曲、あるいは失われたかもしれない組曲を再構築するための試みが具現化されたものです。ローガン・スケルトンによる4ページに渡る充実した解説、約80ページに渡る2種類の組曲と付録を掲載し、充実した楽譜となっています。

収録楽曲
組曲 – 修正版(序曲、アルマンド、クーラント、ドゥーブルを伴うサラバンド、メヌエットとトリオ、ガヴォット、ジーグ)/ 組曲 – ハ長(序曲、アルマンド、クーラント、ドゥーブルを伴うサラバンド、メヌエットとトリオ、ガヴォット、ジーグ)/ サラバンド(原曲の断片)、モーツァルトによるトリオ 変ロ長調(原調)/ M.シュタードラーによるトリオ ロ短調(原調)/ M.シュタードラーによるトリオ イ短調 / ガヴォット《Les petits rien》より(原調) / ジーグ ト長調(原調)


トマシュ・カミェニャク:ピアノ編曲集(サン=サーンス、グノー、リスト、イギリス国歌&クイーン)
19世紀に目覚ましく発展した「編曲」の伝統。リスト、タールベルク、サン=サーンス、アルカンなどが次々と編曲作品を生み出し、ロマン派時代を語る上で外すことのできない名編曲は数多く存在しています。このピアノ編曲集には、その伝統に対して深い共感と尊敬を持ったカミェニャクによる「ピアニスティック」な編曲作品が収められています。なお、リスト、サン=サーンス、そしてイギリス出身のロックバンドであるQueenの作品の個性的な編曲作品が並びます。演奏会のアンコールピースとしてもピッタリです。

収録楽曲
フランツ・リスト:信頼(Verlassen) / サン=サーンス:もしもあなたが私に何も言うことがないのなら(Si vous n’avez rien à me dire) / カミェニャク:英国国家に基づく幻想曲”Al-Li-Thal” / Queen: Who Wants to Live Forever


トマシュ・カミェニャク:ピアノソナタ 第1番「孤独」 作品39
ベルリンを拠点に活躍するコンポーザー=ピアニストであるトマシュ・カミェニャクがヘンリク・グレツキの娘であるアンナ・ゴレツカの委嘱によって作曲したピアノソナタ第1番が初出版です。カミェニャクは、ピアニストとしてもヨーロッパを中心として活躍し、シャルル=ヴァランタン・アルカンやフランツ・リストなどのロマン派音楽を積極的に演奏しています。このピアノソナタは、アラン・ポーの詩「孤独」からインスピレーションを得て、フランツ・リストの《ピアノソナタ ロ短調》を倣ったものかつ、リヒャルト・ワーグナーの精神をも受け継いだ作品です。カミェニャクによる演奏はコチラで聴くことができます。

平野義久によるピアノ曲「10のプレリュード」&「薔薇の奇蹟」初出版

劇伴作曲家として活躍する作曲家・平野義久によるピアノ曲が待望の初出版です。「10のプレリュード」は、それぞれ花の名前がタイトルとして記され、繊細でメランコリックな作風から力強い情熱的な作品が並んでいます。「薔薇の奇蹟」は、フランスの小説家であるジャン・ジュネの世界観にインスパイアされ、若かりし頃の平野義久が感じたジュネが醸し出すダンディズム、ロマンティシズムが色濃く描かれています。

作品名:10のプレリュード&薔薇の奇蹟(ピアノのために)
作曲:平野義久
価格:3500円(税抜)
ページ数:52
解説:平野義久(日本語・英語)

商品購入ページはコチラ

楽譜の発送は、3月7日(月)から順次行います。

― Contents (目次) ―
「10 Préludes (10のプレリュード)」
I. Mangnolia
II.  Forget-Me-Not
III. Dahlia
IV. Tuberose
V. Gymnaster
VI. Tatarian Aster
VII. Christmas Rose
VIII. Snowdrop
IX. LyCoris
X. Blue Rose

「Le miracle de la rose (薔薇の奇蹟)」

平野義久による楽曲解説
 本作品のCDが出た時、私はブックレットに「10 Préludes(10のプレリュード)」はポップス作品だと書いた。些かイキッた表現で、今読み返すと正直恥ずかしくもなるのだが、実際それは本心に違いなかった。
 だがその時、私はこの「ポップス」という言葉を、あるひとつのイデーに集約させて、独断的な解釈を施していた。それに則った作品ということで、本作をして「ポップス」などとうそぶいた訳なのだが、さてここで、ひとつきちんと警告せねばならない。もし本作を額面通り「ポップス」だと思ってピアノに置いたならば、あなたは大いなる困惑に苛まれることになる。つまり、本作品は本来のポップス的な音楽的形式やスタイルからは著しく乖離している。本作をポップスたらしめる要素はただひとつ、上記のイデー、すなわち「表現者と聴者のシンパシーの共有」のみである。


平野義久

1971年12月7日和歌山県新宮市生まれ。5歳よりヴァイオリンを始める。バロック音楽に魅了され、小学生の頃から独学で作曲を始める。高校時代にジャズと邂逅、また、ジョン・ゾーンへの心酔を契機に現代音楽に心惹かれるようになる。一方で、ショスタコーヴィチの交響曲に強い感銘を受け、本格的な作曲の修行を決意する。
高校卒業後紆余曲折を経て渡米、イーストマン音楽院で作曲をクリストファー・ラウス、ジョセフ・シュワントナー両氏に師事する。バタイユ、クロソウスキー、マンディアルグ、ジュネら20世紀フランスの作家・思想家に傾倒し、授業もそっちのけで多くの時間を読書、そして作曲に費やす。
紆余曲折を経て同院中退、その後帰国。さらなる紆余曲折を経て2001年に劇伴作曲家としてデビュー。以来今日に至るまで数多くのサウンドトラックを世に送り出している。
文学・哲学から落語・モードファッション、さらには動物・昆虫・素粒子までこよなく愛する好奇心旺盛な作曲家。ただし幼少時のトラウマ体験により芋虫恐怖症。

【楽譜出版決定・予約受付中】Konami Amusement (Virkato Wakhmaninov): ピアノ協奏曲第1番”蠍火” – ピアノソロ編曲:角野隼斗(かてぃん)

現在世界中から注目を浴び活躍しているピアニスト、角野隼斗(かてぃん/Cateen)がピアノソロ用に編曲したピアノ協奏曲第1番”蠍火”(作曲:Konami Amusement/Virkato Wakhmaninov)の楽譜が待望の出版です。

この曲は10代の角野に衝撃を与えた楽曲のひとつで、2019年にYouTubeで公開されると大きな話題となり、2022年2月現在で228万回再生を記録しています。もともと”蠍火”は音ゲー(曲やリズムに合わせて操作をしてスコアを競う音楽ゲーム)である「beatmania IIDX 11 IIDX RED」収録曲のひとつですが、タイトルからも分かるようにクラシック的な要素が強く、ピアノ協奏曲に相応しい情熱的な作品です。その作品が角野の手により演奏効果の高い、ピアニスティックな編曲に仕上がりました。この楽譜を演奏動画と楽しむも良し、ピアノの前で音に出してみるのも良し、様々な形でお楽しみいただけることでしょう。

楽譜の販売日は2月22日です。現在、以下のページより予約受付中です。
https://muse-press.com/item/mp05001/

作品名:ピアノ協奏曲第1番”蠍火”
作曲:Konami Amusement (Virkato Wakhmaninov)
ピアノソロ編曲:角野 隼斗(かてぃん)
価格:2000円(税抜)
ページ数:16
解説:角野隼斗(日本語・英語)
ISBN:978-4-909668-68-4
出版:合同会社ミューズ・プレス

本商品は、株式会社コナミアミューズメントとの契約により許諾された権利を使用して、合同会社ミューズ・プレスが製造したものです。



角野隼斗

1995年生まれ。2018年、東京大学大学院在学中にピティナピアノコンペティション特級グランプリ受賞。これをきっかけに本格的に音楽活動を始める。2021年、第18回ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリスト。これまでに読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、国立ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団等と共演。2018年9月より半年間、フランス音響音楽研究所(IRCAM)にて音楽情報処理の研究に従事。これまでにジャン=マルク・ルイサダ、金子勝子、吉田友昭の各氏に師事。

東京大学大学院を卒業し、現在は国内外でコンサート活動を行う傍ら、“Cateen(かてぃん)”名義で自ら作編曲および演奏した動画をYouTubeにて配信し、チャンネル登録者数は92万人超、総再生回数は1億回(2022年2月現在)を突破。2020年12月にリリースした1stフルアルバム「HAYATOSM」(eplus music)は、オリコンデイリー8位を獲得。「情熱大陸」「バース・デイ」「題名のない音楽会」などテレビ出演多数。CASIO電子楽器アンバサダー、スタインウェイアーティスト。クラシック音楽に確かな位置を築きつつも、ジャンルを越えた音楽すべてに丁寧に軸足を置く、真に新しいタイプのピアニストとして注目を集めている。
https://hayatosum.com/

Hayato Sumino ©︎@ogata_photo

シャルル・ケクラン~フランス音楽黄金期の知られざる巨匠(4)

文:佐藤馨

 パリ音楽院第5代院長のアンブロワーズ・トマが1896年に亡くなると、新たな6代目院長には作曲科教授だったテオドール・デュボワが就任した一方、もう一人の作曲科教授であったジュール・マスネは職を辞して音楽院を去ってしまった。ケクランを含む、残された元マスネ・クラスの生徒たちは、この出来事を機に新たな師と出会う――ガブリエル・フォーレ(1845-1924)だ。

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あれでもなくこれでもなく〜モートン・フェルドマンの音楽を知る(18)-2 (最終回)フェルドマンの音楽がもたらした影響

文:高橋智子

2 フェルドマン没後の受容と評価

 フェルドマン死去の翌日、1987年9月4日の『New York Times』に訃報が掲載された。この記事の冒頭でフェルドマンは「今世紀最も重要な実験作曲家の1人で、ミニマリストと称されている人たちよりも真のミニマリスト、モートン・フェルドマンがバッファロー・ジェネラル・ホスピタルで昨日、膵臓癌で死去した。Morton Feldman, one of the century’s most important experimental composers and a truer minimalist than many so labeled, died of pancreatic cancer early yesterday at Buffalo General Hospital.」[1]と紹介されている。通常、訃報記事はその人物の当時の評価や一般的なイメージを反映して書かれている。この訃報記事は「晩年にはアメリカの支持者や、とりわけヨーロッパから興味を持たれていたにもかかわらず、彼は音楽界からの孤立を感じていた。In his later years, even with continued interest in his work from American champions and, especially, Europeans, he felt cut off from the musical world.」[2]と、やや寂しい論調で締めくくられているが、フェルドマンの当時の音楽界からの評価と受容について次のように記されている。

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あれでもなくこれでもなく〜モートン・フェルドマンの音楽を知る(18)-1 (最終回)フェルドマンの音楽がもたらした影響

文:高橋智子

1 フェルドマンとクリスチャン・ウォルフ

 1987年3月にラジオドラマ「Words and Music」の録音を終え、その後、6月12日に「For Samuel Beckett」のアムステルダムでの初演を終えたフェルドマンは、7月にオランダのミッデルブルクで連続講義を行い、また、そこで彼の事実上の最期の楽曲となった新作「Piano, Violin, Viola, Cello」を初演した。この慌ただしいスケジュールの合間の6月に彼はバッファロー大学の学生だった作曲家のバーバラ・モンク・フェルドマン[1]と結婚した。その数日後、フェルドマンが膵臓癌に冒されていることが判明する。彼は7月のミッデルブルクでの講義と「Piano, Violin, Viola, Cello」初演に病を押して参加した。バッファローに戻って治療を再開するも1987年9月3日に逝去。[2] 61歳だった。フェルドマンは9月9日にロサンゼルスでジョン・ケージ75歳の誕生日を祝した講演を行う予定だったが、急遽予定が変更され、ケージがフェルドマン追悼として「Scenario for M. F.」を朗読した。この詩はフェルドマンの60歳の誕生日を記念して前年の1986年に書かれたものだった。[3] 同じ日(1987年9月9日)にクイーンズ地区のサイナイ教会にてフェルドマンの葬儀が行われた。その後、彼はニューヨーク州ウェスト・バビロンにあるユダヤ人墓地、Beth Moses Cemeteryに埋葬された。[4]

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