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幻想曲 «バンドゥーラを手にすれば» ~ヴァイオリン独奏のために~ Op. 2, No. 1
『幻想曲 «バンドゥーラを手にすれば» ~ヴァイオリン独奏のために~』は、2014年と、そして2015年にワシントンD.C.にあるウクライナ大使館のために演奏した委嘱作品でした。マイダン革命とロシアによるクリミア併合後のことです。私はリヴィウ(ウクライナ)出身の家族の側で、ロシア語を話しながら、姉妹国であるはずの2つの国の文化を共有して育ちました。
最初に思いついたのは、子供の頃に聞いたウクライナの民謡«バンドゥーラを手にすれば(Взяв би я бандуру)» を曲のベースにすることでした。 バンドゥーラはウクライナの代表的な撥弦楽器であるので、短めの「導入部」の後の主旋律は、左手の小さなピチカートで伴奏されます。続く民俗舞踊的な性格を持つ「第1変奏」では、演奏者の笑いを誘うような要素も盛り込まれています。「第2変奏」では、W.エルンストの«「夏の名残のばら」による変奏曲»の第2変奏のようなアルペジオで始まった後、主題から離れて、政治的、人道的な状況に対する私の感情をもう少し深く掘り下げています。そこでは、«怒りの日»の意味深な引用やバッハのシャコンヌが聞こえてきます。ウクライナの人々が悲惨な事件の後に鎮魂歌として使った«ティッサに浮かぶアヒル(Пливе Кача По Тисинi)»という歌に深く感動し、第2変奏に続く楽章では、これも引用することにしました。
メロディ ~ヴァイオリン独奏のために~ Op. 2, No. 2 (ドーラ・ヴァイツナーのために)
ドーラ・ヴァイツナーは、私が幼少期から良く知る2013年の旅立った曾祖母です。彼女は、1939年から1945年の世界戦後、大家族の中でたった一人生き残った人でした。ドーラは、家ではみんなが大きな声で感情的になっている中、いつも歌っていましたようです。彼女はいつも私に、家庭や家族の争いはすべて取るに足らないことで、大事なのは健康であることと、愛することができることだと言っていました。私はいつもそのイディッシュ語の鼻歌のようなメロディーを聴きながら、彼女が何を言いたいのか理解しようとしていました。この «メロディ»で、私は彼女への小さなお別れの言葉を綴ることにしたのです。
マルク・ブシュコフ
ロシアとウクライナの血を引くベルギー人ヴァイオリニストであるブシュコフは、洗練された音楽家であり、ヨーロッパ中の一流オーケストラや指揮者と共演を通して、国際的なキャリアを築いている。
オーケストラとの共演では、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマリス・ヤンソンス、hr交響楽団とクリストフ・エッシェンバッハ、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とフィリップ・ジョーダンなどと共演している。また、ハンブルク交響楽団、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団、マリインスキー劇場管絃楽団、ヴェルビエ音楽祭室内楽団などとも共演し、クリストフ・エッシェンバッハ、ヴァレリー・ゲルギエフ、スタニスラフ・コチャノフスキー、ドミトリー・リス、リオネル・ブランギエなど多くの指揮者たちと共演している。
ブシュコフは精力的なリサイタリストとして、ウィグモア・ホール、カーネギー・ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウ、エルプフィルハーモニー・ハンブルク、サンクトペテルブルクのコンサートホール、チューリッヒのトーンハレ、ベルリンのコンツェルトハウスなど世界の一流コンサートホールで演奏している。2019年以降は、スイスのヴェルビエ音楽祭に常任の客員として招かれている。賞歴としては、モントリオール国際ヴァイオリン・コンクールで優勝、チャイコフスキー国際ヴァイオリン・コンクールで第2位入賞などがある。
マルク・ブシュコフは、ヴァイオリニストの家庭に生まれた。祖父から最初のレッスンを受け、クレア・ベルナール、ボリス・ガルリツキーに師事。ミハエラ・マルティンと共に、マルクはクロンベルク・アカデミーの大学院課程でヤング・ソリストとして研鑽を積んだ。2018年10月からは、エドゥアルド・ウルフソンに指導を受けている。現在は、リエージュ王立音楽院(ベルギー)及びリヒテンシュタイン国際音楽アカデミーの教授を務めている。
Edwulstrad RMIC Ltd.より、1742-44年製のCarlo and Michelangelo Bergonzi(ヴァイオリン)を貸与されている。