説明
務川慧悟が編曲を手掛けた「マ・メール・ロワ」(作曲:ラヴェル)のピアノ独奏版が待望の出版となりました。ラヴェルの音楽と務川慧悟自身のピアニズムとラヴェルのエッセンスが見事な融合を果たしています。演奏難易度は初級から中級者向けとなっており、自分だけの密やかな楽しみに、発表会のために、演奏会のためにと様々な場面で幅広い方々に楽しんでいただけることでしょう。
務川慧悟による序文の抜粋
ラヴェルの作品の中には音の少なさによる美を讃えたものがあると思っています。彼が、素晴らしいヴァイオリンソナタを作るのに4年もの時間をかけた理由を「無駄な音符を削るため」だったと語っていますが、この『マ・メール・ロワ』も、やはり磨き抜かれた少なき音の醸し出す美しさが素晴らしい作品だと思っています。そのため今回の編曲にあたっては、できる限り音を”少なくすること”に何より時間をかけました。ラヴェル自身の連弾版にもオーケストラ版にも無かった音を、わずかに加えた箇所もありますが、その際にも細心の注意を払いながら、そしてラヴェルのピアノ作品の書法の特徴も踏まえながら作業を行いました。そのため、第3曲・第4曲はそれでもやはりある程度の技術的難度を要するものの、第2曲・第5曲は中級程度の学習者にも、また第1曲はそれ以上に容易に演奏できるであろう形となりました。また編曲にあたって、演奏するための合理的な指遣い、というのを常に念頭に置いて行いました。そのため、今回それらの運指も比較的細かく譜面内に記すこととしました。それは僕のピアノ奏法への考え方が反映された指遣いとなっており、おそらく一見複雑で覚え辛いように見える運指もありますが、それらはよりよいニュアンスやレガートを得ることを、つまり、弾き易さというよりも良い音楽を得ることを、常に目的としています。運指に対する考え方のひとつの参考として頂いてもよいですし、もちろん別の運指を採用して頂いても構いません。
務川慧悟(むかわけいご)
東京藝術大学1年在学中の2012年、第81回日本音楽コンクール第1位受賞を機に本格的な演奏活動を始める。
2014年パリ国立高等音楽院に審査員満場一致の首席で合格し渡仏。パリ国立高等音楽院、第2課程ピアノ科、室内楽科を修了し、第3課程ピアノ科(Diplôme d’Artiste Interprète)、同音楽院フォルテピアノ科に在籍。
2019年ロン=ティボー=クレスパン国際コンクールにて第2位入賞。2015年エピナル国際ピアノコンクール(フランス)第2位。2016年イル・ドゥ・フランス国際ピアノコンクール(フランス)第2位。コープ・ミュージック・アワード国際コンクール(イタリア)ピアノ部門第1位、各部門優勝者によるファイナルにて第2位、聴衆賞を受賞。2018年秋に開催された第10回浜松国際ピアノコンクールにおいて第5位を受賞。2017年シャネル・ピグマリオン・デイズのアーティストに選出され「ラヴェルピアノ作品全曲演奏」をテーマに6回のリサイタルを開催。
これまでに、日本各地、フランス、スイス、上海、ラトビア、イタリアにて演奏会を開催のほか、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、練馬交響楽団、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、藝大フィルハーモニア、セントラル愛知交響楽団、愛知室内オーケストラ、中部フィルハーモニー交響楽団、NHK名古屋青少年交響楽団、トリフォニーホール・ジュニア・オーケストラ、フランスにてロレーヌ国立管弦楽団と共演。室内楽においては、チェロの木越洋氏、長谷川陽子氏、ヴァイオリンの篠崎史紀氏、大谷康子氏、石田泰尚氏、等と共演。テレビ、ラジオでは、NHK-FM“リサイタル・ノヴァ”“ベストオブクラシック” NHK-Eテレ“さらさらサラダ”“ららら クラシック”等に出演。
日本、ヨーロッパを拠点に幅広く演奏活動を行うと共に、「ピアノの本」において留学記、ヤマハHPにてコラムを連載するなど、多方面で活動している。2012.13.14年度ヤマハ音楽振興会音楽支援奨学生。2015.16年度公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。2017年度公益財団法人江副記念財団奨学生。
フランク・ブラレイ、上田晴子、ジャン・シュレム、パトリック・コーエン、横山幸雄、青柳晋の各氏に師事。