説明
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スクリャービンの交響曲は5番まで存在し、名高い第5番「プロメテウス(炎の詩)」を含め演奏される機会は多いとは言えないが、多くの音楽家たちに多大なる影響を与えた。これらをピアノ編曲したいと考えるのは、ロシアの音楽家にとって自然なことだったのだろう。このCDは近年注目を集めている作曲家でスクリャービンの評伝『スクリャービン』(邦訳・音楽之友社)を著したレオニード・サバネーエフゆかりの編曲(3番・5番)と、作曲者自身の編曲によるピアノコンチェルトの2楽章を収録している。
交響曲3番「神聖な詩」(ピアノ4手連弾)
ラフマニノフの同期でスクリャービンとも親交のあったレフ・コニュスによるピアノ連弾編曲。レオニード・サバネーエフは当時、スクリャービンに特に注目していなかったが、この連弾版の楽譜を入手して兄のボリスとともに演奏したところ、スクリャービンの天才を知り、以降、多大なる影響を受けることとなる。サバネーエフによれば「この交響曲は、オーケストラで演奏するよりも、ピアノで演奏した方がわかりやすい」という。
交響曲5番「プロメテウス」(2台ピアノ)
当時、スクリャービンのパトロンであった指揮者クーセヴィツキーとの契約で、スクリャービンはピアノ版を編曲する義務があったがこれを放置、サバネーエフに依頼が来たところ喜んで快諾したという。作曲者本人は、複雑な楽曲だから2台8手以下で編曲できるはずがないと思っていたというが、サバネーエフはなんとピアノソロで編曲をしてしまった。だがその後、もっと簡単で音の充実した2台ピアノ版の方が良いと考え、そちらが正式に出版されることとなった。
なお、サバネーエフはタネーエフとリムスキー=コルサコフの指導を受けた作曲家で、のちにフランスへ移住。2017〜2018年にドイツのGenuinレーベルよりミヒャエル・シェーファー(Michael Schäfer)によるピアノ曲全集が発売されたことで注目を集めている。
ピアノ協奏曲より第2楽章(2台ピアノ)
まだスクリャービンがショパンに大きな影響を受けていた頃の作品で、非常に美しいメロディを持っている。ここでは、ナナサコフはオーケストラパートを楽譜にはないトレモロで演奏してみるという試みを行っている。
ミヒャエル・ナナサコフについて
楽譜通りの演奏が困難だったり、演奏される機会が少なく録音も稀である作品を取り上げる世界初のヴァーチャル・ピアニスト。1955年リトアニアのヴィトリニュス生まれ、という設定であるが、実際にはプロデューサーである七澤順一が、コンピュータと自動演奏ピアノを用いて行っている録音プロジェクトである。90年に発売されたゴドフスキーの「ショパンのエチュードによる53の練習曲」でデビュー。当時満足な録音が無かった中で、超人的な演奏を実現して見せたことで大きな注目を集めた。