説明
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収録楽曲
・シャコンヌ 作品3a(2つのヴァイオリンのために)
・シャコンヌ 作品3b(ヴァイオリンとヴィオラのために)
マルク・ブシュコフによる解説
ステファノとは、私がモスクワに定期的に通っていた頃に知り合いました。親交を重ねるうちに定期的に会い、音楽、形而上学、文学に加えて、彼が良く知る生物学について議論をするようになりました。ステファノのバッハの音楽に関する知識は、プロのクラシック音楽家ではない私を常に魅了しました。《 無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番 ニ短調 》の「シャコンヌ」は、彼の大好きな曲の一つであり、私たちは何度もその話をしました。ステファノはエレキベースを弾き、ロックの腕前もありました。共通の友人(私の教え子)であるアレクセイ・スタヒキンと一緒に、面白半分にロックソングも録音しています。2017年の夏が終わって間もなく、ステファノは23歳の若さで不慮の事故に遭い、私たちのもとを去りました。私は彼の家族にかける言葉も無いまま、ただ、ステファノが私たちに残してくれたエナジーに最大限に応えられるようなものを書こうと考え、家に閉じこもりました。当初はソロ・ヴァイオリンのための曲を考えていたため、曲の冒頭はソロ・ヴァイオリンで演奏することができるのですが、すぐさま、アレクセイと一緒にステファノを追悼するための曲を演奏したいと思うようになりました。この曲は、シャコンヌのリズム、主題を導入する抒情的なパート、ステファノの個性の美しさを表現するパート、和音を使った変奏、簡単な対位法などを組み合わせています。最後のエピソードは、彼と一緒に作曲したロックのようなエネルギーに満ちています。曲は「シャコンヌ」の要素で終わりますが、この終結部は彼の魂が天界へ旅立った様子を表現しています。彼は光の中にいたのです。
マルク・ブシュコフ
ロシアとウクライナの血を引くベルギー人ヴァイオリニストであるブシュコフは、洗練された音楽家であり、ヨーロッパ中の一流オーケストラや指揮者と共演を通して、国際的なキャリアを築いている。
オーケストラとの共演では、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団とマリス・ヤンソンス、hr交響楽団とクリストフ・エッシェンバッハ、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とフィリップ・ジョーダンなどと共演している。また、ハンブルク交響楽団、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団、マリインスキー劇場管絃楽団、ヴェルビエ音楽祭室内楽団などとも共演し、クリストフ・エッシェンバッハ、ヴァレリー・ゲルギエフ、スタニスラフ・コチャノフスキー、ドミトリー・リス、リオネル・ブランギエなど多くの指揮者たちと共演している。
ブシュコフは精力的なリサイタリストとして、ウィグモア・ホール、カーネギー・ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウ、エルプフィルハーモニー・ハンブルク、サンクトペテルブルクのコンサートホール、チューリッヒのトーンハレ、ベルリンのコンツェルトハウスなど世界の一流コンサートホールで演奏している。2019年以降は、スイスのヴェルビエ音楽祭に常任の客員として招かれている。賞歴としては、モントリオール国際ヴァイオリン・コンクールで優勝、チャイコフスキー国際ヴァイオリン・コンクールで第2位入賞などがある。
マルク・ブシュコフは、ヴァイオリニストの家庭に生まれた。祖父から最初のレッスンを受け、クレア・ベルナール、ボリス・ガルリツキーに師事。ミハエラ・マルティンと共に、マルクはクロンベルク・アカデミーの大学院課程でヤング・ソリストとして研鑽を積んだ。2018年10月からは、エドゥアルド・ウルフソンに指導を受けている。現在は、リエージュ王立音楽院(ベルギー)及びリヒテンシュタイン国際音a楽アカデミーの教授を務めている。
Edwulstrad RMIC Ltd.より、1742-44年製のCarlo and Michelangelo Bergonzi(ヴァイオリン)を貸与されている。