ダウンロード版 – ロン・イェディディア:12の大練習曲 第1集 第2巻(第5番-第8番)

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|電子版(PDF)|60頁
序文(英語・日本語):ロン・イェディディア

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ロン・イェディディアによる楽曲解説
ロン・イェディディアの大練習曲第5番から第8番は、1994年と1995年に作曲された。 彼はその時期を、まるで異世界の源からミューズが降りてきたかのように、「宇宙的なインスピレーション」が高まった時期であったと語っている。その経験は驚くべきもので、不思議な力に解放感と関連性をもたらした。そして、その力は、新しいソノリティとピアニスティックな構造の数々を生み出した。 イェディディアは、この特別な大練習曲集を彼の作曲活動における重要な転機とみなしている。また、イェディディアのピアノ独奏作品の中でも、頻繁に演奏・録音されている作品である。

大練習曲第5番(演奏音源)は、1994年に作曲され、当時イェディディアに衝撃を与えたピアニスト、エフゲニー・キーシン(1971年生まれ)に捧げられている。この曲はニ長調で書かれているが、Dリディアンモードを多用しており、D-E-F#-G#の全音進行がメロディとハーモニーに不可欠である。この作品の響きは、19世紀末から20世紀初頭にかけてのロマン派と印象派のピアノの伝統をすぐに連想させる。しかし、音楽的要素とリズムなどの基本的な技巧は、古典的なものが主である。メンデルスゾーン、ラフマニノフ、ドビュッシーの融合が、この大練習曲の様式的風景を最もよく反映しているのかもしれない。

大練習曲第6番「日の出(Sunrise)」(演奏音源)は、1994年に作曲され、ロン・イェディディアの親友であり同僚、そして1990年代初頭から彼のキャリアと音楽を熱心に支援してきたアメリカのピアニストであるイレーヌ・マッキューン(1933年生まれ)に捧げられたものである。「日の出」は、天空の苦悩を表したようなメランコリックな開始音から、現実世界のどこかで愛と受容の探求まで、イェディディアの目を通して見た、彼女の人格と人生の並行関係を描いている。夜明けから始まり、真昼の満天の恍惚を経て、切なく沈む太陽の軌道のように、この大練習曲の展開もまた然りである。

大練習曲第7番「洋上の飛行(The Flight Over the Ocean)」(演奏音源)は、1995年に作曲され、1980年代にジュリアード音楽院で学んだイェディディアに最も大きな影響を与えたピアニスト兼作曲家のアルチュール・ハート(1965年生まれ)に捧げられたものである。彼はイェディディアのピアノ・ソナタ第1番を世界初演し、その後ピアノ・ソナタ第3番「叫び(Outcries)」を録音・演奏した最初の音楽家であり、献呈者である。この大練習曲は、イェディディアの他の大練習曲の中でも、より自由な狂想曲である。ハートの明るく気まぐれな性格、音楽的・概念化能力の高さ、そして当時世界中を頻繁に旅行していたことが、イェディディアの作品に輝ける叙情性と不規則な気まぐれさを与えている。曲は嬰ヘ長調で、左手のスケールとモード(主にペンタトニックとリディアン)、荒々しいアルペジオ、そして断片的なテクスチャーが執拗なまでに速く描かれているのが特徴である。右手はメロディと高速のアルペジオ、トリル、トレモロで構成されている。

大練習曲第8番「夜の砂漠の呼び声(A Voice Calling in the Desert at Night)」(演奏音源)は1995年に作曲され、1990年からロン・イェディディアと結婚しているピアニストのフィオーナ・グラント(1966年生まれ)に献呈された。夜想的、憧憬的、繊細な性格を持つこの曲は、アメリカを離れ、イギリスで生活を送る最愛の妻へに対するイェディディアの想いを記録したモノローグである。曲は嬰ハ短調で始まり、巧みな右手のパターンと穏やかな左手の伴奏を組み合わせ、複数の和声的変化と主題の変奏を経て展開する。


ロン・イェディディア
彼の作品は過去20年間に国際的な注目を浴びるようになりました。彼の作品は世界の主要なコンサートホールで取り上げられている他、映画、ラジオ、テレビ番組にも登場し、彼の作曲家兼ピアニストとしての地位を確かなものにしています。1960年、イスラエルのテルアビブに生まれ、幼い頃からアルフレッド・コルトーの弟子であったプニーナ・ザルツマンのもとでピアノを学びました。8歳にして「Young Concert Artists Competition of Israel」で第1位を受賞しピアニストしてのキャリアをスタートさせましたが、15歳で作曲家の道に進むことを決意します。1984年にジュリアード音楽院の作曲科に進学しデイヴィッド・ダイアモンドやミルトン・バビットの元で研鑽を積みながらLincoln Center Scholarship、the Irving Berlin Scholarship、Henry Mancini Prize、the Richard Rodgers Scholarship等の主要な賞や奨学金を贈与された他、1987年と1989年にはジュリアード作曲コンクールに入賞しました。1991年に同音楽院の博士課程を卒業した後は当時の現代音楽の流行からの脱却を決意し、伝統的な旋律 - 和声 - 形式 - 耽美主義 - 和声感 - ドラマ性 - 対話性の再構築に乗り出しました。彼はフォークやジャズといったクラシック以外のジャンルも愛好しており、これらの音楽が根源的に調性に基づいていることから、彼の音楽語法の拡大に結びつきました。彼は現在まで、独奏から大編成オーケストラ作品、宗教音楽やフォークソングなども生み出しています。2007年5月にはオーケストラ作品「ステップ・イン・ザ・ワンダーランド」の世界初演がイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団によって行われました。主な作曲委嘱元には サン・アントニオ国際ピアノコンクール(ラプソディー、2006年)、 シアトル室内楽協会(ピアノとクラリネットとチェロのためのトリオ、2007年)、 ニューヨークのZamir Choraleがあり、2009年には、マンハッタンのBaruch Performing Arts Centerで開催されたThe Concert Meister Seriesのレジデントコンポーザーを務め、数々の作品がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団等の著名なオーケストラによって演奏されました。1994年にはワンダ・トスカニーニ=ホロヴィッツの依頼によりウラディミール・ホロヴィッツの未出版ピアノ作品の校訂と録音にも携わっています。

現在までにイェディディアの作品は、EMIやナクソス、ソニーBMGなどの大手レーベルにも収録されました。イギリスのレーベル・Altarusによってリリースされた自作自演アルバム『Yedidia Plays Yedidia』は世界中の作曲家やピアニストから注目を浴び話題となりました。また、ニューヨーク・ピアノ・アカデミーの創設者でもあり後進の育成に努めています。