平野義久:Pickled Plum Rag & Rag Simulation(ピアノのために)

¥1,650

税込|菊倍|16頁
序文(英語・日本語):平野義久

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説明

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オーケストラ作品から劇伴作品まで幅広い作品を生み出している作曲家・平野義久のピアノ作品の楽譜が出版です。平野によれば「タラコ・スパゲティ」ないしは「抹茶アイス」を目指したという、通常のラグタイムとは一味違う彼ならではの強烈な作品です。

平野義久による楽曲解説
10代の頃ジャズに傾倒していたこともあり、ラグタイムは私にとって親しみある音楽ジャンルだ。 実際、スコット・ジョプリンの呑気さからアート・テイタムの桁違いな猛者っぷりまで、私は折に触れてこのユニークな音楽に魅了され、心踊らせてきた。劇伴の仕事においても、ジョプリンのいくつかの作品を様々な楽器編成でアレンジしたサウンドトラックを制作したことがあったし、もちろんオリジナルだって何度となく書いている。 思うにラグタイムとは、純然たる楽しみであり、眉間にシワよりも口角を上げることに寄与する、ハッピーかつアンチエイジングな音楽である。

だが、純音楽作品としてのラグを書いたのは、この2曲が初めてだ。かなりキテレツで冗談音楽めいたセクションも含まれるが、それは僕にとっての、そして願わくば聴衆にとっての「口角の上がる」純粋な楽しさとして響いてくれればと思う。言わずもがな、演奏家にとっては、「眉間にシワ」を深々と刻まずにはいられないエイジング促進必至のフレーズ群となる。ごめん。
Pickled Plum Rag は、「タラコ・スパゲッティ」を目指した曲だ。「抹茶アイス」でもいい。つまり、私自身の音楽スタイルを下地とし、そこにラグを注ぎ込むことで、あまよくば何か楽しげな化学反応が生じることを期待する試み…というか、遊戯・ゲームである。「タラコ・スパゲッティ」や「抹茶アイス」のようにテイスト・グッドな相乗効果が起これば幸いだ。
Rag Simulation も Pickled Plum Rag 同様のコンセプトで書かれたものだが、Pickled Plum Rag の比較的ストレートなラグ・スタイルに比べ、形態的にいささかアドヴァンスな逸脱を呈している。曲調もよりワイルドで、Pickled Plum Rag がジョプリン的呑気さを包含しているとすれば、こちらはテイタム的猛者っぷりをフューチャーした作品と言える。


平野義久(Yoshihisa Hirano)

平野義久(ひらの よしひさ)
1971年12月7日和歌山県新宮市生まれ。5歳よりヴァイオリンを始める。バロック音楽に魅了され、小学生の頃から独学で作曲を始める。高校時代にジャズと邂逅、また、ジョン・ゾーンへの心酔を契機に現代音楽に心惹かれるようになる。一方で、ショスタコーヴィチの交響曲に強い感銘を受け、本格的な作曲の修行を決意する。
高校卒業後紆余曲折を経て渡米、イーストマン音楽院で作曲をクリストファー・ラウス、ジョセフ・シュワントナー両氏に師事する。バタイユ、クロソウスキー、マンディアルグ、ジュネら20世紀フランスの作家・思想家に傾倒し、授業もそっちのけで多くの時間を読書、そして作曲に費やす。
紆余曲折を経て同院中退、その後帰国。さらなる紆余曲折を経て2001年に劇伴作曲家としてデビュー。以来今日に至るまで数多くのサウンドトラックを世に送り出している。
文学・哲学から落語・モードファッション、さらには動物・昆虫・素粒子までこよなく愛する好奇心旺盛な作曲家。ただし幼少時のトラウマ体験により芋虫恐怖症。

追加情報

重さ 200 g
サイズ 30 × 23 × 0.1 mm