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オネゲル/佐伯涼真:パシフィック231(2台ピアノ編曲)

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税込|菊倍判|24頁
序文(英語・日本語):佐伯涼真
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説明

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オネゲルの代表作である「パシフィック231」は、原曲のオーケストラ版以外にも、作曲者本人によるピアノ連弾編曲がありますが、原曲の交錯する対位法を十分に再現しているとは言い難いものがあります。新鋭ピアニストの佐伯涼真によるこの2台ピアノ用編曲では、メロディが2台のピアノ間で行き交うなどの効果を施し、原曲を尊重しながらも、演奏会用曲目として聴き映えのする工夫を凝らしています。


佐伯涼真による序文より

オネゲルは1892年、フランス北西部の港町で、スイス人の両親の間に生まれた。「フランス6人組」の一人として活躍したオネゲルの代名詞的作品である《パシフィック231》は1923年、作曲家として順風満帆であった時期に創作され、1924年に初演されている。奇しくも初演から100周年のタイミングでこの作品の編曲の機会をいただけたことに、不思議な縁を感じる次第である。(略)

様々な場面でこの作品が紹介されるにあたりまず言及される魅力の1つは、巨大な機関車の「始動・加速」「疾走」「減速・停止」の様子を「音価の段階的変化」によって描写している点である。冒頭、休止している巨大な機械の静かな呼吸から、第12小節以降の音価の展開を概観すると、4拍→3拍→2拍→4/3拍→1拍→1/2拍と、段階的に短くなることで「加速」を感じさせる。第118小節目で「流れ」に乗った機械は、更に3連符や16分音符を巻き込みながら躍動的に疾走すると、第169小節目からクライマックスを迎える。このまま爆発的に終結するかと思いきや、第204小節目からが面白い。1/3拍→1/2拍→2/3拍→1拍→4/3拍→2拍→3拍→4拍→5拍と、冒頭とは反対に音価が長くなっていくことで「減速・停止」を描写する。

一方、世相を反映した先進的な標題を持ちながら、その構造が極めて古典的であることは注目に値する。すなわち対位法の大家であったオネゲルは、「定旋律」と5つの「主題」の演繹によって楽曲全体を支配したのである。特に第132小節目以降は、複数の主題が複雑に絡み合うだけでなく、それぞれが縮節・拡大したり、反行の形を採ったりする。第169小節目からはホルンの情熱的な定旋律の周りを、1小節ごとに種々の主題が跋扈する。一歩間違えれば無秩序にもなり得るこの様相は、前半にひとつずつ提示されていた主題の記憶によりぎりぎりのところで統治を保たれる。私がこの作品に出会った当初は先述の音価の数学的変化にしか面白さを感じなかったが、編曲作業を通してその内実に触れた今、伝統の踏襲を踏まえて成立していたこの作品の「説得力」のようなものに感嘆するばかりである。

編作にあたっては、私が常日頃から意識している「原作品への敬慕」を根底に敷きつつ、2台ピアノならではの書法を活用し、音響的効果の拡大を目指した。また「機関車的音響」を念頭に置いた管弦楽作品である前提のもとに二次創作を思案した結果、必然的にいくつかの特殊奏法や、「quasi ~」の指示が多く必要となった。この辺りの音響的志向は、奏者の想像力・創造力にも大いに期待したい。

佐伯涼真
2024年7月


佐伯涼真(さえき りょうま)
2000年さいたま市生まれ。7歳よりピアノを始める。第32回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールピアノ部門高校生の部第1位。第3回K Pianoコンクール高校生部門第1位。2019年、桐朋学園大学音楽学部音楽学科ピアノ専攻に入学。第26回フッペル鳥栖ピアノコンクール2020フッペル部門第2位。2021年桐朋ピアノコンペティションファイナリスト。2022年桐朋ピアノコンチェルト・コンペティション第1位。これまでにピアノを山上有紀子、武田美和子、中井恒仁、チェンバロを有田千代子、室内楽を村上寿昭、落合美和子、作曲を森山智宏の各氏に師事。

追加情報

重さ 220 g
サイズ 300 × 230 × 2 mm

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