説明
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1957年に出版された楽譜に掲載された宅 孝二による解説
プーランクの作品の中で一番よく弾かれる曲を主題として変奏曲を書いてみた。親しみと楽しさと自然さの中に、思い上りと複雑、難解へ逃避して音楽性の欠如と才能の貧困さをカヴァーしている風潮に対しての抵抗にもなり得れば幸であるという動機も、心の隅にうごめいていたかも知れない。いうなれば、書斎の音楽、学者の音楽、芸術家の音楽よりも、もつと広い、低いところにある音楽としたいのが作者の趣旨であつた筈である。しかし!だから!必然的に演奏はぐんと緻密に、十分研究して、よく消化しきれるまで徹底してもらいたい。特にテンポは厳密に、曲の最後の1拍目までゆるぎなく正確に守つてもらいたい。リズムとアクセントは実に正確、明確にしてもらいたい。タッチはあくまで歯切れよくドライに。殊にペダルは最少量の使用に止めて十分注意を願いたい。この曲では芸術的と称する、あいまいな、不正確な、不消化な演奏は作曲者をひどく悲しませるものであることに御同情をよせられたい。そして十分マスターした上で、絶対に面白くなくてはならないこともお願いする。なぜならこれは聴衆のための作品であるから。こうは申し上げても、これは私の我儘であるから、演奏者がベストをつくして下さつた後は、作曲者のことや、その申し分になんら気がねをすることはないので、自由な気持でなければよい演奏、生きた演奏ができないことも十分承知している。まあよろしく努力をして下さり、たびたび弾いて面白くして下されば、しあわせこの上もないというところである。
サラ・デイヴィス・ビュクナーによる演奏