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夏目 恭宏による序文
近年では街中のピアノで華麗な演奏を披露するピアノ弾き達、アクロバティックな技で魅せるデュオグループらの活躍もあって、ピアノ4手連弾の可能性は大きな広がりをみせています。とはいえ、ピアノ連弾は本来、室内楽であり、ふたりの人間が織りなす駆け引きの面白さ、対話的要素がその根底にあるといえましょう。そして何より、4手連弾によってこそ引き出すことができる多彩な響き、ダイナミックな音の広がりは古今多くの作曲家を魅了し、様々な作品が誕生しました。フォーレの中期を代表する傑作「パヴァーヌ」 作品50は、管弦楽曲として作曲されましたが、その旋律の静謐な美しさゆえ、これまでにも様々な編成で演奏され親しまれてきました。ピアノ独奏譜も残されており、ピアノロールに記録されたフォーレ自身の味わい深い演奏を聴くこともできます。
私が連弾版の編曲を思い立ったのは数年前の冬のことでした。このような作品を新たにピアノ連弾として編曲する意味はあるのだろうか、と自問自答する日々ではございましたが、先に申し上げましたように、奏者ふたりの親密な対話によって、連弾ならではの美しい響きでこの作品を包み込んでみたいという私の欲求を抑えることはできませんでした。雪の舞い散る情景にインスピレーションを得て生まれたこの編曲は、2オクターブでの動きを基調に据えており、クリスタルのような、ガラス細工のような繊細な響きをピアノから引き出すことを目指しています。
夏目 恭宏
知県豊橋市出身。明治大学文学部西洋史学専攻卒業。ポーランド国立ワルシャワ音楽大学ピアノ専攻学士課程、修士課程修了。在学中よりコンサート活動を開始し、日本、ポーランドを拠点に国際的な演奏活動を展開。室内楽奏者、伴奏者としての活動も多岐にわたり、ピアノ4手連弾のための作曲、編曲も数多く手掛ける。近年は指導者としてピアノ演奏に関する公開講座、レッスンでの後進の指導にもあたる。