チャイコフスキー:ソナタ ヘ短調 第1番 – 遺作(校訂:補筆完成:レスリー・ハワード)

¥3,300

税込|菊倍|20頁
解説(英語・日本語):レスリー・ハワード

説明

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ロシアで出版されたチャイコフスキーのピアノ作品集の中に掲載されたピアノソナタ(作品集の中では”Allegro”と名付けられています)の断片をレスリー・ハワードが補筆・完成させました。このピアノソナタが作曲された経緯や作曲が途中で破棄された理由などは謎に包まれたままです。しかし、レスリー・ハワードは「このソナタは、《ピアノソナタ ハ短調 作品80》とも引けを取らない程の力強さを持った作品」と語っています。なお、ハワード自身の演奏によって英国の音楽レーベルであるHyperionから録音もリリースされています。

レスリー・ハワードによる楽曲解説
チャイコフスキーの最初のピアノソナタがどのように作曲され、また何故それが不完全な形で無題のまま放棄されたのかは明らかになっていません。けれども残された曲の断片、曲の胴体を救う価値はあるでしょう。実際、この断片はその翌年に書かれたピアノソナタハ短調(作品80)と比較しても引けを取らない程の力強さを持っています。チャイコフスキーが最初にこのヘ短調の楽章を用いたと思われるのは古いロシアの出版社が制作した彼の作品集です。(Allegroという題が付けられています)。これには数々の誤植、印刷ミスなどがあり改良の余地を大きく残すものでした。172小節から成る自筆譜は、導入部を伴わない主題提示部と繰り返し記号に対応する1回目の小節を含み、展開部の途中で終わっています。

今回の補筆完成版では、主題回帰の導入、第2主題への移行の導入と第2主題の若干の変更、自筆譜で削除された旋律から続く短いコーダの導入を行いました。コーダについては、チャイコフスキーの初期作品「ロシア風スケルツォ(Scherzo à la russe)」 作品1 第1番を参考にしています。編曲にあたっては、言うまでもなく可能な限り少ない改編を念頭におきました。完成した編曲は338小節から成る約10分のソナタで、自信に満ちた若きチャイコフスキーの修辞的なジェスチャーと旋律的な抒情味が後に成熟した彼の個性を予期させます。(チャイコフスキーはこの作品の第2主題を「スケルツォ」 作品2 第2番のトリオに導入しています)。


レスリー・ハワード
70歳の記念を迎えるにあたり、レスリー・ハワードはフォロワー達から求められていた仕事を準備していた。たくさんの国で演奏したリストのオペラから着想を得た作品のプログラムだ。2018年にはリストの未録音作品をさらにもう1枚リリースした。100枚の全集から更に追加録音を行い続け、クラシックのソロアーティストが1人で成し遂げた業績として並ぶもののないものとなった(この追加録音はハイペリオンから2011年に発売された全集ボックスセットに収まるようになっている)。このプロジェクトにより、ハワードはギネスブックに載り、6つのレコード大賞、サンステファン勲章、ハンガリー文化賞、そしてリストの手の銅像をハンガリーの大統領より受け取った。
レスリーハワードは、大量のレコーディングと世界中でのコンサートツアーを半世紀にわたり両立してきた。レパートリーは常に聴衆に新しい経験をもたらすもので、固定観念への挑戦を行ってきた。世界でも最高のオーケストラと共演を重ね、室内楽の音楽家としても活躍し、世界最高峰の音楽家やアンサンブルと共演してきた。 リストのソロピアノ曲録音に加えて、他の世界初録音として重要なものの中に、ルビンシュテインの4つのピアノソナタやチャイコフスキーの3のピアノソナタ、そしてスカンジナビア半島の作曲家のピアノソナタの録音がある。彼の初期のグレインジャーのソロとデュオ(デヴィッド・スタンホープと)の録音は5枚組CDセットとしてEloquenceから再発売されている。 ハイペリオンに録音したルビンシュテインのピアノ五重奏曲集や、ArtCorpに録音した自作曲集「25の黒と白の練習曲」、ラフマニノフの二つのソナタをMelba Recordingsよりリリースしている。Melbaからはマッティア・オメットと共に、レナルド・アーンのピアノ2台及び連弾曲集(CD2枚組)をリリースしている。 進行中のものとしては、ブリリアント・クラシックスよりオメットと共にリストの2台ピアノ曲全集があり、第1弾はリスト自身による2台ピアノ版交響詩全12曲が収録されている(3枚組3セット)。最新のソロ作は、ヘリテージレーベルからリリースされた、ベートーヴェンの「エロイカ」変奏曲と「プロメテウスの創造物」のベートーヴェン自身によるピアノ版だ。 またハワードは優れた学者として、一次資料をあたり、室内楽全集を含む13巻のリスト集をリスト協会(ハーディプレス刊)から出版した他、30巻におよぶリスト協会ジャーナルへの音楽記事集、7巻の新リスト原典版をペータースからリリースしている(これには高評価を得た「ソナタ ロ短調」や「ダンテを読んで」が含まれている)。
他の校訂者としての業績には、パガニーニのヴァイオリン協奏曲5番を復元しオーケストレーションしたほか(イタリアのパガニーニエディションに収録)、ベリーニの「アデルソンとサルヴィーニ」のフルスコアや、現在定番となっているラフマニノフのピアノ協奏曲4番の二台ピアノ版(ブージー&ホークス)がある。

追加情報

重さ150 g
サイズ30 × 23 × 0.2 mm