ロン・イェディディア インタビュー

この翻訳はAlbany Recordsのご厚意により実現しました。Albany Recordsは1987年の設立以来、現代アメリカの作曲家・音楽家の紹介に努めてきた重要なレーベルです。英語原文はこちら。

私たちの出版社から最も多く作品を出版している作曲者の一人、ロン・イェディディアの最新インタビューをお届けします。当社の共同代表・江崎昭汰が彼の「ソナタ5番」を初演した際、イェディディアは来日して公演に立ち会いました。その際、私たちは彼と多くの話をして、彼の人となりを知ることができました。彼は、その類稀な才能を誠実さを持って音楽へ注ぎ込み、幅広い音楽への興味を持ち続ける音楽家です(彼はヘヴィメタルも聴いていると言っていました!)。彼の作品を知らない人も、最新音源『夕暮れと夜明けの24の前奏曲』の発売元・Albany Recordsが行ったインタビューを読めば、興味を持っていただけると思います。ご覧ください。


『夕暮れと夜明けの24の前奏曲』では、高い評価を受けるピアニスト、ギラ・ゴールドシュタインがピアノで情感を巧みに表現し、ロン・イェディディアの作品に命を吹き込んでいます。この曲集はコロナウィルスによるロックダウンの最中に作曲されたもので、イェディディアは孤独の時間を利用して、魂に響きながらも前向きな作品を生み出しました。作品には彼の師匠やインスピレーションの源、愛する人々への敬意と賛辞が込められています。

本日は、作曲家・演奏家たちの内面と人柄に迫るブログシリーズ「Inside Story」にて、ロン・イェディディアをご紹介します。彼のクラシックとジャズの両分野にわたる豊かな経験と、それぞれが彼の芸術的な道程にどのように寄与したかをご覧ください。

あなたの音楽遍歴において、最も大きなインスピレーションは何でしたか?

多くのものがありましたが、まず何より、私は多くの音楽がすでに生みだされた時代に生きていることを非常に幸運だと感じています。何世紀にもわたって発展したクラシック音楽に始まり、20世紀に登場し現在も進化を続けている多様な非クラシック音楽ジャンルまで。もし私が100年あるいは200年前に生まれていたら、これらの貴重な宝物に出会うことはなかったでしょう。偉大な巨匠たちによって讃えられてきた多様な音楽の流派やスタイルに触れてきたことが、私の折衷的な音楽の好みを形作り、作曲家および複数のアンサンブル創設者としての多様性を育ててくれました。

具体的には、私のクラシックピアノにおける最大のアイドル・作曲家は、リスト、ショパン、シューマン、ドビュッシー、ラヴェル、スクリャービン、ラフマニノフです。一方で作曲全般においては、バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーン、ブラームス、チャイコフスキー、ムソルグスキー、プロコフィエフといった不朽の作曲家たちに多くを負っています。

伝説的ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツは、私が音楽において経験した中でも最も奇跡的かつ変革的な存在です。他に私のトップリストにいるピアノの巨匠たちは、コルトー、フリードマン、ルービンシュタイン、シフラ、カペル、アルゲリッチ、ポゴレリチ、スルタノフ、そして私の師であり「イスラエルのピアノのファーストレディ」と称されるプニナ・ザルツマンです。

ジャズでは主に、オスカー・ピーターソン、アート・テイタム、チック・コリア、キース・ジャレット、そしてベーシストのジャコ・パストリアスに大きな影響を受けました。ポップスの世界では、スティーヴィー・ワンダー、エルトン・ジョン、ビリー・ジョエルに惹かれました。とはいえ、このリストはまだまだ長くなります。

初めての演奏について教えてください。

私が初めて演奏したのは1966年、6歳のときです。父が私にアコーディオンの弾き方を教えてくれました。わずか数週間の練習で、ブラームスの《ハンガリー舞曲第5番》やモーツァルトの《トルコ行進曲》などのアコーディオン編曲をマスターしました。幼かった私は、自分が特別な演奏能力を持っているとは自覚していませんでしたが、当時イスラエルで著名な俳優だった父が、自分の一人芝居に「神童」として私を登場させることに決めたのです。最初の公演は、イスラエル北部のギバット・ハビヴァ文化センターでした。小さな体でアコーディオンを抱えると顔の半分が隠れてしまうほどでした。演奏内容はあまり覚えていませんが、野外ステージでの夏の夜、演奏するたびに観客から巻き起こった熱狂的な歓声が今でも心に深く刻まれています。そのとき、音楽を通して、私には特別な力があり、それを人と分かち合う必要があると気づき、それ以来、音楽との絆は私の人生に根付いています。

音楽家として成長する中で、影響を受けたものはどのように変化しましたか?

最初はすべてクラシック音楽でした。アコーディオンでは軽めの曲、ピアノではよりシリアスな作品。クラシックと軽音楽の融合に魅了され、両者に対して驚嘆していました。ラジオやテレビで耳にしたイスラエルのポピュラー音楽からも大きな影響を受けました。特にサーシャ・アルゴフ、モシェ・ヴィレンスキー、ナオミ・シェメル、マティ・カスピ、ヨニ・レヒテル、ナタン・コーエンといった卓越した作曲家たちの作品です。子供の頃にいくつかの歌を作曲しましたが、のちにサーシャ・アルゴフと親交を深めたことで、1995年の彼の逝去直後から200曲以上のアート・ポピュラーソングを生み出すきっかけとなりました。

1970年代半ばにオスカー・ピーターソンをきっかけにジャズに出会い、チック・コリア、キース・ジャレット、ジャコ・パストリアスに影響を受けました。これが私のジャズ風の作品群や1980年代初頭に創設したクロスオーバーカルテット「Prophets」、そして2017年には即興性の強いジャズトリオ「Prophets Trio」の設立につながりました。アコーディオンや民族音楽への関心から、2009年には世界各地の有名な民謡や舞曲と私のオリジナル民謡風レパートリーを演奏するワールドミュージックのクインテット、「DanzaNova」を立ち上げました。

また、ジュリアード音楽院在学中に無調的な現代音楽を作曲していた初期のスタイルから、卒業後にはロマン主義、印象主義、ジャズなどを融合した調性的な音楽へと自然に変化していったことも、私の音楽人生における大きな転機です。

あなたが創造性を最も発揮するのは、いつ、どのような場所でですか?

夜です。世界が静まり返るこの時間帯は、教えること、事務処理、出版、録音、そして愛する妻と4人の子供たちの世話といった日常の多忙から解放され、自分の時間に没頭できます。私は夜から朝方までよく活動しており、その時間を作曲、練習、即興、執筆、思索、企画に分けて使います。作曲と即興のインスピレーションは、ほぼ常に私の中に宿っています。そのため、創造のペースは予測不能で、空き時間の多さに左右されます。とはいえ、私は夜の雰囲気とその自由を愛しています。

あなたが見た中で最高の演奏は?それが特別だった理由は?

「最高の演奏」と言えるものはいくつかありますが、最初に私に深い衝撃を与えたものについてお話しします。

それは私の恩師であるプニナ・ザルツマンが、1970年代後半にテルアビブ美術館で行ったリサイタルの中で演奏したショパンの《ピアノ・ソナタ第3番》でした。彼女のピアノを完全に制する能力と詩的表現、そしてショパンへの敬愛は、常に聴衆を驚かせていました。この演奏では、彼女が名声を得たベルカント的な音色、彼女の師であるアルフレッド・コルトーから受け継いだ詩的な想像力、そして最終楽章の壮絶な苦悩と希望の光、比類なき気品が見事に融合していました。

他にも忘れられない演奏は、ホロヴィッツのカーネギーホール公演(モスクワ帰還直前の1986年)と、ジャコ・パストリアスが亡くなる直前に行ったNYCのローンスター・カフェでのクラブ公演(1987年)です。どちらも私は終演まで涙を止められませんでした。彼らはまるで天から降りてきた存在のようで、心、魂、体の奥底から湧き上がる力に完全に取り憑かれていたのです。

あなたの芸術的遍歴に最も影響を与えた音楽的な師は誰ですか?今も心に残る教えは?

私の人生には2人の偉大な師がいます。

1人目は、やはりプニナ・ザルツマンです。彼女は私が15歳のときから私の才能を信じてくれ、ピアニストとして、そして作曲家としての道を力強く後押ししてくれました。彼女の知恵、知識、ユーモアは今でも私の中で生き続けています。

もう1人はジャズの世界での師、ハイム・コットンです。1980年代初頭に私たち2人がニューヨークに移住する直前、イスラエルで出会い親交を深めました。私は長年ジャズに親しんできましたが、40代になって本格的に学び始めました。彼は私に最も明快な方法論とともに、ジャズの文化、起源、発展、そしてクラシックとはまったく異なるそのライフスタイルを教えてくれました。彼のおかげで私は今日のような即興演奏に長けた音楽家となれたのです。

楽譜 (紙版 / PDF版

Ronn Yedidia(ロン・イェディディア)

ロン・イェディディアの作品は世界中のソリスト、アンサンブル、オーケストラによって委嘱・演奏されており、多くの聴衆と批評家を魅了してきました。2007年5月には、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団によって《Steps In The Wonderland》が世界初演されました。主な委嘱元には、サンアントニオ国際ピアノコンクール、シアトル室内楽協会、ニューヨークのザミール合唱団などがあります。

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