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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。2023年1月の新刊情報をお届けします。本日より印刷版のご予約の受付を開始いたします。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2023年1月25日です。
モーリス・ラヴェル/ウラディーミル・レイチキス:ボレロ(独奏編曲)
ピアノの巨匠 ゲンリフ・ネイガウスの晩年の弟子のひとりであるウラディミール・レイチキス。彼はアメリカを中心に教育家及び演奏家として活動していましたが、編曲家としても名が知られ、ストラヴィンスキーの「春の祭典」のピアノ独奏版(シャーマー社)はこれまでに多くのピアニストによって取り上げられています。
レイチキスの編曲作品は演奏効果が非常に高く、他にも数曲の編曲が存在します。「春の祭典」以外の編曲作品の楽譜は絶版ないし未出版、数多くのピアニストが探し求めていましたが様々な事情により入手には困難を極めました。また、レイチキスが2016年にこの世を去ったことにより、彼の編曲作品の楽譜の出版は絶望的に難しいかと思われていました。しかし、ピアニストのサンドロ・ルッソの協力により、レイチキスの遺族の許諾のもとレイチキスの編曲作品の出版プロジェクトが始動しました。
第1弾として、ラヴェル作曲/レイチキス編曲の「ボレロ」の楽譜を出版します。この編曲は、ピアニストの大瀧拓哉氏によって2021年6月20日に日本初演が行われたことで出版を望む声が多方からあがっていました。
【印刷版】
サンドロ・ルッソの解説より
このピアノ独奏版のモデルは、ほぼ間違いなくラヴェルの2台ピアノ版《ボレロ》であるように思われますが、曲が激しくなり、楽器の質量が増すにつれて、レイチキスはよりオーケストラ・スコアに忠実なアプローチを選択しています。例えば、リズムのオスティナートに関して、2台ピアノ版ではラヴェルがオクターブやトレモロを用いて巧みに単純化していたものを、レイチキスはオクターブの高速反復やアルカン風の和音を惜しみなく用いています。いずれも、ヴィルトゥオーゾのテクニックに耐えうる手首の強さが必要となります。
ウラディミール・レイチキス(Vladimir Leyetchkiss)
1934年8月8日、ロシア生まれ。アントン・ルビンシタインの孫であるジョルジュ・シャロエフのもとでピアノの学び、その後、モスクワ音楽院にてゲンリフ・ネイガウスに師事する。1974年、アメリカ合衆国に亡命。シカゴのデポール大学で教鞭を執る。レイチキスは、編曲家としても知られ、これまでにイゴール・ストラヴィンスキーの《春の祭典》(シャーマー社)やポール・デュカの《魔法使いの弟子》(ムジカ社)、セルゲイ・ラフマニノフの《組曲 第2番》(ミューズ・プレス社より刊行予定)などのピアノ独奏編曲を生み出した。ピアニストとしては、CDアルバムをCentaur Recordsより《Great Piano Transcriptions》をリリースしている。2016年10月11日、イリノイ州エヴァンストンで亡くなる。
ユリアン・スクリャービン:4つの前奏曲(解説:山本明尚)
ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンには、作曲家を志した息子がいました。彼の名は、ユリアン(ユリアーン)・スクリャービン。1908年に生まれ、1919年に11歳という幼さでこの世を去りましたが、彼は4つのピアノ曲を残したとされています。彼の作品は、父スクリャービンの中期から晩年の作品を彷彿とさせるもので、夭逝が悔やまれます。この度、楽譜を出版するにあたって息子ユリアン及び作品に関する解説を音楽学者である山本明尚が執筆しました。
【印刷版】
ユリアン・スクリャービン
1908年生まれ。父は、ロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービンである。 幼い頃から専門的な教育を受け、ピアノ演奏と作曲において頭角を現し、レインゴリト・グリエールに師事した。しかし、1919年6月下旬、ユリアンの溺死体がドニエプル川で発見されその生涯を閉じる。溺死体となってしまった詳細、正確な死亡日はいまだ不明である。
山本 明尚(やまもと あきひさ)
音楽学者。専門領域は19世紀後半〜20世紀初頭のロシア芸術音楽。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業。在学中に安宅賞、卒業時にアカンサス音楽賞、同声会賞を受賞。同大学院音楽研究科修士課程修了、大学院アカンサス賞を受賞。また、2016年にはモスクワ音楽院ロシア音楽史学科研究実習を修了。現在、東京藝術大学大学院音楽研究科博士課程およびロシア国立芸術学研究所音楽史専攻に在籍。2017〜2020年まで、日本学術振興会特別研究員(DC1)。2020・2021年度公益財団法人ローム ミュージック ファンデーション奨学生。近著に「プロレトクリトの『音楽教化』:イデオロギー的プログラムと日常的実践」(2022年)。訳書にチャイコフスキー『実践的和声学習の手引』(2022年、音楽之友社)。
フランツ・リスト:ショパンによるピアノソナタ第3番の 終楽章(207-253小節)のための変奏 S. 701w(校訂・解説:トマシュ・カミェニャク )
リストによる自作、編曲や校訂集などには様々なタイプの変奏が見られます。特にCotta社刊行のリスト校訂のウェーバーやシューベルトの作品集、スメタナ、タウジッヒ、ラフ、ルービンシュタインなどの作品の冒頭や終盤、弟子のために書かれた自作に添えられた変奏やオッシアなどは非常に注目に値します。今回、ミューズ・プレスから出版される楽譜は、フレデリック・ショパンのピアノソナタ第3番の終楽章のために書かれた変奏です。この変奏は、一説にはリストの弟子であるオルガ・ジャニナのために書かれたと言われています。
【印刷版】
フィナーレ全体を見ると、リストは実に賢明かつ論理的にこの変奏を書き上げています。この楽章はロンド形式であり、6/8拍子で始まります。主題は左手が4分音符(ポリリズム)、その後16分音符で、規則正しく再現され、その後16分音符の代わりに5分音符が導入されると、ポリリズムのパターンを生み出します。その後、左手の跳躍による規則的な3連符が現れ、フィナーレの表情と力強さを自然に高めています。
― トマシュ・カミェニャクの解説より
トマシュ・カミェニャク(Tomasz Kamieniak)
トマシュ・カミェニャクはピアニストであり作曲家である。フランツ・リストやシャルル=ヴァランタン・アルカンの曲はもとより、知名度の低い作曲家の曲も好んで演奏している。 カトヴィツェのポーランド国立カロル・シマノフスキ音楽アカデミーのピアノ科にて、ヨアンナ・ドマンスカに師事。卒業後は、ドイツのフランツ・リスト・ヴァイマル音楽大学のロルフ=ディーター・アレンスに師事した他、コンスタンチン・シェルバコフ(マスタークラス)、ズビグニエフ・ラウボ教授(カトヴィツェの大学院)、ロンドンのレスリー・ハワードの下でさらに演奏技術に磨きをかけた。 第4回ワイマール国際フランツ・リストコンクールにて特別賞受賞。 出版社Acte Préalable主催の第4回録音プロジェクト「忘れられたポーランドの音楽」コンクールでグランプリを受賞し、ヨゼフ・ヴィニアフスキのピアノ作品を録音。カトヴィツェの政府機関であるマーシャル・オフィスとバイロイトのワーグナー協会から奨学金を授与されたほか、タルノフスキー・ゴーリー市長から文化的功績を称えて賞を授与されている。