2022年9月の新刊情報(ニコラス・ナモラーゼ、ロン・イェディディア)

2022年9月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。また、近日中にPDFの予約販売も開始予定です。これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年9月25日です。

ラフマニノフ/ニコラス・ナモラーゼ:アダージョ(交響曲第2番 作品27より)ピアノ独奏版
世界で活躍するコンポーザー=ピアニストであるニコラス・ナモラーゼの初の編曲作品が遂に出版です。ラフマニノフのオーケストラ作品で最も有名な曲のひとつ、アダージョ(交響曲第2番 作品27より)は、作曲から約100年経ても多くの人々を魅了し続けています。これまで数多くのピアノ独奏編曲が生み出されてきましたが、作曲家の顔も持つナモラーゼによってピアノ曲として完成度の高い編曲に仕上がりました。原曲のハーモニーを尊重しつつ、オーケストラのもつ重厚感をピアノで表現することに見事成功し、作品の後半ではピアニスティックなパッセージも登場し演奏者はもちろん、聴衆も飽きさせません。演奏には高度な技術が求められますが、非常に演奏効果の高い編曲です。

冒頭部分
後半部分

Pianists will delight in this exciting transcription by Nicolas Namoradze of a symphonic masterpiece.

—— Norma Fisher (Pianist)

ニコラス・ナモラーゼ(Nicolas Namoradze)
コンポーザー=ピアニストのニコラス・ナモラーゼは、クラシック音楽最高峰のコンクールの1つでもあるカナダのカルガリーで開催されたホーネンス国際ピアノコンペティションで2018年に優勝し、国際的な注目を浴びるようになりました。批評家からは「輝かしく…繊細で色彩豊かである」(ニューヨーク・タイムズ)、「実に豪華である」(ウォール・ストリート・ジャーナル)などと高い評価を受けている他、WQXRの「20 for 20:Artists to Watch/クラシック音楽を再定義する今注目すべきアーティスト」の1人として選ばれました。作曲家としてはケン=デイヴィッド・マズア、テッサ・ラーク、メトロポリス・アンサンブル、モメンタ、ヴェローナ、バルカーダ四重奏団などの主要アーティストやアンサンブルによって作品が演奏されています。また、チェルシー音楽祭、ホーネンスフェスティバル、サンタフェなどの音楽祭からの委嘱で昨比を書いています。他にも、ファビエンヌ・ヴェルディエ監督の映像作品「Walking painting」やフランスのエクサン・プロヴァンス音楽祭に関連して制作されたショートフィルム「Nuit d’opera a Aix」にも参加しています。


ロン・イェディディア:12の大練習曲 第1集 第2巻(第5番-第8番)
2021年11月から出版が始まったロン・イェディディアによるピアノ独奏のための作品、その名も「大練習曲(Grand Etudes)」。全24曲作曲され、完結までに約30年近くを要しました。これらの作品の一部は、イェディディア自身によって演奏・録音され、多くのピアノファンの中を魅了しています。今回は、1994年と1995年に作曲された第5番から第8番までの作品を出版します。この作品が書かれた時期は、まるで異世界の源からミューズが降りてきたかのように、「宇宙的なインスピレーション」が高まった時期であったと作曲者は語っています。

■収録楽曲
大練習曲第5番 / 大練習曲第6番「日の出」/ 大練習曲第7番「洋上の飛行」/ 大練習曲第8番「夜の砂漠の呼び声」

ロン・イェディディア(Ronn Yedidia)
彼の作品は過去20年間に国際的な注目を浴びるようになりました。作品は世界の主要なコンサートホールで取り上げられている他、映画、ラジオ、テレビ番組にも登場し、彼の作曲家兼ピアニストとしての地位を確かなものにしています。1960年、イスラエルのテルアビブに生まれ、アルフレッド・コルトーの弟子であったプニーナ・ザルツマンのもとで幼い頃からピアノを学びました。
現在までにイェディディアの作品は、EMIやナクソス、ソニーBMGなどの大手レーベルにも収録されました。アメリカのレーベル・Altarusによってリリースされた自作自演アルバム『Yedidia Plays Yedidia』は世界中の作曲家やピアニストから注目を浴び話題となりました。また、ニューヨーク・ピアノ・アカデミーの創設者でもあり、後進の育成に努めています。


これまでにミューズ・プレスから出版されたロン・イェディディア&ニコラス・ナモラーゼのピアノ作品

2022年8月の新刊情報(ダニエル・クラーメル、ロベルト・ピアーナ、アントニオ・ポンパ=バルディ、ユーニー・ハン、ヴァーツラフ・クラフリーク)

2022年8月の新刊情報をお届けします。本日よりご予約の受付を開始いたします。
なお、これらの楽譜の販売・発送開始予定日は2022年8月25日です。

ダニエル・クラーメル:6つの演奏会用練習曲 & クレド
ウクライナ出身のジャズピアニストであるダニエル・クラ―メルのピアノ作品がミューズプレスから出版です。今回出版する《6つの演奏会用練習曲》は1987年、ロシア(旧ソ連)の出版社からニコライ・カプースチンの《8つの演奏会用練習曲》と合本で9930部ほど発行されたにも関わらず大変入手困難な楽譜でありました。しかし、今回の再出版にあたって、クラ―メルによって運指の追加、テンポの見直しなど楽譜が改訂されることになりました。また、演奏会用練習曲と併せて、これまでは第三者による非公式の採譜版しか出回っていなかった彼の代表作である《クレド》のロングバージョンもクラーメルによって監修され、この楽譜に正式版として収録されました。


V.クラフリーク:ジャズの様式による練習曲 – ピアノのために 第1巻(第1番-第5番)
チェコ共和国のピアニストであるヴァーツラフ・クラフリーク作曲による《ジャズの様式による練習曲》(全15曲・全3巻予定)の楽譜が遂に刊行開始します。クラフリークは幼い頃から父の影響でジャズやクラシック音楽を親しみ、プラハ音楽院ではヨゼフ・スークのピアノ作品の演奏で知られるパヴェル・シュチェパーンのもとでピアノを学びました。彼は「自分自身を作曲家と意識したことない」と語っており、今回出版される《ジャズの様式による練習曲》は、時間の経過と共に決まった形をとるようになったクラフリークの即興演奏が投影されたものであり、この”即興演奏”は、ジャズやクラシック音楽の語法に基づいたものです。1曲あたり3~4分と演奏会のアンコールピース、発表会で披露する曲としても大変ピッタリです。


ラフマニノフ/ユーニー・ハン:アンダンデ・カンタービレ《パガニーニの主題による狂詩曲》より(ピアノ独奏版)
数々のピアノコンクールに入賞し、現在は香港バプティスト大学ピアノ科助教授を務めるユーニー・ハン。彼女がセルゲイ・ラフマニノフ作曲《パガニーニの主題による狂詩曲》の最も有名な第18変奏「アンダンテ・カンタービレ」をピアノ独奏用に編曲をしました。この編曲は、2020年にリリースしたピアノアルバム「Hollywood Romance」(Universal Classics)に収録されています。この「アンダンテ・カンタービレ」は、1980年公開の恋愛映画『ある日どこかで』の愛のテーマとして使われているほか、CMなどでもよく使用されていることから、ラフマニノフの書いたメロディの中でももっとも有名なものでしょう。


レスピーギ/アントニオ・ポンパ=バルディ:ヴァイオリン・ソナタ(ピアノ独奏版)
「ローマ三部作」で知られるイタリアの作曲家であるオットリーノ・レスピーギの作品の中でも傑作と言われれている《ヴァイオリンソナタ》がアントニオ・ポンパ=バルディの手によって“ピアノソナタ”として生まれ変わりました。この編曲はコロナウィルスが大流行した時期に数ヵ月ほどで書き上げられ、ポンパ=バルディの自奏動画がYouTubeに投稿されました。演奏動画は大好評で楽譜の出版を望む声が多くありました。曲中では、より効果的な音響空間を作り出すためにソステヌート・ペダルを多用する必要があり、必然的に難易度の高い作品に仕上がっています。なお、演奏動画ではポンパ=バルディの高度なペダルテクニックを垣間見ることができます。


ロベルト・ピアーナ:プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲(ピアノのために)
イタリアを代表するコンポーザー=ピアニストであるロベルト・ピアーナはピアノのためのオペラ・パラフレーズ(幻想曲)を書く行為を「楽曲を洗練する上での研究所」と語り、この創作行為を通して、ピアノの可能性を追求しました。今回、ピアーナによって作られた「プッチーニの《ラ・ボエーム》による大幻想曲」は、演奏に約30分かかり、演奏には技術的にも音楽的にも大変な労力を要します。曲中、私たちが一度はどこかで聞いたことがある「私の名前はミミ(Sì, mi chiamano Mimì)」や「私が街を歩けば(Quando men vo)」、 「年老いた外套よ、きいておくれ(Vecchia zimarra, senti)」などのアリアも登場し、どこか親しみを感じることでしょう。

平野義久によるピアノ曲「10のプレリュード」&「薔薇の奇蹟」初出版

劇伴作曲家として活躍する作曲家・平野義久によるピアノ曲が待望の初出版です。「10のプレリュード」は、それぞれ花の名前がタイトルとして記され、繊細でメランコリックな作風から力強い情熱的な作品が並んでいます。「薔薇の奇蹟」は、フランスの小説家であるジャン・ジュネの世界観にインスパイアされ、若かりし頃の平野義久が感じたジュネが醸し出すダンディズム、ロマンティシズムが色濃く描かれています。

作品名:10のプレリュード&薔薇の奇蹟(ピアノのために)
作曲:平野義久
価格:3500円(税抜)
ページ数:52
解説:平野義久(日本語・英語)

商品購入ページはコチラ

楽譜の発送は、3月7日(月)から順次行います。

― Contents (目次) ―
「10 Préludes (10のプレリュード)」
I. Mangnolia
II.  Forget-Me-Not
III. Dahlia
IV. Tuberose
V. Gymnaster
VI. Tatarian Aster
VII. Christmas Rose
VIII. Snowdrop
IX. LyCoris
X. Blue Rose

「Le miracle de la rose (薔薇の奇蹟)」

平野義久による楽曲解説
 本作品のCDが出た時、私はブックレットに「10 Préludes(10のプレリュード)」はポップス作品だと書いた。些かイキッた表現で、今読み返すと正直恥ずかしくもなるのだが、実際それは本心に違いなかった。
 だがその時、私はこの「ポップス」という言葉を、あるひとつのイデーに集約させて、独断的な解釈を施していた。それに則った作品ということで、本作をして「ポップス」などとうそぶいた訳なのだが、さてここで、ひとつきちんと警告せねばならない。もし本作を額面通り「ポップス」だと思ってピアノに置いたならば、あなたは大いなる困惑に苛まれることになる。つまり、本作品は本来のポップス的な音楽的形式やスタイルからは著しく乖離している。本作をポップスたらしめる要素はただひとつ、上記のイデー、すなわち「表現者と聴者のシンパシーの共有」のみである。


平野義久

1971年12月7日和歌山県新宮市生まれ。5歳よりヴァイオリンを始める。バロック音楽に魅了され、小学生の頃から独学で作曲を始める。高校時代にジャズと邂逅、また、ジョン・ゾーンへの心酔を契機に現代音楽に心惹かれるようになる。一方で、ショスタコーヴィチの交響曲に強い感銘を受け、本格的な作曲の修行を決意する。
高校卒業後紆余曲折を経て渡米、イーストマン音楽院で作曲をクリストファー・ラウス、ジョセフ・シュワントナー両氏に師事する。バタイユ、クロソウスキー、マンディアルグ、ジュネら20世紀フランスの作家・思想家に傾倒し、授業もそっちのけで多くの時間を読書、そして作曲に費やす。
紆余曲折を経て同院中退、その後帰国。さらなる紆余曲折を経て2001年に劇伴作曲家としてデビュー。以来今日に至るまで数多くのサウンドトラックを世に送り出している。
文学・哲学から落語・モードファッション、さらには動物・昆虫・素粒子までこよなく愛する好奇心旺盛な作曲家。ただし幼少時のトラウマ体験により芋虫恐怖症。

【楽譜出版決定・予約受付中】Konami Amusement (Virkato Wakhmaninov): ピアノ協奏曲第1番”蠍火” – ピアノソロ編曲:角野隼斗(かてぃん)

現在世界中から注目を浴び活躍しているピアニスト、角野隼斗(かてぃん/Cateen)がピアノソロ用に編曲したピアノ協奏曲第1番”蠍火”(作曲:Konami Amusement/Virkato Wakhmaninov)の楽譜が待望の出版です。

この曲は10代の角野に衝撃を与えた楽曲のひとつで、2019年にYouTubeで公開されると大きな話題となり、2022年2月現在で228万回再生を記録しています。もともと”蠍火”は音ゲー(曲やリズムに合わせて操作をしてスコアを競う音楽ゲーム)である「beatmania IIDX 11 IIDX RED」収録曲のひとつですが、タイトルからも分かるようにクラシック的な要素が強く、ピアノ協奏曲に相応しい情熱的な作品です。その作品が角野の手により演奏効果の高い、ピアニスティックな編曲に仕上がりました。この楽譜を演奏動画と楽しむも良し、ピアノの前で音に出してみるのも良し、様々な形でお楽しみいただけることでしょう。

楽譜の販売日は2月22日です。現在、以下のページより予約受付中です。
https://muse-press.com/item/mp05001/

作品名:ピアノ協奏曲第1番”蠍火”
作曲:Konami Amusement (Virkato Wakhmaninov)
ピアノソロ編曲:角野 隼斗(かてぃん)
価格:2000円(税抜)
ページ数:16
解説:角野隼斗(日本語・英語)
ISBN:978-4-909668-68-4
出版:合同会社ミューズ・プレス

本商品は、株式会社コナミアミューズメントとの契約により許諾された権利を使用して、合同会社ミューズ・プレスが製造したものです。



角野隼斗

1995年生まれ。2018年、東京大学大学院在学中にピティナピアノコンペティション特級グランプリ受賞。これをきっかけに本格的に音楽活動を始める。2021年、第18回ショパン国際ピアノコンクールでセミファイナリスト。これまでに読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、国立ブラショフ・フィルハーモニー交響楽団等と共演。2018年9月より半年間、フランス音響音楽研究所(IRCAM)にて音楽情報処理の研究に従事。これまでにジャン=マルク・ルイサダ、金子勝子、吉田友昭の各氏に師事。

東京大学大学院を卒業し、現在は国内外でコンサート活動を行う傍ら、“Cateen(かてぃん)”名義で自ら作編曲および演奏した動画をYouTubeにて配信し、チャンネル登録者数は92万人超、総再生回数は1億回(2022年2月現在)を突破。2020年12月にリリースした1stフルアルバム「HAYATOSM」(eplus music)は、オリコンデイリー8位を獲得。「情熱大陸」「バース・デイ」「題名のない音楽会」などテレビ出演多数。CASIO電子楽器アンバサダー、スタインウェイアーティスト。クラシック音楽に確かな位置を築きつつも、ジャンルを越えた音楽すべてに丁寧に軸足を置く、真に新しいタイプのピアニストとして注目を集めている。
https://hayatosum.com/

Hayato Sumino ©︎@ogata_photo

ショータの楽譜探訪記(3)「ピアニスト探訪(1)」

こんにちは、ショータです。前回の記事から随分と期間が空いてしまいました。楽譜の蒐集に励んでかれこれ13年ほど経ちますが、この世の中にはまだ出会ったことの無い楽譜が沢山あります。去年、私の友人の紹介により素敵なご縁があり、明治~昭和の激動の時代を生きたピアニストが遺した歴史と貴重な楽譜を拝見する機会がありました。

ご遺族から詳しいお話をお伺いすることができました。今回、ご紹介する方はピアノ教師・ピアニストの池田春江さんです。

池田春江 (1901-1984)

1901年(明治34年)4月5日、横浜で生まれ、東洋英和女学院(東京都)を卒業後、神戸女子学院に入学するも直後に母親の急逝に伴い中退し、横浜に戻ることとなりました。

その後は、YMCA(キリスト教青年会)などで音楽や英語など学び、ピアノはルーマニアから亡命したカテリーナ・トドロヴィチ(Katerina Todorović)女史に師事しました(トドロヴィチ女子は後にアメリカに亡命)。その後は、ピアノ教室を横浜を拠点に主宰し、1927年からは池田春江門下生によるピアノ発表会(白百合会)を戦時中も中断することなく毎春に半世紀に渡り主催しました。また、ご長男が結核で早世してから熱心なキリスト教徒となって以来、日曜日の礼拝ではオルガニストも務めました。教会のチャペルや納骨堂の建築にも援助してたそうです。

海外には渡航したことが無かったそうですが、英語が大変堪能だったということと、横浜という土地柄もあり、戦中を除き戦前・戦後を通じて半数近くの生徒が外国人でした。門下生発表のプログラムによると、池田春江さん自身も発表会の最後に恩師のトドロヴィチ女史と共にグリーグやアントン・ルービンシュタインなどのピアノ協奏曲を2台ピアノで演奏することもあったそうです。1984年(昭和59)7月3日に横浜で83歳の生涯を閉じました。

カテリーナ・トドロヴィチと池田春江
池田春江門下生 ピアノ演奏会 プログラム

ピアノ演奏会では、トドロヴィチ女史の伴奏で難曲として知られるアントン・ルービンシュタインのピアノ協奏曲第4番の第1楽章を演奏しています。当時は(今も!)滅多に聴くことができない作品だったでしょう!

池田春江門下生 ピアノ演奏会 プログラム

先述したように横浜という土地柄、そして米軍関係者並びにその家族にピアノを教えていたこともあり、門下生演奏会のプログラムにはアメリカのピアノ作品も数多く並びました。また、池田春江さんの遺品の中にはアメリカのピアノ雑誌「ETUDE」もあり、アメリカのピアノ事情には大変詳しかったことでしょう。それらの雑誌や貴重な楽譜は、幸運なことに横浜空襲などの戦火から逃れ、ご遺族によって大切に保管されていました。

今回、ご遺族より譲り受けました池田春江さんが所蔵していた楽譜を紹介いたします。

レオポルド・ゴドフスキー:F. ショパンの作品25-4の左手のための編曲 (G. Schirmer)
1899年に刊行された初版。後に出版されたLienau(Schlesinger)版とは異なるプレートです。
松平頼則:ミュジック・ボックス(チェレプニン・コレクション:龍吟社)
本楽譜は1000部のみ印刷。チェレプニン・コレクションは滅多に流通しない超貴重な楽譜です。
ハインリヒ・ヴェルクマイスター:ピアノ作品集 第2番「間奏曲」(初版)
なんと作曲者本人による献辞付き!池田春江さんに贈られています。
左)アントン・ルービンシュタイン:ピアノ協奏曲第5番(初版・Bartholf Senff)
右)ツェルニー:トッカータ(Kistner)

2021年現在から見ても、あまり知られていない隠れた作品の楽譜も多く、お歳を召されてからも多種多様な作品の楽譜を手に取っていたことが池田春江さんによって楽譜の表紙に書かれた西暦から伺えました。生涯にわたって探究心を持って学び続ける姿勢に頭が下がる思いです。

現在はインターネットを使えば容易に楽譜の注文ができ、1週間も経てば楽譜が手元に届きます。当時はどのようにしてこれらの楽譜を入手していたのでしょう?楽器店で注文できたとしても数ヵ月は平気で待つことになったことでしょう。また当時出版されていた楽譜が必ず入手できるとは限りませんし、社会情勢にも大きく影響されたことでしょう。これらの初版を含む貴重なコレクションを池田春江さんがどのように入手されていたかは分かりません。楽譜には池田春江さんのサインも書き込まれ、楽譜に対する愛着を感じます。

今回、池田春江さんのご遺族から譲り受けた楽譜は次の世代に残すために大切に保管することにします。本記事の執筆のために写真やプログラム等の資料を快くご提供いただきました池田春江さんのご遺族に心より感謝申し上げます。

孫たちと共に

「ショータの楽譜探訪記」のご感想等ございましたら、こちらからお寄せください。
記事作成:ショータこと江崎昭汰


江崎昭汰
福岡県出身。大分県立芸術短期大学を卒業後、ベルギーのリエージュ王立音楽院ピアノ科に入学。5年間に渡るベルギー滞在中において、ヨーロッパ各国でピアニスト及び伴奏家として演奏活動の傍ら、各国の図書館や中古楽譜店を巡り楽譜の蒐集を行った。修士課程を卒業後は日本へ帰国。現在はIT関係の仕事に従事しつつ、休日には演奏活動や合同会社ミューズ・プレスの共同代表を務める。これまでにCD『黛敏郎の秘曲/江﨑昭汰のピアノ演奏による』(スリーシェルズ)をリリース。

エドゥアルド・バグダサリアン:ピアノのための「24の前奏曲」

24の前奏曲(表紙)

エドゥアルド・バグダサリアン、彼はアルメニアをの音楽を語る上で絶対に欠かせない作曲家。彼の代表作のひとつであるピアノのために書かれた「24の前奏曲」を出版します。「24の前奏曲」は、1951年、1953年、1954年、そして1958年にそれぞれ6曲ずつ作曲され、1961年に初出版されました。しかしながら、程なくして絶版となり、楽譜の入手も極めて困難となりました。今回、アルメニアのピアノ音楽のスペシャリストとしてもを知られるアルメニア出身・アメリカ在住のピアニストであるラフィ・ベサリアンによって誤植が多数存在していた初版楽譜が見直され、新たにベサリアンの校訂版として登場します。また、ベサリアン自身による運指も付け加えられ、これから作品を学ぶ方にとって手助けとなるでしょう。

ご予約はこちらから
(発送予定日:2021年11月2日)
5000円(税込)|菊倍版(リング製本)|82頁
校訂・運指:ラフィ・ベサリアン
ISBN978-4-909668-79-0

「24の前奏曲」の中でも代表的な作品である第6番(演奏:ラフィ・ベサリアン)

ラフィ・ベサリアンによる楽曲解説
特異な発想、充溢した比喩的イメージ、濃厚で新鮮なハーモニーの表現、民謡に感化され更にバグダサリアンによってより濃くされたアルメニア音楽の色彩はこの作曲集特有のものである。更にバグダサリアン自身の流暢な鍵盤さばきが様々なピアノテクニックを用いた多種多様な個々の前奏曲の作曲を発展する根源となったのであろう。第2番は舞曲であり、アルメニア民謡の中でももっとも流行したスタイル、そしてこの作品集内でもよく使われているジャンルである。それとは別に第3番は東洋風のプレストエチュード。そして、第4番は技巧的なトッカータ。もっとも表現豊かでロマンチックな壮大たる第6番は、色彩豊かでヴィルトゥオージックな『絵画』であり、アルメニアの広大な風景を連想させ、「24の前奏曲」のハイライトと言える程の代表的な作品である。エスニックな遊び心にジャズ的な要素を含みながらも中間にベースラインのソノリティーが駆動する第7番。儚い美しさの中にニューエイジ音楽を仄めかす第8番では、上品に透明感のある印象主義的なカラーをも纏う。第9番は優雅なメヌエット。そして、第11番でバグダサリアンは、ひとつの独特なフィギュレーションを曲全体において発展させ、ミステリアスなトランクイロ(A部, A’部)が底力のあるダンスのような展開部(B部)と見事に並置される。印象音楽のようにはじまる第14番はやがて情熱的なラフマニノフのように中部で迫力とドラマを伴う。第18番はショパンのような親密なノクターン。短い曲である第23番のトッカータは本作品集内のもうひとつのクライマックスとなり、痛烈かつ刺激的である第24番はそのラプソディックな気質にとても感動的なアルメニア歌曲のようなメロディーをたずさえる。まるでバラードのように。


エドゥアルド・バグダサリアン(Eduard Baghdasarian)
アルメニア音楽の近代発展において重要な存在である。輝かしいピアニストであり作曲家、そして教育者でもあったバグダサリアンは彼の故郷であるアルメニア共和国により1963年に『名誉芸術家』と命名された。エレヴァンのコミタス音楽大学でG.V.サラジェヴ氏(ピアノ)とG.I.イェギザリアン氏(作曲)の門下よりピアノ科と作曲科の両課程で学位を取得。その後1951年から1953年の間、モスクワでG.I.リティンスキー氏のもとで博士号を取得する。その間、1953年にバグダサリアンはアルメニアの遠隔地へ旅をしながら各地の民謡などを収集し、そのメロディーを彼自身の作曲に次々と用いた。(まさに『アルメニア音楽の父』と呼ばれるコミタス・ヴァスルダペットが20世紀初頭に行ったことと同じである。)バグダサリアンはロマノス・メリキアン音楽大学教授を勤めたのちエレヴァン・コミタス音楽大学の教授となった。

バグダサリアンは全ての音楽ジャンルに精通し、クラシック、ジャズ、ポップや付随音楽を作曲し、アルメニアの中世音楽を編集した作品集まで見事に作り上げた。彼がほぼ全てのジャンルでの作曲を手がける。そんな中、バレエ曲『チェス』(1960)とピアノ協奏曲(1970)は、もっとも有名と言えることができ、バグダサリアンの創造性の主な焦点はピアノを用いた楽曲にある。彼の素晴らしい感性とピアノという楽器の性質に対する理解力は、最高度の表現を用いた作曲を可能にした。アルメニア民謡や伝統音楽を根元に、またそこに自然と繋がる彼自身のピアノ楽曲のスタイルを開花する事が出来たのである。バグダサリアンの作品の中で是非ここで記載しておきたいのは、ピアノ五重奏、24の前奏曲、クラリネットとピアノのためのソナタ、ピアノのためのアルメニアン・フォークダンス作品集、そしてかの有名なヴァイオリンとピアノのためのラプソディーとノクターン。バグダサリアンは度々、彼自身の作品の初演コンサートを行ったことでも知られている。

ラフィ・ベサリアン(Raffi Besalyan)
「ホロヴィッツらのロシアンピアニズムの正統を受け継ぐ存在」(ショパン誌)、「伴盤の奇才」(ファンファーレ誌)、「威厳ある存在と解釈の天分に恵まれた驚異のピアニスト」(アメリカン レコー ドガイド)、「力強く切れのよいタッチ、たっぷりと情緒のこもる表現を聴かせるなど高い水準を行く充実したリサイタルはこのピアニストへの注目をうながすに十分だ」(レコード芸術)と称賛され たラフィ・ベサリアンは、人を引きつける魅力と情熱によりその国際的な名声を確立した。

アルメニア・エレバン生まれのベサリアンは、特別英才児のためのチャイコフスキー音楽学校で学んだ後、エレバン・コミタス音楽大学で音楽修士号、及び博士号を取得。更に米国ローワン大学、ニューヨークのマンハッタン音楽大学で学位を取得。セルゲイ・ベルセギアン、著名なアメリカのピアニストであるバイロン・ジャニスに師事。モスクワ国立音楽院においてアレクセイ・ナセドキン、ヴィクター・メルジァノフ、ナウム・シュタルクマンに師事し研鑽を積む。ジョセフ・ホフマン国際コンクール、ニューヨーク フリンナ・アーバーバック国際コンクール、 アーティスト国際コンクールなどでも優勝。北米南米、ヨーロッパ、ロシアそしてアジアで演奏活動を繰り広げ、彼の演奏は2003年のカーネギーホールデビューをはじめ、ニューヨークのマーキンホール、ケネディ―センター、シカゴ・オーケストラホール、アトランタ・シンフォニーホール、デトロイト・マックス・フィッシャーミ ュージックホール、モスクワ音楽院ラフマニノフホール、ロシアのマリーザル、そして日本ではいずみホール、フェニックスホールなど名声ある会場において喝采を受けてきた。
公式ページ(https://www.raffibesalyan.com/)

2021年10月の新刊情報(今泉響平、齊藤一也、夏目恭宏、アダム・ゴルカ)

2021年10月の新刊情報です。発送は10月11日より順次行います。

ラヴェル/今泉 響平:アダージョ・アッサイ 第2楽章 -「ピアノ協奏曲 ト長調」より(ピアノ独奏編曲)
2021年第45回ピティナ・ピアノコンペティション特級にて第3位に輝いた今泉響平による編曲作品が初出版です。フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの代表作の一つでもある「ピアノ協奏曲 ト長調(Concert en sol)」から第2楽章「アダージョ・アッサイ」を今泉響平がピアノ独奏用に編曲しました。オーケストラの響きを失わないように可能な限りの音は取りつつも原曲が持つ音楽性は失わないように細かな配慮が施されており今泉の編曲センスが光ります。なお、本編曲は10月15日(福岡)10月30日(東京)に開催される演奏会のプログラムとしても取り上げられ、本編曲の楽譜も含む物販及びサイン会も実施される予定です。

齊藤 一也:ショパンの「小犬のワルツ」による即興曲 ― ネコ好きのための ―
皆さんは犬や猫はお好きでしょうか。ピアニストの齊藤一也が八ヶ岳北杜国際音楽祭にてサン=サーンス作曲の「動物の謝肉祭」を演奏した際に余興として他にも動物が登場する楽曲を演奏してほしいという要望に応え生まれた編曲、その名も《ショパンの「小犬のワルツ」による即興曲 ― ネコ好きのための ―》。ショパンの「小犬のワルツ」と誰もが一度は耳にしたことがある「猫ふんじゃった」が見事な融合を果たします。「小犬のワルツ」の持つ気品さはそのままに、カプリッチョ的な性格と即興的な要素をふんだんに取り入れ、アンコールピースとしても大いに盛り上がるような工夫が凝らされています。

ガブリエル・フォーレ/夏目恭宏:パヴァーヌ(ピアノ1台4手連弾)
フォーレの作品の中で傑作としても名高い「パヴァーヌ」 。元々は管弦楽曲のための作品として作曲されました。また、その旋律の静謐な美しさ故にこれまでに様々な編成で演奏され多くの人々に親しまれています。フォーレ自身による演奏がピアノロールとしても現存しており、味わい深い演奏を聴くこともできます。編曲者である夏目恭宏は、雪の舞い散る情景にインスピレーションを得て本作品の編曲に取り組み、2オクターブでの動きを基調に据えており、クリスタルのような、ガラス細工のような繊細な響きをピアノから引き出すことを目指しています。YNPianoDuoによる演奏はコチラからご視聴いただけます。

アダム・ゴルカ:トルコ練習曲(ピアノのために)
主にアメリカやヨーロッパで大活躍しているピアニストのアダム・ゴルカによる作品が初出版です。日々厳しい練習を行っていた10代のアダム・ゴルカは、時折休憩も兼ねて寄り道をすることがあり、ホロヴィッツやヴォロドスのパラフレーズの採譜に勤しんでいました。ある日、彼の師であるジョゼ・フェガリとのレッスンでヴォロドス編曲の「トルコ行進曲」を弾いた際、ゴルカ自身がショパンの練習曲 Op.10-2で日々悩んでいることを知っていた彼は、モーツァルトの有名なロンドを自己流にパラフレーズした上で、この2曲を組み合わせてはどうかと提案してきたそう。その結果が今回出版される「トルコ行進曲(Etude Alla Turca)」です。今回特別にアダム・ゴルカの許可を得て当時10代のゴルカが演奏する「トルコ練習曲」の音源をお届けします。

ショータの楽譜探訪記(2)「スペインの思い出(1)」

こんにちは、ショータです。連載記事「ショータの楽譜探訪記」の第1回目から随分と期間が空いてしまいました。先週、私のもとに信じがたいニュースが舞い込んできました。アレクシス・ワイセンベルクのご息女であるマリア・ワイセンベルクさんの訃報です。マリアさんは父アレクシスが遺した膨大な音源、コラージュ、ピアノ曲、ミュージカル等の数々の作品を少しでも多くの人々に知ってほしいという情熱からAlexis Weissenberg Archiveというウェブサイトを数年前(少なくとも6年前)から運営していました。なお後から触れますが、ミューズプレスから刊行中の「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」は、マリアさんの多大な尽力なしには実現できなかったと強く思います。

マリア・ワイセンベルクと私
(2017年1月・スペインにて)

あまりにも突然すぎる訃報に私は居ても立っても居られず、マリアさんとの出会いから「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」の出版までの思い出をここに書き残すことにしました。

マリアさんと実際にお会いしたのは2017年1月11日、アーカイブ兼住居のあるスペインのマドリードに訪れたときでした。しかし、実際にお会いする前からもメールで情報交換を行っており、メールの送信履歴を覗くと初めてのコンタクトは2016年5月でした。未だについ最近の出来事のように感じます。

マリアさんとやりとりを始めるきっかけとなったのは、Alexis Weissenberg ArchiveのCompositions/Other Scoresのセクションに一部掲載されていたワイセンベルクのピアノのための作品「Variation on a Popular Japanese Theme」(左画像)でした。ちなみに、”a Popular Japanese Theme”とは山田耕筰の「この道」を指しています。当時、私は日本歌曲をベースとしたピアノのための編曲作品がどのくらい存在するのか、個人的な興味でリサーチしていたのですが、日本人による編曲は見つかるものの、海外の音楽家によるものはあまり見かけませんでした。そんな中、大ピアニストであるアレクシス・ワイセンベルクが「この道」を主題とした変奏曲(Variationと単数形)を書いていると知った私は、すぐさま出版予定があるのか伺うメールをサイトのContact Usから送ったのでした。

知らない人にメールを送ったあとは、本当に返事がもらえるものかとそわそわするものです。有難いことにメールを書いた翌日にはすぐにお返事をいただけました。その時からマリアさんとのやりとりが始まりました。「My father loved Japan and I suppose this is a tribute to your country and its art.(私の父は日本を愛していました。この作品は日本、そして日本の芸術に対する敬意でしょう)」という文面で始まるメールには、今回は特別ということで無償で楽譜データも添付されていました。当時は”a Popular Japanese Theme”が何の曲かをマリアさんはご存じではなかったので、原曲の音源(YouTube)のリンクをお送りしました。

当然ながらマリアさんから頂いた「Variation on a Popular Japanese Theme」は自筆譜でした。当時、私は楽譜浄書家としてボランティアで自身が興味を持った楽曲の浄書を行っていましたので、すぐさまその自筆譜の浄書に取り掛かりました。2ページの短い楽曲だったので、3時間ほどで作業が終わりすぐにマリアさんにお送りすることができました。それまで私はあのワイセンベルクの楽譜を浄書することができるなんて、夢にも思っていませんでした。その後、マリアさんとは何度か連絡を交わし、ワイセンベルクのクラシック作品やジャズ作品などの出版計画があることを知ります。ヨーロッパの大手楽譜出版社にも声をかけていたそうです。一部ジャズ作品については著作権関係の問題の解決にも奔走されていました。

約2か月後、私は別件でマリアさんに再びご連絡をしました。ワイセンベルク編曲の「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」について尋ねるためです。この編曲はご存じの方も多いでしょうが、ワイセンベルクが1950年代にMr. Nobodyという匿名でLumen社よりリリースした作品として現在は知られています。2008年にピアニストのマルク=アンドレ・アムランが上記の編曲を含むCD「Marc-André Hamelin in a state of jazz」をリリースしたことにより話題となりましたが、2008年当時は「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」の楽譜は存在しないとワイセンベルクが語っていたために、アムランが採譜を行っての録音でした。CDがリリースされた頃、私はまだ高校2年生、どうしても楽譜を手に入れたいと高校の英語の先生に手助けを求め、アムランが所属する音楽事務所に英語でファンレターを送ったのでした。結局は返事は来ませんでしたが、後々(と言っても2018年あたり)になってアムランと話す機会がありトレネの話題にもなり「私が採譜したトレネ/ワイセンベルクの楽譜が欲しいというお便りをこれまでに沢山もらったが、著作権の関係もあって誰にも渡すことができなかった」と語っていました。ミューズプレスによって出版されるまで「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」は超入手困難の伝説の楽譜となっていました。

トレネ/ワイセンベルク「街角」:マルク=アンドレ・アムランの自筆譜

次回は、「シャルル・トレネによる6つの歌の編曲」がどのように出版に至ることになったのか、そして実際にスペインでお会いした際にマリアさんがどうしても取り上げたいお父様の作品があるとも仰っていました。そのことについて書きたいと思います。

黛敏郎「君が代」と絶筆の「パッサカリア」

黛 敏郎

日本を代表する作曲家として現在も高い人気を誇る作曲家・黛敏郎。今回、ミューズプレスでは、日本の作曲家専門レーベル スリーシェルズの代表を務める音楽評論家の西耕一氏と黛家の協力のもと黛敏郎の編曲作品と絶筆となった未完のオーケストラ作品2点のフルスコアを出版します。

本日より2021年2月28日まで予約受付とします。発送は2021年3月1日より順次行います。なお、予約受付期間内にご予約をいただいたお客様には日本国内に限り送料無料でお送りさせていただきます。

黛敏郎 編曲「君が代」
黛敏郎の管弦楽編曲による《君が代》。これは伝統と現代の間で悩み、独自の音を探求してきた作曲家による一つの返答である。日本の伝統音楽を基にした《BUGAKU》や《昭和天平楽》とも共通する音響美がある。自国の文化、伝統が、未来に受け継がれ、続いてほしいと願うことに何の不条理があろうか。(西耕一)

黛敏郎 編曲:日本国歌「君が代」(オーケストラ編曲)
2000円(税込)
菊倍版|12頁
解説:西耕一
企画協力:スリーシェルズ、黛家


黛敏郎 作曲「パッサカリア」(未完・絶筆)
当時、指揮者・岩城宏之が率いるオーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱により「パッサカリア」の作曲を始めた黛敏郎。コントラバスやハープによる空虚な5度和音を土台として不穏なピッコロソロに始まり、次第に様々な楽器も加わり、ベートーヴェンやモーツァルト、バッハなどの作品の断片が随所で駆け回ります。そこには混沌とした世界が広がります。この作品は、無念にも黛の死により完成されることはありませんでした。

《パッサカリア》は、黛敏郎の遺作であり未完。盟友・岩城宏之の率いるオーケストラ・アンサンブル金沢のための作曲であり、プリペアド・ピアノ協奏曲を構想していた。既に何度か死線を彷徨い、入院中に、テレビ番組や講演、会議等と並行しての作曲だった。しかし、その筆に迷いはない。(西耕一)

黛敏郎:パッサカリア(未完・絶筆)
2000円(税込)
菊倍版|12頁
解説:西耕一
企画協力:スリーシェルズ、黛家


これまでに弊社で刊行した黛敏郎の作品

黛 敏郎(まゆずみ としろう)
1929年(昭和4年)2月20日、横浜生まれ。東京音楽学校(東京藝術大学)で橋本國彦、池内友次郎、伊福部昭等に師事。1948年(昭和23年)に作曲した「拾個の独奏楽器の為のディヴェルティメント」により才能を認められる。1950年(昭和25年)作曲の「スフェノグラム」は、翌年のISCM国際現代音楽祭に入選して海外でも知られるようになる。1951年(昭和26年)パリ・コンセルヴァトワールへ留学、トニー・オーバン等に学ぶ。フランスから帰国後、ミュージック・コンクレートや日本初の電子音楽を手がけた。1953年(昭和28年)芥川也寸志、團伊玖磨と「3人の会」を結成。また、吉田秀和等と「二十世紀音楽研究所」を設立。雅楽・声明をはじめ、日本の伝統音楽にも造詣を深める一方、交響曲、バレエ、オペラ、映画音楽等の大作を発表した。1964年(昭和39年)より、テレビ番組「題名のない音楽会」の企画、出演。東京藝術大学講師、茶道「裏千家淡交会」顧問、評議員。「日本作曲家協議会」会長、「日本著作権協会」会長などを歴任した。 「涅槃交響曲」(1958)で第7回尾高賞、「BUGAKU」で第15回尾高賞を受賞。 主な作品に「ルンバ・ラプソディ」(1948)、「饗宴」(1954)、「曼荼羅交響曲」(1960)、「シロフォン小協奏曲」(1965)、オペラ「金閣寺」(1976)、「KOJIKI」(1993)、バレエ「The KABUKI」(1986)「M」(1993)他がある。ピアノ曲は、「前奏曲」「金の枝の踊り」「天地創造」などがある。ISCM入選(昭和31、32、38年)。毎日映画コンクール音楽賞(昭和25、32、38、40年)。毎日演劇賞(昭和33年)。ブルーリボン賞(昭和40年)。仏教伝道文化賞(昭和50年)。紫綬褒章(昭和61年)。 1997年(平成9年)4月10日逝去。

ピアニート公爵編曲「蒼い鳥」(from THE IDOLM@STER)

日本の動画サイト「ニコニコ動画」に匿名で投稿した演奏動画をきっかけにデビューを果たしたピアニスト「ピアニート公爵」。視聴者の度肝を抜く卓越した演奏技術と不明な経歴との隔たりから、視聴者から「高等遊民」と呼ばれ、投稿動画に「俺(ニート)」と書いたことから、「ピアニート公爵」という愛称で呼ばれるようになりました。後に、「ピアニート公爵」はピアニストの森下唯の生き別れの兄弟だったという事実(?)も明るみになります(真相はコチラをご覧ください)。動画投稿をきっかけにCDデビュー、現在では数々のコンサートやスタジオ録音に呼ばれる人気ピアニストとなります。

そんなピアニート公爵がニコニコ動画に初めて投稿した演奏が「蒼い鳥」(THE IDOLM@STER)のピアノ編曲です。本作は、人気ゲーム/アニメのアイドルマスターに登場する楽曲で、作曲:椎名豪氏(アニメ「鬼滅の刃」音楽 etc.)、M@STER VERSION編曲:塩入俊哉氏(稲垣潤一ツアー/音楽監督 etc.)という超豪華メンバーによるもの。ピアニート公爵は、よりクラシカルな雰囲気を持ったM@STER VERSIONを、ピアノ1台で表現するという試みをしています。

2021年1月現在、再生回数は1,128,819回に上り、クラシック音楽のファンに留まらず様々な音楽ファンの間で伝説として語り継がれる名編曲を、2020年2月1日、弊社より刊行いたします。


初回限定特典といたしまして、こちらの楽譜をご予約をいただいたお客様には、ピアニート公爵のサイン付きの楽譜をお送りいたします。限定30部です。お見逃しなく。本楽譜の表紙は、新進の漫画家・うたたね游(Twitter:@remon__pie )さんによるイラストです。

サイン付き楽譜(限定50部!)*当初は30部でしたが今回限り20部追加いたしました。
 https://muse-press.com/item/mp00404le/ ‎

サイン無し楽譜(2月1日より順次発送予定です)
 https://muse-press.com/item/mp00404/ ‎

序文:ピアニート公爵
価格:2000円(税抜)
ISBN:978-4-909668-69-1


ピアニート公爵(森下唯)
日本のピアニスト・作編曲家。ソロでのリサイタルのほか、オーケストラとの共演、リート伴奏、室内楽などの分野で活動し、スタジオ・ミュージシャンとしても多くのレコーディングに参加。演奏以外にも、映像作品への楽曲提供や文筆など幅広く手がけている。

「ピアニート公爵」としては、2007年のニコニコ動画への投稿で一躍注目の的となった(「ピアニート公爵」は動画投稿時にニートを自称していたことから視聴者に名付けられたもの)。2011年、ドワンゴ・ミュージック・エンタテインメントよりアルバム『シンギュラリティ~特異点~』をリリース。その後、日本、台湾、シンガポール等で演奏活動を行っている。近年では『GRANBLUE FANTASY PIANO COLLECTIONS』、『Piano Collections FINAL FANTASY XV』等で演奏を担当。2018年、『コードギアス 反逆のルルーシュ ピアノソロコレクション』では演奏とともに編曲も手がけ、楽譜集も出版された。

本名の森下唯名義では作曲家アルカンの紹介に力を入れており、アルカン生誕200年となる2013年から継続的にオール・アルカン・リサイタルを行う。2015年よりアルカン作品を集めたCD「アルカン ピアノ・コレクション」(ALM RECORDS)シリーズをリリース、『レコード芸術』誌をはじめ各所で高く評価されている。東京藝術大学卒業、同大学大学院修了。2004年、第2回東京音楽コンクール第2位。調布国際音楽祭アソシエイト・プロデューサー。2015年より東京藝術大学非常勤講師(指揮科演奏研究員)。