文:高橋智子
3 フェルドマンの新たな境地 The Viola in My Life 1-4
1970年から1971年にかけて作曲された4曲からなる「The Viola in My Life」は1970年代の楽曲の中だけでなく、フェルドマンの楽曲全体を見渡してみても特殊な位置にある作品だ。この当時のフェルドマンの楽曲には珍しく、「The Viola in My Life」では明確に認識できる旋律が登場する。フェルドマンはこれまでに1947年に作曲した独唱曲「Only」や、1950年代、60年代に手がけたいくつかの映画や映像の音楽でも旋律のある曲を書いてきたが、旋律ともパターンともいえない概して抽象的な作風が彼の本分とみなされてきた。だが、1970年に入るとフェルドマンは五線譜の記譜に戻り、「The Viola in My Life」1-4を書いて叙情的な旋律を惜しげもなく披露する。前のセクションで解説した1970年代の楽曲のおおよその傾向を思い出しながら「The Viola in My Life」1-4がフェルドマンの作品変遷の中でどのような位置にあるのかを見ていこう。
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